今回は、ほぼほぼ自分語り。
小学校〜高校までの便秘ライフ
小学校~中学校ぐらいまでは、毎朝のように腹痛でトイレに籠もる日々だった。便秘と下痢を繰り返す、いわゆる過敏性腸症候群(IBS)だったと思うのだが、この頃は市販のビオフェルミンを毎日のように飲んでいた。
「朝ご飯を食べないと頭が悪くなる」という母の信念の元、朝食は必ず食べさせられていた。そして毎朝、腹痛を起こしていた。
子供ながらに流石に考えたのは、
「朝食を食べるからお腹が痛くなるのでは?」
だった。
そこで意を決し、高校に入ってからは朝食を摂らずに登校するようにしてみた。そしたら案の定、朝の腹痛は激減した。
何たる開放感。
親の軛から解放されたと初めて感じた瞬間でもあった。
大学生〜社会人の便秘ライフ
朝食を摂らないことで朝の腹痛はクリアしたのだが、便秘そのものの改善はまた別の話であった(当然)。
大学時代は、【週末に大量飲酒→翌日下痢】という荒技で便秘解消を図っていた。つまり、酒(≒大量の水分)が下剤代わりという訳だ。しかし社会人になると、流石に同じ手法を連用するわけにはいかなくなった。
マグミットのような緩下剤を常用することは最初から諦めていた。何故なら、緩下剤の内服後に、どのタイミングで排泄欲求が来るかが読めなかったからだ。
マグミットを飲んだ後に緊急呼び出しがかかり、腹痛を抱えながら救急患者対応をするなど考えるだに恐ろしいことではないか。
脳神経外科医という仕事もまた、便秘人にとって優しくはない。
平均で5時間前後、時に半日に及ぶような顕微鏡手術の間は軽い脱水を余儀なくされる。手術後にトイレに行き、とんでもない色の尿を見てゲンナリすることは外科医なら誰でもあるはず。脱水は便秘人にとっては大敵なのである。
結局、適当に食物繊維や酒の力を借りながら便秘と付き合っていた。
開業以降の便秘ライフ
2016年4月に開業し、手術や緊急の呼び出しに追われる生活とは無縁になり、水分もこまめに摂ることが出来るようになった。
では、便秘は解消したか?
否、であった。
一日中座りっぱなしで外来をするようになり、むしろ便秘は悪化してしまった。
座りっ放しの生活は便秘人にとっては勿論最悪で、また、排泄欲求が襲ってきても診察中は我慢しなくてはならず、そうしているうちに排泄欲求は波のように過ぎ去ってしまう。過ぎた波は、戻ってこないことが多々ある。
色々な事を想定して開業に臨んだのだが、便秘の悪化は正直なところ想定外だった。*1
ここで、自分の排便ダイアリーをご覧に入れる。頭痛人が頭痛ダイアリーを付けて傾向を探るように、便秘人も便秘ダイアリーを付けるのがお勧めである。
2017年9月は、30日間で9回という残念な排便状況orz
9月5日の前は8月29日で、9月11日のあとは9月20日。このように、1週間出ないことはザラだった。
次に、今年1月のカレンダー。
31日間で22回(^^)/
前年9月と比較して格段の排泄率向上である。ちなみに、△印は満足度を現している。
便秘人は一体、何をしたのか?
