鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

いつまでも治らずにブヨブヨしているたんこぶの処置。

 

先日、「たんこぶが治らずにブヨブヨしているので診て欲しい」というご相談を受けた。

 

聞くと、2週間前に転んで頭を打撲し、その後じわじわとたんこぶが膨らんでき改善しないため受診したという経緯だった。

 

穿刺して吸引し、圧迫帯を巻く

 

触診で確かめると、確かにたんこぶは柔らかくブヨブヨしていた。痛がる様子も特になし。

 

帽状腱膜下血腫の頭部CT画像

右が頭部CT、左がCTのsurface rendering画像

 

念のために頭部画像評価を行ったが、右の側頭部から頭頂部にかけて約20mlの血腫を認めた。幸い、骨折や頭蓋内出血は認めなかった。

 

この状態から血腫が自然に吸収される可能性はないので、23ゲージの翼状針を穿刺して血腫を吸引することにした。

 

帽状腱膜下血腫の治療

23G針で穿刺吸引、圧迫包帯で圧迫固定。

 

用手圧迫しつつ約12mlの排液を得たところで針を抜き、自着する圧迫包帯を巻いてブヨブヨ部分を固定した。

 

抗炎症作用を期待して治打撲一方を処方し1週間後に診察したが、ブヨブヨ部分はほぼ元に戻っていたので終診とした。

 

たんこぶの分類について

 

たんこぶの語源には、アイヌ語「tapkop」からといった説があるが、たんこぶは「こぶ」に「たん」が加わった語で、「たんこぶ」の「たん」が略され「こぶ」が生じたわけではないため、この説は採用できない。 たんこぶが打撲などで盛り上がった部分を指すのに対し、こぶは臓器にできるものや、物の表面が膨れ上がった部分、紐の結び目など、「塊」といった広い意味でも用いられるため、打撲による「こぶ」であることが解るよう、「たん」が加えられて「たんこぶ」になったと解釈できる。 「たん」を区別のためとした場合、たんこぶの「たん」は、「叩く」の意味や叩いた時の音「タン・トン」、こぶの色から「赤色」を意味する「たん(丹)」、多くは頭にできた瘤をいうことから「とう(頭)」の音変化など考えられるが、特定は難しい。(語源由来辞典より引用)

 

たんこぶを医学的に表現すると「皮下血腫」または「帽状腱膜下血腫」である。

 

たんこぶ 皮下血腫 帽状腱膜下血腫

「メディカルノート」より引用


今回紹介した方のたんこぶは、頭部CTで血腫底面がほぼ骨面と密着している*1ことから、帽状腱膜下血腫と思われた。

 

皮下血腫と帽状腱膜下血腫の見分け方だが、個人的には打撲直後の性状が硬ければ皮下血腫、軟らかければ帽状腱膜下血腫としている。

 

高齢者の頭部打撲では容易にたんこぶが出来るが、かなりのサイズでも自然と吸収されていく。恐らく皮下血腫なのだろう。高齢者は皮下組織が薄いためか、吸収されていく過程で重力に従って血腫が下に移動していくことがあり、一見事態が悪化しているようにみえるが心配は要らない。移動した血腫もいずれは吸収されていく。

 

大人よりも子どもで多く経験するが、打撲から2週間以上経ってもなお吸収されずにブヨブヨ残っているたんこぶは、皮下血腫ではなく帽状腱膜下血腫と思われる。

 

治療は上記したように、残存血腫の穿刺吸引及び圧迫固定である。ほとんどは一発で治るが、もし打撲直後から大きな血腫ができた場合は、その時点で治打撲一方を飲み始めた方が予後が良い(血腫が早く消退する)印象である。

 

ところで、「頭をぶつけてもたんこぶが出来たら大丈夫。」みたいな話を結構な頻度で耳にすることがあるのだが、根拠のない迷信だと思う。

 

たんこぶのほとんどはそのまま様子を見てよいが、病院を受診すべきかどうかの判断は、「打撲直後の意識状態」で決めたら良い。一瞬でも意識を失ったり、しばらく朦朧としていたのであれば、受診し頭部CTを撮ることをお勧めする。

 

 

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*1:骨膜下血腫の可能性は恐らくない。通常の打撲で骨膜が骨面から剥がれることは、そうそうない。