亜鉛を含む胃潰瘍の薬、プロマックD(一般名:ポラプレジンク)。
この度、添付文書改正の案内が届いた。
亜鉛は銅と拮抗するミネラルである。亜鉛を増やせば銅が減り、銅を増やせば亜鉛が減る。
亜鉛欠乏、過剰
普通に生活していて欠乏しやすいのは、圧倒的に亜鉛だと思う。亜鉛は様々な代謝に関与するミネラルで、欠乏により起きうると考えられるのが以下。
- 性機能低下
- にきび
- 抜け毛の増加、爪がもろくなる
- 傷の治りが遅い
- 味覚、嗅覚障害
- 2型糖尿病発症リスク上昇
飲酒で欠乏しやすいミネラルでもあり、普段から飲酒の機会の多い人は気をつけておいた方がよい。具体的には、採血項目のALP(アルカリフォスファターゼ)が低くなっていないかどうかに注目したらよい。
亜鉛が過剰になると、嘔吐や下痢を起こしうる。また、腸での鉄吸収を妨げることがある。
自分の経験では、朝の空腹時に15mgの亜鉛サプリを摂取して嘔気を催したことがある。サプリ摂取する場合には、空腹時は避けた方が良さそうである。*1
銅欠乏、過剰
銅の過剰で有名なのは、ウィルソン病。
常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝子異常症で、肝臓、脳、腎臓などに銅が蓄積し、様々な臓器障害(神経障害、肝硬変など)をきたす疾患である。
その他、統合失調症やアルコール中毒患者で銅値が高かった、という報告はあるようだ。
欠乏すると、今回の添付文書改正に書いてあるように「汎血球減少、貧血」をきたす。
普通に生活していて欠乏をきたすことは稀のようだ。
プロマックDの個人的な使い方
自分の場合、食欲低下を来している高齢者や、褥創の治癒遅延を起こしている高齢者に積極的に使用している。
食欲低下を来している高齢者には、ドグマチール50mgとプロマックD150mgというセット処方を行い、食欲が回復したらドグマチールは止めてプロマックDは残す。そして、プロマックDは2~3ヶ月継続して止める、というやり方をとっている。
このやり方で、これまで亜鉛過剰(銅欠乏)を来した患者さんはいないように思う。