YNさんの初診から1年半までの経過をご紹介する。
微妙な方には、過剰介入にならないように気をつけて診ている。
80代女性 MCI~ATD
初診時
(既往歴)
特記事項なし
(現病歴)
1年前ほどより物忘れあり。4ヶ月前に〇〇病院神経内科でアルツハイマーの診断を受け、アリセプト5mgが開始となったが、内服後より怒りっぽくなったとのこと。
(診察所見)
HDS-R:18/30
遅延再生:0
立方体模写:OK
時計描画:OK
IADL:6
改訂クリクトン尺度:2
Zarit:1
GDS:0
保続:
取り繕い:あり
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:
FTLDセット:
頭部CT所見:特記所見なし
介護保険:なし
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:アリセプトでやや惹起?
傾眠:なし
(診断)
ATD:△
DLB:
FTLD:
その他:
(考察)
アリセプト5mgで易怒性亢進?「飲み出していいことは何も無い」とご家族は言う。
ただし、遅延再生0/6は要注意かな。
アリセプトは2.5mgに減量してみる。家族受け入れは良い。過剰介入は慎むこと。
2週間後
- 易怒性減退
- 夕食の内容をすぐに思い出すようになった
良い変化が生まれているようだ。
さらに1.5mgに減量してみましょう。
2週間後
著変なし。
当面アリセプトは1.5mgで良さそうだ。
今日は採血。次回説明。処方は現在当院のみ。
4週間後
採血概ね問題なし。
中核症状と周辺症状について説明。
アリセプトは現在の量で維持する。
4週間後
「短期記憶低下がやや目立つかも」とご家族。
神経伝達物質のバランスについて説明。処方継続。
フェルガードの情報提供。
4週間後
「知人のもてなしを満足に出来なかった」と凄く落ち込んでいる。その辺りから、短期記憶が著明に落ちている。家では薬の内服について疑問を口にするようだが、診察室では取り繕う。ATD+iNPHパターンが目立ちだしたかな。
落ち込んだ気分を紛らわすための外出頻度を増やしましょう。デイサービスには拒否的なようなので、体力作りを前面に出してデイケアをプッシュ。抗認知症薬増量は様子をみる。
フェルガードにも拒否的なので、慎重に。
4週間後
前回からの経過で変化はない。
歩行はすり足。40年ほど前に大腿骨骨折。膝はOA(変形性膝関節症)かな。その影響はあろうが、脳室拡大はあるのでNPHの可能性は忘れないように。
4週間後
- すり足は目立つかな
- 日中活気低下も軽度ありそう
- 好きなカラオケで歌詞を覚えるのを億劫がるように
- 『変な声で歌ったら文句を言われるからね』と言う。これは取り繕いかな
便秘の訴えにマグミット。
次回はHDSRと透視立方体模写と時計描画テストを。
初診から半年経過
- HDSR21/30
- 遅延再生5/6
- 透視立方体模写と時計描画テストはOK
初診から半年、アリセプト減量でHDSRは3点上昇。
デイを2箇所見学。マグミットは朝だけで良さそう。減量。
4週間後
前回HDSRは21(5)、透視立方体模写と時計描画テストはOK。
〇〇クリニックのデイが週に2回で始まった。ひとまず楽しめそうな感じ。
次回はCTを。その結果でタップ(髄液排除試験)するかどうか検討。マグミットの残には気をつけておく。
4週間後
1年前の頭部CTと比較して、萎縮進行はないが頭蓋内内頚動脈の硬化性変化が目立つ。
プレタール50mg開始。現在〇〇クリニックで骨粗鬆症の薬剤が2種類。
マグミットは一旦頓用にしましょう。経過良好。
4週間後
プレタールの副作用なし。
マグミットは長く使っていないとのこと。
順調な経過。数十年ぶりに、高校の同級生とデイで再会したことを喜んでいる。
初診から1年後
- HDSR25/30
- 遅延再生5/6
- 透視立方体模写と時計描画テストはOK
1年前の初診時はHDSR18/30で遅延再生は0点。
抜群の改善。急かす夫から受けるストレスはあるだろうが、最後は皆さん診察室から笑顔で帰られる。順調である。
いずれアリセプトは終了に。その際にはプレタール増量かな。
1ヶ月後
著変無く経過中。今回は、「重病人じゃないのだから、娘と二人で行ってくるよ」と、ご本人希望でご主人同伴はなし。
今回からアリセプト終了、完全にプレタールに置き換えてみる。
3週間後
アリセプト終了で、自覚的他覚的に記憶低下ありか。
- 本人「なんか頭がおかしい、忘れる」
- 家族「聞き返しが増えた」
アリセプトを再開する。自宅に残っているのは3mgとのことで、ひとまず3mgを再開に。朝夕内服だと夕を忘れる。余りは次回持参して。
次回は採血結果説明。
1ヶ月後
フェリチン19に対してフェロミア開始。
アリセプト3mgでは易怒性亢進かな。ご主人とケンカして、ご主人が先に謝れば機嫌はよくなる。
1.5mgでいこう。残薬調整。
1ヶ月後
著変無く経過中。
すり足頻尿は確実にある。タップテストを勧めた.連絡待ち。
処方は維持。
1ヶ月後
家族相談の結果、タップテストは見送りで。頻尿は一時はお悩みだったが、今はさほどでもなくなっている。
その他、著変無く経過中。
初診から1年半後
- HDSR 24/30(初診時18/30)
- 遅延再生2/6(初診時0/6)
- 透視立方体模写OK、時計描画テストは拙劣だが10時10分ミスは指摘で気づく
周辺視野の衰え、日時見当識と短期記憶低下。1年半でみると、まずまずの経過かな。
次回は採血結果説明。
(引用終了)