マグネシウムサプリメントで便秘改善
このマグネシウムサプリメントを飲むようになって、相当な便秘改善が得られるようになった。
Rainbow Light, マグネシウム カルシウム+、 食品ベース処方、 180錠 - iHerb.com
2017年12月17日から開始したマグネシウムサプリメントの効果が2018年1月に現れたことは、上掲した便秘ダイアリーの通り。
このサプリメントは、一日3錠飲んだ場合で以下の摂取量となる。
- マグネシウム 1000mg(アミノ酸キレート)
- カルシウム 500mg(アミノ酸キレート)
- ビタミンC 200mg
- ビタミンD 400IU(D3コレカルシフェロール)
- ビタミンB6 2mg
- ベタインHCL 60mg
自分は空腹時に朝と昼1錠ずつで内服しているが、お腹具合で適宜調整している。胃酸少なめの自分にとっては、ベタインHCLが含まれているのはポイントが高い。
一般にマグネシウムとカルシウムは1対2の比率で摂取することが望ましいと言われているが、肩こりが強く(マグネシウムは肩こりにもよい)便秘人の自分にとってはマグネシウム多めの摂取量が望ましいと考えたので、敢えて比率を2対1に逆転させたサプリメントを摂取している。*2
上手く調整出来る人であれば、処方薬のマグミットやマグラックスなどのマグネシウム製剤内服で良いと思う。
自分の場合、今のサプリメントの方が”効きすぎる”ということがないので愛用している。これは、マグネシウムがアミノ酸でキレートされているからである。*3
マグミットと潤腸湯、麻子仁丸などの漢方を併用した便秘対策
通常は、就寝中に副交感神経の働きによって消化管運動が亢進し、起床後に速やかな排便が起きる。
しかし自分の場合は、起床後1時間以上たっても腸管が動いている感じがしない。食事を入れたら動き出すわけでもなく、「もたっ」と胃の中に停留してしまう。このような人は、無理に朝食は摂らなくてもよいだろう。
腸内環境や自律神経機能は人それぞれで便秘対策も様々だが、ここからは便秘薬の使い方について紹介していく。
便秘薬は
- 浸透圧性下剤・・・便を軟らかくする
- 刺激性下剤・・・腸を動かす
に大別されるが、1の代表的な製剤は酸化マグネシウム(マグラックス、マグミットなど)。2の代表的な製剤はプルゼニド(センノシド)やラキソベロン、大黄甘草湯などである。
便秘時の工夫を以下に挙げる。
- 水分摂取(最も重要)
- 座りっ放しを避けて、適宜運動
- 食物繊維摂取
- マグミットなどの浸透圧性下剤を優先させ、刺激性下剤はほどほどにする。
刺激性下剤を高用量で長年内服し続けていると、腸粘膜の色素が変性し腸管運動が悪化する「大腸メラノーシス」を起こす可能性があるので、使用はほどほどに抑えるのがよい。*4
高齢者を診ることの多い自分だが、高齢になって初めて便秘になる方はほぼおらず、大体は筋金入りの便秘人である。
まずマグミットなどの浸透圧性下剤で治療を開始し、効果がなければ潤腸湯や麻子仁丸を加える。漢方の使い方だが、まずは眠前に1包出して反応を確かめ、効果がなければ漸増する。最初から朝昼晩1包ずつといった出し方はしない。頓服の1包や2包という飲み方で効く人は、それでもよい。
麻子仁丸は自分の場合、眠前1包内服で翌日は一日中お腹が動き便が少しずつ出続けるため、仕事をしながらの普段使いはちょっと難しい。
潤腸湯と麻子仁丸は、刺激成分の大黄をそれぞれ2gと4g(3包あたり)含んでいる。その他、麻子仁や杏仁といった緩下成分も含んでおり、系統としては刺激性下剤に属する。
大黄の主成分はセンノシドで、大黄1gあたり3mgのセンノシドが含まれており、潤腸湯3包には6mg、麻子仁丸3包には12mgのセンノシドが含まれる計算になる。
頻用される刺激性下剤プルゼニド1錠に含まれるセンノシドは12mgなので、麻子仁丸3包と同じ強さというイメージ。プルゼニドは眠前2錠という使い方が一般的のようだが、その場合センノシドは24mgとかなり高用量になる。
時々、マグミットや漢方を使わずにプルゼニドだけで眠前3錠や4錠内服という処方せんを見かける。このような使い方は腸へ負担をかけるので、自分はしない。
下剤は浸透圧性のマグネシウム(サプリメント含む)が第一選択である。
水分をしっかり摂りながら、マグネシウムで水分を腸の中に引き寄せ便を軟らかくする。食物繊維も水溶性と不溶性を両方摂る。
これでダメなら、刺激成分と緩下成分を含む漢方を併用する。それでもダメなら、リンゼスやグーフィスといった新規便秘薬を検討する。*5
30年以上のベテラン便秘人として、今のところの便秘対策を述べてみた。参考になれば幸いである。
藤田 紘一郎
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