鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

ビタミンDと糖尿病、認知症の関係について。

 糖尿病予防や治療の一助となるかな?

クエチアピン(商品名セロクエル)による高血糖を、ビタミンDが軽減したという報告

 

www.qlifepro.com

 

  研究グループは、世界で最も大きな有害事象データベースである米国のFAERSのビッグデータから、非定型統合失調症治療薬であるクエチアピンによる高血糖を軽減させる別の医薬品を繰り返し計算によって探索し、最も有力な候補としてビタミンDを見出した。実際、マウスを用いた動物実験において活性ビタミンD誘導体は、クエチアピンによる高血糖を軽減させ、その高血糖がインスリン抵抗性に基づくものであることが明らかになったとしている。(上記リンクより引用)

 

グルコースは、GLUT4という輸送体を通じて骨格筋に取り込まれる。このGLUT4の働きが鈍くなれば、糖の取り込みも悪くなる。糖の取り込みが悪くなると、血糖値が上がる。

 

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上は、京都大学のプレスリリースからお借りした画像。

 

クエチアピンによってPI3Kの発現が低下し、GLUT4の発現も低下することでグルコースの取り込みが低下する。しかし、ビタミンDがPI3K発現を活性化することでGLUT4の発現も活性化し、グルコースの取り込みが増える。このような流れだと理解した。

 

ビタミンDで糖尿病対策が出来るのでは?

 

上記画像内では、赤文字で

 

  クエチアピンによるインスリン抵抗性はビタミンDによるPI3K活性化で阻止できる

 

と書かれており、あくまでもクエチアピン使用下ということのようだが、一般的な糖尿病予防や治療にも応用できるのでは?と考えたくはなる。

 

  実際、マウスを用いた動物実験において活性ビタミンD誘導体は、クエチアピンによる高血糖を軽減させ、その高血糖がインスリン抵抗性に基づくものであることが明らかになりました。

 

という文言に注目したのだが、現行の保険薬ではロカルトロールやエディロール、注射薬だとオキサロールだろうか。

 

(活性型)ビタミンDの作用だが、

 

  • 小腸からのカルシウム吸収を促進
  • 腎臓に働きかけてカルシウムの再吸収を促進
  • 破骨細胞の働きを抑制することで、骨吸収を抑制

 

主にこの3つの作用機序を根拠に、骨粗鬆症対策の薬として使われている。

 

糖尿病治療にどの程度の量で応用すべきかは何とも分からないが、上記作用機序から当然注意すべきは高カルシウム血症だろう。

 

自分の患者さんにピック病の女性の方がいるのだが、セロクエルで落ち着いてはいるけれども、HbA1cが6.2前後でウロウロしている人がいる。

 

今回の報告を読んで、高Caに注意しながらエディロール0.5㎍を検討してみようかな?と思った次第。

 

また、ビタミンDのその他の特徴として

 

  • 中枢神経系全体に渡って受容体が存在し、アルツハイマーやパーキンソン病との関連が指摘されている
  • モノアミン(ドパミン、ノルエピネフリンなど)生成にビタミンDが関与している

 

このようなことも言われているので、骨粗鬆症や糖尿病対策としてだけではなく、認知症対策としてもビタミンDの可能性には要注目と言える。