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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

糖質制限を認知症治療の中心に据えることが出来たら、治療は捗るだろうなぁという夢想。

栄養学 栄養学-糖質制限

 

病気の根本治療とは、病気の原因を取り除き、現在悩んでいる症状を消失させることである。

 

そうすると、アルツハイマー病のような変性疾患の根本治療とは、病理学的組織変性を修復し、同時に記憶障害や失行などの中核症状を改善させることとなる。これは事実上不可能なことのように思う。

 

しかし、日本初のグルタチオン点滴療法を受けたパーキンソン病の患者さんが、全ての抗パーキンソン薬を卒業して、尚且つADLが自立したというような話を聞くと、そのようなことがあるものかと驚く。パーキンソン病は最も患者数の多い変性疾患の一つである。

 

ただし、以前このような記事を書いたが、

 

www.ninchi-shou.com

 

もし神経変性疾患に「神経ペナンブラ」とも呼ぶべき可逆的な領域があるとすれば、グルタチオン点滴であれほど速やかに症状(パーキンソン病では歩行)が改善する方達が多いのは納得がいく。体内で起きている酸化還元反応とは、生きている間は一瞬も休むことのないダイナミックな営みである。

 

可逆的な領域が多く残っていれば、それはまた修復可能な領域も多く残っている、ということだろう。神経ペナンブラという観点から考えれば、MCI(軽度認知機能障害)に早期から介入すべきであるのは論を待たない。

 

ただし、この「早期介入」を、抗認知症薬を中心に行うことには賛成できない。アリセプト1mgやリバスタッチ1.125mgといった、極少量の抗認知症薬チャレンジテストを行うことは、「どれほど神経伝達物質が減っているのか」を知るためには意義があるだろうが、ルーチンでやるべきことではないと考える。

 

ルーチンでやるべきことは、「糖質制限」である。神経組織変性の進行を抑えるためには、糖質制限が必須であるように思う。

 

過剰な糖質摂取によってもたらされるAGEs(最終糖化産物)発生及び蓄積を、まずは減らす。その上で、高タンパク摂取で神経伝達物質の材料を補充しつつ、鉄や亜鉛などのミネラルを適量補充、そしてメガビタミン。エネルギー産生は良質の脂質で賄う。

 

要は、VKTの発想である。

 

敵はガンではないので兵糧攻めということではないが、炎症を惹起する糖質を控えることで症状の進行を抑えつつ、残存機能を生かすためにタンパク脂質ビタミンをしっかり補充するという考えは、ガンと共存ならぬ「認知症と共存する」という考えに繋がる。

 

www.ninchi-shou.com

 

キッチリ取り組むことが出来れば、VKTは認知症治療に大いに役だってくれるだろうという確信はある。グルタチオン点滴療法も、糖質制限が併用出来たらどれほど効果が高まることだろう。

 

しかし同時に、それが現実的には相当困難だということも分かっている。認知症患者さん達に「何故コメを食べない方がいいのか」ということを理解して貰うことは、ほぼ無理である。だからこそ、理解力と病識を残しているMCIのうちから取り組みたいのである。

 

  • 主食を食べて何が悪い?
  • 三大栄養素の割合は、糖質60%に脂質タンパク質で40%が基本中の基本!
  • 炭水化物が太るのは分かっちゃいるけど、おいしいから止められない・・・

 

このような反応に、以前は一つずつ丁寧に時間をかけて説明をしていた。しかし最近は、短い説明にとどめている。理解できない人は、何度説明してもほぼ永遠に理解できないことが分かってきたからである。そこに延々と時間をかけ続けるよりは、別のことに注力したい。

 

元々こちらも強制するつもりはないし、また強制できるものでもない。あくまでも「知識と経験に基づいた、改善の可能性が高い治療上の提案」であり、それを受け入れるかどうかは患者さんやご家族に委ねられている。

 

認知症の新薬誕生に希望を託しつつも、やるべきことはやっておきたい。