平成27年3月1日に開催された、第一回認知症治療研究会に参加してきました。満員となった450名の会場は熱気に包まれていた。また、報道陣ブースも設けられており、社会的な関心の高さも窺えた。
当日の流れ
堀 智勝医師
認知症治療研究会代表である堀先生の挨拶でスタート。
岩田 明医師
膨大な実績を元に、具体例を交えて著明な改善例を次々に紹介。
頭部CTで基底核の石灰化を見つけた場合、アルツハイマーである可能性はかなり低くなる、という説を述べられていた。なるほど。
世話人介護福祉士(お名前は伏せます)
医師の処方や診断の稚拙さ。それを助長するのは介護スタッフの不勉強であると指摘。家族も含め、関わる人間がみな勉強することが大事だと再認識。
ゆっくりと、訥々とした話しぶりが印象的であった。
小板 美代子、健太ケアマネージャー
コウノメソッド実践ケアマネージャーとしてご活躍の親子!
大病院、専門医指向は、現状では実は危ういことや、ケアマネージャーは家族の言葉を「通訳」して医師に伝えることが重要と指摘。
「ケアマネージャーの分際で!」と医師から詰られたことがあるが、怯むことはないという姿勢に感銘を受けた。残念ながら、これは本当にある話で、自分も目にして唖然としたことがあります。
金谷 潔史医師(ランチョンセミナー)
- ピュアなアルツハイマーは女性に多い。
- 脳の萎縮を代償するように、脳室が拡大していく。
- βセクレターゼ阻害剤に期待。上手くいって市場に出るのは2020年頃かと。
- DLBとATDの合併は多い。
- 抗認知症薬がそれぞれどの部位の脳血流を増やしているのかを紹介。
- メマリーは後頭葉血流を増やす。
- フェルガードは中脳被蓋の血流を増やす。これは独特らしい。
堀 智勝医師
- 手術に携わらない脳神経外科医は約4000名。積極的に認知症に関わる必要がある。
- MCIに対するフェルガードの治験を計画中。cross over RCTで行う予定。
- アルツハイマーにDBSを行うと、脳血流を増やし、海馬の体積も増やす。
- 海馬を直接刺激してもダメ。
- 異臭症に対しては、嗅神経終末を取り除くことで良くなる場合がある。
- 超音波収束装置で本態性振戦を治療。これを応用してBBBを開く。そして抗認知症薬を直接静脈注入。
夢のある話が多く聞けた。
河野 和彦医師
- 認知症領域は未完成だからこそ、医者は信じるな、薬を信じるな。
- 薬害と言うが、悪いのは医者である。
- 今やるべき事は、家族や社会に迷惑をかけないような治療である。根本的なワクチンなどによる治療は、まだ先の話である。
最後は動画で締めくくり。診療風景が見られるのは、医療者にとっても一般の方にとっても、とても勉強になる。
萩原 秀男医師
- 老健でBPSD治療を積極的に行う。
- ショートステイを使って少量薬物療法。
- FASTを有効活用。
- 患者さんごとの薬剤投与カレンダー作成。
- 薬物治療50%、介護50%を目指す。
- 介護スタッフがコウノメソッドを学ぶことで、利用者や家族、そして介護スタッフ自身の身を守ることに繋がる。
- 老健によるBPSD治療は、地域包括ケアを補完する重要な受け皿になり得る。
早口で軽妙な江戸弁(?)で、会場は爆笑の渦。内容は、自分がこういうことがやれたら楽しいだろうな、と思っていたことだったので、強く共感出来た。
平川 亘医師
- リバスチグミンは9mg以下。MAXは13.5mg。
- 高齢者の認知症は併存している。
- 増量規定はおかしい。
- コリンエステラーゼ阻害剤の量を間違えると、逆にコリンエステラーゼを増やしてしまい認知症が悪化するのではないか?
- リバスチグミンで幻視が消える例が多い。
- 2.25mgで開始。1.125mgという処方もあり。
- リバスチグミンは抗せん妄効果が期待できる。頓用でOK。
- くも膜下出血後の遷延する意識障害に、リバスチグミンが有効。
- 中脳や視床が傷んでいなければ、リバスチグミンが効く可能性がある。
脳外科手術や救急も診ながら、認知症診療もしている平川先生。同じ現役脳神経外科医として、今回一番印象に残った発表であった。特に、術後せん妄やくも膜下出血後の意識障害がリバスチグミンで改善する動画は強烈であった。これは、明日からでも自分の臨床に応用してみよう。
感想
認知症に関わる医療者や家族が欲しがっている情報は、「こういう工夫をしたら、これだけ良くなった」という、具体的な改善例だと思う。
そういう情報を発信し続けていける研究会、学会に育っていって欲しい。
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懇親会で挨拶された河野先生 |