鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】リバスタッチパッチの著効例。

 

今回は、リバスタッチパッチが良く効いていると思われる症例を紹介する。

 

4剤ある抗認知症薬のなかで、個人的に最も出番が多いのはリバスタッチパッチ(イクセロンパッチ)である。

 

  • 以前よりも元気がなく、意欲も落ちているように感じられる
  • 食欲が落ちている
  • 寂しさをよく口にするようになった
  • とぼとぼ歩くようになった

 

このようなご相談をご家族から受けたときに、リバスタッチパッチを治療選択肢の一つとして提案している。

 

切って用量調整出来たり、「おかしい?」と思ったらすぐに剥がせたりなど何かと使い勝手の良い貼付剤だが、弱点の一つである掻痒感は、幸いにも今回紹介する方では出なかった。

 

また、 評判が今ひとつの新型パッチへの切り替えも、スムーズにいってくれてよかった。初診から1年半経過したが、使用しているリバスタッチパッチの用量は規定量18mgの1/4、4.5mgである。

 

ちなみに自分は、初診時でアルツハイマーと診断した方に少しでもレビー感を感じたら、患者さんやご家族から抗認知症薬処方のご希望があったとしても、ドネペジルを最初から使うことはない。その理由については、下記記事をご参考に。

 

www.ninchi-shou.com

 

 

80代女性 アルツハイマー型認知症

 

初診時

 

娘さんと二人で来院。


(現病歴)

 

独居。


1年ほど前から家族はもの忘れが気になり始めた。毎年〇〇病院でMRIは撮っているが、特に何も指摘はされていないと。

 

最近は、食欲や意欲の低下が娘さんは気になるとようだが、、娘さんと一緒だとよく食べる。寂しさが前提にあるのか。

 

愛想は良いが、くよくよした感じにも見える。

 

(診察所見)


HDS-R:13
遅延再生:2
立方体模写:やや拙劣
時計描画テスト:数字4つで10時10分はOK
IADL:4
改訂クリクトン尺度:17
Zarit:13
GDS:9
保続:なし
取り繕い:ありあり
病識:軽度あり
迷子:なし
DLB中核症状: 1/4
rigid:なし
幻視:なし
FTD中核症状: 3/6
語義失語:なし
頭部CT所見:特記所見なし
介護保険:要介護1 
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:頻尿?
易怒性:なし
過度の傾眠:なし

(診断)
ATD:〇
DLB:
FTLD:
その他:

 

(考察)

 

アルツハイマーでいいと思うが、ほんのわずかに感じるレビー感。*1


かかりつけの〇〇クリニックで降圧薬4種類、うちナトリックスもあり。当院への引っ越しを娘さんは希望されているようだが、無理はせずに。

 

ひとまずパッチ4.5mgの反応をみてみましょうか。引っ越しはご希望次第で。情報提供書は作成。

 

2週間後

 

  • 蛋白定性[尿]:1+(30)_
  • ウロビリノーゲン定性[尿]:2+(4)_
  • 白血球検査(試験紙)[尿]:(500)_
  • 潜血反応[尿]:1+(0.06)_

 

昨日から排尿時痛ありと。LVFX250mg処方。パッチの効果はまだ不明と。4.5mgで継続。

 

当方の顔は覚えていた。

 

1ヶ月後

 

数ヶ月付けなくなっていた日記を付けるようになったと自分で話す。

 

日時見当識低下があるためデイの休みの日にデイに連絡をすることはあるが、拗らせてはおらず楽しく週に3回行けている。

 

今日の当院受診もカレンダーに自分で印を付けていたと。
パッチ効果ありかな。

 

継続。

 

1ヶ月後

 

この1ヶ月ぐらいで、時に下肢不快感、痛みで眠れないことがあった。〇〇整形外科でレントゲンを撮影、問題ないと言われた。

 

RLS(むずむず足症候群)の可能性は?
頓服抑肝散を試してみましょう。

 

1ヶ月後

 

左頚部と左膝内側にSL(スーパーライザー)を。

下肢不快感については言わなくなっている

 

1週間後

 

昨日急に右手が腫れた。今日はやや軽快しているが気になると来院。

 

レントゲンで特記所見なし。
手を少し高くして寝ること。五苓散併用で浮腫消退を図ろう。
抑肝散は飲めば落ち着くとのことで10回分頓用で。


寝汗をかくと。補中益気湯を試す。
降圧薬はアムロジピンを除き再開とする。完全に〇〇クリニックからお引っ越し。

 

3週間後

 

右手の腫れは寛解増悪を繰り返すと。一旦五苓散は終了で。
以前、PMR(リウマチ性多発筋痛症)と整形で言われたことあり?

