アルツハイマーではない可能性も念頭に置きながら、経過観察中。
67歳男性 アルツハイマー型認知症疑い
初診時
(現病歴)
3〜4年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けアリセプト内服が始まった。その後、長男さんが引き取って近くに住まわせるようになった。今後の処方をお願いしたい、と来院。ぬーっと入室し、着席後に腕組み足組。
(診察所見)
HDS-R:18
遅延再生:1
立方体模写:OK
時計描画:不可
クリクトン尺度:20
保続:なし
取り繕い:軽度あり
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:0.5
rigid:なし
ピックスコア:3.5
頭部CT左右差:あり
介護保険:申請中
胃切除:なし
(診断)
ATD:△
DLB:
FTLD:△
MCI:
その他:
FTLD(前頭側頭葉変性症)≒ATD(アルツハイマー型認知症)の両天秤。表情と態度からはピック感を感じる。頭部CTもそれを示唆する所見あり。
易怒性はないのでアリセプトは5mgのまま継続にし、フェルガードに関する情報提供を行った。
初診から1ヶ月後
前回受診後からフェルガードLAを開始。
少し生活に落ち着きが出てきた?
自分で買い物に行けるようになった。
現在介護保険申請中。
初診から3ヶ月後
HDSR12
遅延再生3/6
日時見当識と野菜語想起で失点が多い。フェルガード飲み忘れが多いと。朝夕の2回、新聞と日めくりカレンダーで日時を確認するように。
初診から8ヶ月後
HDSR19/30
遅延再生2/6
HDSRは過去最高点。
前回から、薬の管理に息子さんが相当気をつけるようになったと。運転終了についてお話。
初診から1年後
HDSR23
遅延再生4/6
これまでで最も良い結果。時計描画テストの正確性が向上している。フェルガードLAは継続出来ている。
息子さんからすると、さほど日常に変化はないが穏やかに過ごしていると。
(記録より引用終了)
結局アルツハイマー型認知症なのか?
もしアルツハイマー型認知症なら、発症から4〜5年経過して今の状況というのはちょっと首をかしげる。典型的なアルツハイマー型認知症の場合、年に約2点ずつHDSRの点数が低下していくと言われている。
ちなみに、この方の頭部画像はこちら。
側頭葉内側の萎縮に、やや左右差を感じる。脳萎縮の左右差は、FTLDの画像所見として有用である。もう少し上のスライスはこちら。
やはり左右差は気になる。ちなみにシルビウス裂が少し開いて見えるが、頭頂脳溝消失はなく、また歩行障害や失禁などの水頭症の臨床症状は認めない。
ATD≒FTLDの印象から、若干だがFTLD>ATDという印象に傾きつつある。
今のところ、症状の変動がありつつも介入当初より状態は改善している。これはアリセプトを据え置きにしてフェルガードLAを追加した効果と考えている。
今後、易怒性が亢進することがあればアリセプトを減量、または中止予定。息子さんのご希望は、
可能な限り、穏やかにのんびりと一人暮らしを続けて貰いたい
とのことである。