鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】モビコールが便秘に著効した、レビー小体型認知症の男性。

便秘薬のモビコールが著効したレビー小体型認知症の方を紹介する。

 

認知症患者さんの排泄への配慮は、特にDLBの方にとっては重要である。

 

DLBの方にほぼ必発の頻尿や便秘にうまく対処出来ないと、幻視や易怒といった介護をするうえで厄介な陽性症状が出現しやすくなるからである。

 

便秘には今回紹介するモビコールに手応えを感じているが、頻尿(≒過活動膀胱)に対しては最近発売されたベオーバに好感触を持っている。これもそのうち御紹介するかもしれない。

70代男性 レビー小体型認知症(DLB) NHさん

 

初診時

 

(現病歴)

 

妻、二人の娘と同居。

 

1年ほど前から失禁するようになり、また、自宅に帰れないことが頻回に続いた。7ヶ月ほど前に〇〇病院でDLBの診断を受けた。

 

元々頑固で短気な性格。パーキンソニズム、夜間頻尿、幻視で家族は疲弊している。特に夜間頻尿で起こされることに妻は疲弊している。日中は傾眠がち。

 

ケアマネさんの勧めで転医希望で来院。

 

(診察所見)

HDS-R:15

遅延再生:4

立方体模写:不可

時計描画テスト:混乱、不可

IADL:3

改訂クリクトン尺度:41

Zarit:28

GDS:14→勢いでハイハイ言ったのか?

保続:なし

取り繕い:なし

病識:なし

迷子:あり

DLB中核症状: 4/4

rigid:左上肢

幻視:あり 風呂やトイレ内に見える トイレに行けず失禁

FTD中核症状: 5/6

語義失語:なし

頭部CT所見:左島皮質にLDA

介護保険:要介護1 ムーブメント清水

胃切除:なし

歩行障害:フラツキあり アームスイングなし 転倒はなし

排尿障害:夜間頻尿+++

易怒性:あり

過度の傾眠:あり

 

(診断)

ATD:

DLB:◎

FTLD:

その他:

 

(考察)

 

てんかん要素も一応は忘れずに。

 

〇〇病院でDLBと診断され、アリセプト3mg、5mgと型どおりの増量維持。その頃から目に見えて頻尿となり具合が悪くなっていったと奥さん。

 

ケアマネさんの勧めでパッチへの変更希望を担当医に伝えるも、「保険適応がない。アリセプトでないとダメ」と言われた。また、アリセプトも減らしても貰えなかった。

 

現在、家族判断でアリセプトを中止して1週間。このまま終了にして、頭部CTで陳旧性梗塞痕があるのでプレタール50mgを開始する。

 

パッチやレミニールはおいおい検討する。抑肝散が夕に出ているが役立っている形跡なく中止。代わりに、夜間幻視が失禁に繋がっている可能性があるのでセレネース0.2mgを入れる。

 

眠前薬はロゼレム+ベルソムラだがRBD(レム睡眠行動異常)があるのにベルソムラは・・・。ロゼレムを夕食後に回して、眠前はニトラゼパム2.5mgに変更する。

 

〇〇病院糖尿病内科の薬も引き継ぐ。直近のHbA1cは6.5と悪くない。エクアは引き継ぐが、ネキシウム、レバミピド、ロスバスタチンは中止する。マグミット500x3は750x2に変更して追加分だけ当院処方。昼の内服を無くする。

 

〇〇泌尿器科は年来通っているので、そのままに。ただし、朝のベタニスは夕方に回すようにお伝えする。日中の頻尿はないので。

 

仰臥位158/66(67)、坐位134/62(77)、立位110/57(78)と明確な起立性低血圧を認める。降圧薬は幸い入っていない。ドプスは今後検討する。

 

SPECTで後頭葉血流低下を認め、かつ、DAT-scanで左右差のある集積低下を認める典型的なDLBだが、易怒性もかなりあるようで前頭葉機能低下も相当見積もっておく必要あり。

 

