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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

「いつものパン」があなたを殺すを読んで③

雑記 雑記-書評・論文評価・考察

脳のために気をつけるべき3つのこととは?


2回にわたって「いつものパンがあなたを殺す」について書いてきた。

 

www.ninchi-shou.com

 

 

www.ninchi-shou.com

 

今回でひとまず最後。過去2回の内容を踏まえて、では何に気をつけるべきかを書いていく。

食事と運動、睡眠の大切さとは



食事

 

断食


まずは、断食で糖質をリセットする。断食で得られる効果は

  • フリーラジカル産生減少
  • ミトコンドリアのエネルギー生成アップ
  • サーチュイン遺伝子(SIRT-1、いわゆる長寿遺伝子)の活性化
  • 神経細胞保護因子(BDNF)が増加
 
などなど。
 
特に、「サーチュイン遺伝子活性化〜神経細胞保護因子の増加」の流れが重要。
 
SIRT-1の活性化により、体内の抗炎症作用が増強され、またアルツハイマー発症の原因の一つといわれるアミロイドβを分解する酵素が増える。つまり、アルツハイマーの予防効果や進行抑制効果が期待できる。
 
また、BDNFは脳細胞の数を増やし、機能的なニューロンへの分化を強化する。結果、学習と記憶が強化される。
 
断食の目安は1日。水分はしっかり摂る。
 

ケトン食(≒糖質制限)

 
「脳はブドウ糖しか利用できないので、朝ご飯はしっかり食べよう!」などと一般的には言われている。もし、米やパンをしっかり食べよう!ということなら、それは間違い
 
通常、脳はエネルギー源としてブドウ糖を優先的に利用するが、ブドウ糖が足りなくなった場合(断食は、この状態を作り出すために有用)、脂肪が分解されて作られるケトン体(特にβヒドロキシ酪酸)が、血液脳関門を通過してエネルギー源として利用される。

しかも、βヒドロキシ酪酸は、ブドウ糖よりも効率的にエネルギーを生産できるという研究結果もある(G. F. Cahill and R. L. Veech Jr., “Ketoacids? Good Medicine?” Transactions of t he American Clinical and Climatological Association 114 (2003): 149-61.)


糖質制限を意識していれば、自ずと食事内容はタンパク質と脂質が中心になっていくので、ケトンをエネルギー源として利用できるようになっていく

特に中鎖脂肪酸を大量に含むココナッツオイルの積極的な摂取により、


  • 脳内アミロイドの減少
  • 海馬のグルタチオン(体内における重要な抗酸化物質)を増やす
  • ミトコンドリアを増やし、代謝効率を上昇させる
 
このような効果が期待できる。
 
一日の糖質摂取量は、60g以内に押さえることを目指す。ちなみに、茶碗一杯のご飯に含まれる当質量は、およそ55g。角砂糖換算すると約14個分の糖質が含まれている。
 

サプリメント

 
これは簡単に列挙に留める。
 
  • DHA:魚油に含まれる有名な成分
  • レスベラトロール:赤ワインに含まれる
  • ターメリック:ウコンの一種
  • プロバイオティクス:乳酸菌など
  • アルファリポ酸:脂肪酸の一種
  • ビタミンD:脂溶性ステロイドホルモン。骨やカルシウムだけではなく、神経伝達物質の生成にも関わっている
 

運動

 
運動には、以下の5つのメリットがある。
 
  • 炎症を抑える
  • インスリン感受性を高める
  • 血糖コントロールを改善する
  • 記憶中枢を大きくする
  • BDNF(神経細胞保護因子)の量を増やす
 
運動のメリットを否定する人は恐らくいないだろうが、ではどの程度の運動が望ましいのだろうか。ここで推奨されているのは、
 
1回20分の有酸素運動を週5回
 
である。ザックリ考えて週に5回、30分程度の散歩で充分のようだ。可能であればペアで、お互いに簡単な計算問題やしりとりクイズなどを出し合いながら出来たら理想である。
 
運動の良いデータは数多くあるが、一つ挙げると
 
24週間にわたって定期的に毎日約20分運動した年配の被検者は、運動しなかった群と比較して記憶力、言語能力、注意力などが1800%向上していた(N. T. Lautenschlager, et al., “Effect of Physical Activity on Cognitive Function in Older Adults at Risk for Alzheimer Disease: A Randomized Trial,” JAMA 300, no. 9 (September 3, 2008): 1027-37.)
 
このような報告がある。
 

睡眠

 
簡単にまとめる。
 
  • 男性の場合、睡眠不足は食欲を刺激するグレリンというホルモンの数値を高めてしまう
  • 女性の場合、睡眠不足は食欲を抑えるGLP-1というホルモンの量が不安定になる
  • 脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモン。これは人体の炎症反応の調節や炭水化物摂取を欲するか否かの調節を行う。睡眠不足により、このレプチンは減少してしまう。
 
睡眠不足は、過食やホルモンバランスの乱れに繋がるということである。
 
また、アルツハイマー発症の原因物質と考えられているアミロイドβは、睡眠中に髄液に排出される。つまり、睡眠不足だと脳にアミロイドβが蓄積しやすいということである。
 

まとめ


3回にわたって、「いつものパン」があなたを殺すの内容について書いた。まとめると、


  • 小麦に含まれるグルテン及び糖質により、様々な病気が惹起されている可能性がある。それは、セリアック病にとどまらず、小児や大人におけるADHD、うつ病、慢性頭痛、認知症、神経変性疾患、糖尿病などである。
  • コレステロールについて、これまで言われてきた「低脂肪がヘルシーであり、脂肪の多い食事は動脈硬化に繋がり、心筋梗塞の元になる」という定説は、間違っているのではないか?
  • コレステロールを下げるための薬(スタチン)の服用により、糖尿病や認知症、その他様々な病気を発症するリスクが増す恐れがある。
  • 気をつけるべきは食事と運動と睡眠。食事で意識すべきは「糖質制限」であり、運動は30分程度の散歩を出来れば週に5回、そしてしっかりと睡眠をとること。
 
このような内容であった。
 
紹介してきたのはあくまでも膨大な本書の内容の一部に過ぎず、更に詳しい情報や具体的な食事メニュー、健康プログラムについて知りたければ、是非本書を手にとって欲しい。
 
人は自分が見たい現実しか見ようとしない
 
これは古代ローマの政治家ユリウス・カエサルが遺した言葉だが、人間の本質を突いている名言だと思う。
 
今まで学んできたことに固執する余り、患者さんが不利益を被ることがあってはならない。
 
そして、常識だと思われていたことの根拠など、実は案外貧弱だったりするものなのである。
 


※注)今回の内容は、ほぼ100%「いつものパンがあなたを殺す」に準拠していますが、ごくわずかに私見を入れています。参考文献はこちらまで。


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