鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

「独居」・「内服は一日一回」・「各種サービス導入困難」という条件下で悪戦苦闘。

 2年間経過をみている、独居の70代女性を紹介する。

70代女性 ATD?それともDLB?

 

当初はDLB>ATDと考えていたが、最近はATD≧DLBで診ている。

 

  • 猛烈な取り繕いと病識の無さ
  • 日時と場所の見当識低下
  • 著明な短期記憶低下

 

こういった特徴からはATDを濃厚に疑うのだが、

 

  • 左上肢に存在し続ける歯車様筋固縮
  • 独特な感じの暗さ
  • 調子の波の大きさ
  • 「〇〇という特徴を持つ人が家に入ってきた」という幻視

 

このようなDLB的特徴もあるため、いずれか片方に寄せすぎずに経過観察中である。

 

当初はイクセロンパッチ4.5mgを使用していたのだが、掻痒感とかぶれで脱落。改善があったかは今ひとつ分からなかった。

 

現在使用しているのはアリセプト。1mgから始め、現在は3mg。

 

副作用こそ出てはいないものの目立った改善もない。

 

様々な妄想がご家族の最大のお困り事なので、リスパダールを0.125mgで使用したところ、やや落ち着いた。

 

しかし、0.25mgに増量すると筋固縮が悪化するため増やせない。この辺りに、DLBの示唆的特徴である「薬剤過敏」の可能性を感じている。

 

薬剤過敏の可能性が念頭にあるため、これ以上アリセプトを増やしたものかも躊躇している。ただでさえドパミン阻害剤のリスパダールを使用しているのに、アリセプトのドパミン阻害作用が重なって転倒に繋がるリスクは無視できない。

 

リスパダールをクエチアピンに置き換えることも考えたが、内服を全て朝に持ってきているため、クエチアピンによる眠気が出た場合に日中の活気が低下するかもしれず、また、眠気から転倒に繋がる恐れがあるため、やむなくリスパダールで様子を見ている。

 

一日複数回の内服が可能であれば、抗精神病薬や抗認知症薬も少量に分割して危険を分散させることが出来る。

 

しかし、この方は1日一回の内服で精一杯。それでも飲み忘れがある。

 

ヘルパーや訪問薬剤師による薬剤管理で12回内服を狙ってはみたが、自宅に人を入れたがらないために断念した。

 

デイサービスは宥め賺して何とか通うようにはなったものの、休みがちである。

 

お住まいが遠方なので、薬による有害事象が起きた場合、すぐに対処するのが難しい。家族のサポートはあるが、つきっきりというわけにもいかず、常時観察は不可能。よって、家庭天秤による薬剤調整も不可能。

 

アリセプト以外の抗認知症薬に関しては、

 

  • レミニールを試したい→一日2回内服が困難
  • メマリーを試したい→眠気フラツキからの転倒が怖い

 

このような理由で試用に至っていない。

 

先日、家族から「時々ボーッとなって『心ここにあらず』という雰囲気になることがある」という話を聞いたので、側頭葉てんかんの可能性を考えて夕方にデパケンR200mgを処方してみた。

 

この処方に併せて、他剤も夕方に変更してリスパダールは止めてみた。

 

八方塞がり感がハンパではないが、さてさてどうしたものか。

 

独居

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