 

両肩挙上は可能だが、以前は痛かったと。
採血。降圧薬はアムロジピンを2.5mgだけ戻す。

 

1ヶ月後

 

肩甲骨にSL。

 

PIP関節にやや熱感あり。
前回採血で軽度炎症反応上昇あり、RF(リウマトイド因子)は陰性。一時期はステロイドを飲んでいたようだ。


桂枝加朮附湯は考えておく。

 

1ヶ月後

 

今回は温湿布を試す。寒くなり左膝内側が痛いのだと。
難聴にfemimi(集音器)を勧めるも、「まだいいです」と。娘さんは苦笑いしながr。

 

残薬調整。


肩甲骨にSL。

 

1ヶ月後

 

みんなから「元気になったね」と言われているようだ。


自覚的他覚的好調。いいですね。

処方は維持。

 

1ヶ月後

 

  • HDSR:21(5)
  • 透視立方体:OK
  • 時計描写:OK

 

初診時より8点上昇。


femimiは煩わしいと。無理強いはせずに。

 

パッチ自己管理を試してみましょう。
次回は採血かな。

 

1ヶ月後

 

電車を降りて、1kmぐらい歩いて来院。「これぐらい大丈夫(笑)」と。

下腿浮腫は極軽度。全体的に落ち着いている。

 

今日は採血。次回説明。処方維持。膝内側にSL。

 

初診から1年

 

  • HDSR:19(2)
  • 透視立方体:OK
  • ダブルペンタゴン:OK
  • 時計描画:12時に余計な針


頭部CTは脳幹梗塞痕含め昨年と変化なく順調な経過。


左膝に水腫あり。整形で穿刺吸引したようだがまた溜まってきたと。そのまま様子を見ましょうか。痛くも痒くもなし。左膝にSL。

 

1年経って、能力は向上・維持されている。
採血でK3.5とやや低く補中益気湯を減量。問題なければ次回で終了予定。

 

良い一年でした。周囲にも元気になったねと言われる。

 

1ヶ月後

 

著変無く経過中。

 

足趾先端の痛みにはサンダルで工夫を。
処方維持。左膝にSL。

 

1ヶ月後

 

一昨日庭の草むしりをしてから痒みが出てきた。背部に2箇所、虫刺され。前腕の掻痒感はオロナインで治ったと。

 

リンデロン軟膏で対処。膝SLも。

 

1ヶ月後

 

今日は息子さんと一緒に来院。息子さんは1年ぶりに母親に会ったとのことだが、「調子は良さそうです」と。

 

処方維持。肩と左膝にSL。

 

1ヶ月後

 

著変無く経過中。「お陰様で元気です」と。


娘さんから見ても安定していると。次回は採血。

 

1ヶ月後

 

インフルエンザ予防接種。採血。「感謝感謝です」と。

 

両膝内側にSL。

 

初診から1年半後

 

  • HDSR:25.5(4)
  • 透視立方体:OK
  • ダブルペンタゴン:OK
  • 時計描画:OK
  • 二等分線:OK

 

初診時から12点上昇。


心配が多くてくよくよした印象だったが、明るく変わったかな。しきりに感謝を口にされる。採血で低Kなく補中益気湯は朝1Pでキープ。

 

(最終処方)

 

  • アジルバ40mg
  • アムロジピン2.5mg
  • 補中益気湯1P 朝
  • リバスタッチパッチ4.5mg

 

リバスタッチパッチでHDSR上昇

左が初診時で右が1年半後。日時見当識、遅延再生、語想起で大きく点数が伸びた。

リバスタッチパッチで視空間認知が改善

左が初診時で右が1年半後。初診時は赤文字での訂正が多く時計の数字が少なかった。

 

*1:レビー小体型認知症の患者さん達に比較的多く認められる、視線が合わない・弱々しそう・動きが鈍そう・自律神経のバランスが悪そう、といった雰囲気のこと。