鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

ナイアシン処方の工夫について。

 統合失調症の方を数名診ている。

 

長年の経過で陽性症状は既に枯れ、陰性症状メインの方達である。みなさん抗精神病薬は精神科で処方されており、当院では生活習慣病対策を行っているのだが、少しでも抗精神病薬の減量に繋がればと考えてナイアシンを処方している。

ナイアシンで統合失調症を治療する

 

ナイアシン(かつてはビタミンB3と呼ばれていた)で統合失調症を治療するという発想は、A・ホッファーの著書から学んだ。

 

統合失調症 ナイアシン



「ビタミンB-3の効果」は既に絶版となっているようで、Amazonでは中古品で約12000円の値段がついていた。「統合失調症を治す」は、まだ手に入るようだ。

 

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院内では500mgのナイアシンを受付にて販売しているが、可能な方はiHerbを通じて自分で購入してもらうように伝えている。

 

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ナイアシンフラッシュが気になる方は、100mgで始めればよい。

 

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ナイアシンフラッシュについては、下記記事をご参考に。

 

 

www.ninchi-shou.com

 

統合失調症をビタミン補給+糖質制限+鉄タンパク補給で治療する方法については、広島の藤川先生が豊富な症例と共に提示している。

 

統合失調症におけるナイアシン(B3)、B6の効果|精神科医こてつ名誉院長のブログ

 

 

保険の範囲内でのナイアシン最大処方量は?

 

当院で診ている統合失調症の方は、既に20年以上の経過の方達ばかりである。なので、ナイアシン導入で劇的に改善とまではいかないのが残念なのだが、それでも何かしらの好変化は感じ取ることが出来る。

 

ある30代の女性は、中学3年生の頃に統合失調症を発症。当院初診時は、精神科から

 

  • セルシン5mg 3T3X
  • テプレノン 3C3X
  • リボトリール0.5 6T3X
  • アキネトン1 6T3X
  • センノサイド12 4T1X眠前
  • レキソタン5 2T2X
  • カマグ1g2X
  • クアゼパム20 1T1X眠前
  • オランザピン10 1T1X眠前
  • ヒベルナ25 0.5T1X眠前
  • フェノバール30 1T1X眠前
  • リスパダール1 頓用

 

このような処方を受けていた。

 

赤文字の薬を少しでも減らせればと考えてナイアシンを導入したのだが、残念ながら精神科主治医は減薬に積極的ではないのか、当院初診から1年以上経過した今でも、十年一日の如く処方に変化がない。

 

ただし、ナイアシンを内服するようになってから、本人的には「年来の冷え症がなくなり、手足がいつもぽかぽかするようになった」という変化があり、母親からは「アルバイトで家計を支えようという意欲が出てきた。以前よりも明るくなった。」という評価が得られている。*1

 

この方は現在、サプリで1500mg/day、保険処方でペリシット1000mg/dayという形でナイアシンを内服している。ペリシットは添付文書上は750mg/dayが最高量だが、今のところ1000mg/dayでもレセプトでカットされずに処方出来ている。

 

ナイアシンを含む保険薬は、自分が把握しているのは以下の3種類。一日あたりの最大用量と、ナイアシン含有量、そして保険適応病名も併記する。

 

  • ペリシット(250mg)ーナイアシン220mgー高脂血症・レイノー病
  • ユベラNソフトカプセル(200mg)ーナイアシン40mgー高脂血症
  • ナイクリン錠(50mg)ーナイアシン50mgー口内炎・メニエール症候群

 

上記3薬剤を保険で認められている最大量で処方すると、ペリシット3錠+ユベラN3カプセル+ナイクリン4錠で、一日あたり980mgのナイアシンを摂取することが出来る。

 

その他、使ったことはないがへプロニカート(レイノー病などに適応のある血管拡張薬)というニコチン酸誘導体もある。

 

知り合いの薬剤師さんに教えて貰ったのだが、へプロニカートは小腸内で加水分解されてニコチン酸となり吸収されるため、分子量から計算するとへプロニカート100mgあたり約73mgがナイアシンに変換される計算になる、とのこと。

 

そうすると、一日当たりのへプロニカート最大量は600mgなので、うまくいくと420mg程度のナイアシン補給になる。

 

上記3薬剤にへプロニカートまで加えると、最大で1400mg/dayのナイアシンが、理論上は保険で処方可能となる。

 

適切に病名を付与する必要はあるものの、サプリメント自己購入が難しい方であれば、この方法は検討の余地ありかと思われる。

 

ところで、先日メーカーからナイクリン錠の販売中止の知らせがあった。

 

ナイクリン販売中止

トーアエイヨウ医療関係者向け情報より引用



2018年4月で出荷終了となるため、在庫がなくなり次第ナイクリン錠は使えなくなる。ちょっと残念。

 

販売中止の理由は、「製薬会社にとって利益が少ないから」ということだとは思うが、保険薬によるナイアシン補給の主力であるペリシットだけは何とか残してほしいものである。

 

統合失調症の治療うんぬんを抜きにして、脂質のバランスを改善させ、冷え症にも使える良い薬なので。

 

メーカーさん、よろしくお願いします<(_ _)>

*1:死なないために必要なビタミンの作用が生理作用、メガビタミンで得られる症状改善はビタミンの薬理作用。