状況次第で朝にウインタミンを考えておこう。グルタチオン点滴はおいおいと。

 

3週間後

 

  • セレネースで動作緩慢増悪→中止している
  • プレタールで頭痛なし→100mgに増量
  • マグミット750x2で下痢気味→500x2に
  • ニトラゼパム2.5mgで翌日持ち越し→中止
  • ベタニス朝から夕へ変更→夜間排尿は10回から5回に減った

 

診察中も傾眠。朝の動きが悪いとのことで朝にドパコール50mgを開始。診察室への入室はスムーズだったが、左上肢のrigidは+++。グルタチオン点滴を勧めるが、「注射は大嫌い」と。

 

パッチを2.25mgで開始。薬剤過敏は相当なものと考えておく。

 

3週間後

 

今回から〇〇病院のエクアを引きつぐ。

 

パッチ2.25mgで活動性は明らかに向上したが、先週末土日は過活動で家を出たり入ったりと全く落ち着かずパッチは剥がした。これで少し落ち着いた。

 

パッチは1.125mgもしくは2.25mg隔日で蓄積しすぎないように継続が望ましいかな。その反応をみて、ドパコールの維持量を検討する。

 

天候左右性の気分不良がありそう。五苓散をお試しで。

 

便秘に頓服で麻子仁丸1Pを。幻視対策はウインタミン3mgで。

 

2ヶ月後

 

パッチ1.125mg連日貼付で明らかに意欲の向上が得られたようで、自覚的にも「頭がスッキリした。調子がいい」と発言あり。ドパコール50mgも良く効いており、奥さん的には「動きは今ぐらいでよい」とのこと。

 

しかし、若干ではあるが過活動傾向なのだと。

 

現在、パッチは18時に貼付している。翌日の昼12時で一旦剥がして6時間休薬し、18時に新しく貼り替えてみましょう。

 

午前中は傾眠傾向とのこと。昨晩はかなりの興奮あり、連絡を受けたケアマネさんが様子を見に行った。21時にウインタミン4mgを飲み、21時30分には寝ていたようだ。ウインタミンは鎮静効果ありと考える。

 

朝のウインタミン4mgを夕に回す。

 

便秘対策でモビコール開始。夕に2P。マグミットは500x2から250x2に減量し、朝に麻子仁丸1Pを定期とする。

 

左上肢にrigid+++。

 

初診から4ヶ月後

 

  • 全体的に落ち着いた
  • モビコール開始で、便の性状がきれいになり毎日大量に出るようになった
  • ウインタミン夕方4mgで夜間興奮はなくなった
  • パッチ12時剥がし、18時貼付により、やや昼間の落ち着きが出た

 

総じて良い状態に。左上肢軽度rigidあるも、前回よりは良い。歩行は方向転換含めまずまず安定している。

 

一時は入院を考えていた奥さんも、落ち着きを取り戻している。

 

1日型のデイに行くようになったのも、良い影響があるのでしょうね。

 

今回は処方維持。

 

(来院時処方)

 

  1. アリセプト(5)1T1XM
  2. ロスバスタチン(2.5)1T1XM
  3. タムスロシン(0.2)1T1XM
  4. ベタニス(50)1T1XM
  5. ネキシウム(20)1C1XM
  6. 抑肝散1P1XA
  7. エクア(50)2T2XMA
  8. レバミピド(100)3T3X毎食後
  9. マグミット(500)3T3X毎食後
  10. センノシド(12)2T1X眠前
  11. ベルソムラ(15)1T1X眠前
  12. ロゼレム(8)1T1X眠前

 

 

(最終処方)

 

  1. マグミット(250)2T2X
  2. プレタールOD(50)2T2X
  3. エクア(50)2T2X
  4. ドパコール(50)1T1XM
  5. 麻子仁丸1P1XM
  6. タムスロシン(0.2)1T1XM
  7. ベタニス(50)1T1XA
  8. ウインタミン4mgA
  9. モビコール2P1XA
  10. リバスタッチ1.125mg(4.5mgの1/4枚)

(引用終了)

 

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