2年近く前になるが、栄養に関する講演を行ったことがある。
キャパシティ350人の会場に約500人が詰めかけるほどの盛況ぶりから、栄養に関する社会の関心が高いことを強く思い知らされ、更に栄養の勉強を積み重ねつつ今に至っている。
3世代にわたってお付き合い
ある日、その講演を聴いた女性(以下Aさん)が、片頭痛で長年悩んでいる20代前半の娘さんを連れて来られた。
採血を行ったところ病的な鉄タンパク欠乏が発覚したので、フェルム内服を開始し低糖質高タンパク食の指導を行ったところ、短期間で劇的に頭痛の頻度が減った。
恐らくその改善を確認したからであろうが、次にAさんはご自分の両親を連れて来られた。
炭水化物摂取過多が確認出来た80代前半のご主人にはプチ糖質制限を勧め、処方されていた過量の降圧薬を減量したところ、110/60前後の血圧は140/80前後まで上昇し、心なしか以前よりも活気や意欲が向上した。
くよくよ悩んでは血圧変動をきたしていた奥さんに加味帰脾湯を処方したところ、内服開始1ヶ月後には自覚的他覚的に落ち着きが出て、極端な血圧変動も以前ほどではなくなってきたことが確認出来た。
毎年なんども風邪を引いては近医で抗生剤や抗アレルギー薬などを貰っていた奥さんは、今年は一回も近医にかかっていない。
これは、冬が来る前に渡しておいた葛根湯の効果であろう。
風邪の引き始めを感じた時点から2〜3時間おきに1包ずつ内服し、汗を掻き始めたら通常の一日3回の内服にするよう伝えておいたのだが、上手く嵌まったようだ。
味を占めた奥さんがご主人にも葛根湯を勧めたところ、証があっていたのか、ご主人も風邪の初期段階で改善が得られたとのこと。
そして先日、以前からの強い肩こりを訴えたAさんにスーパーライザー治療を開始した。効果を実感出来たら、あとは空いた時間で照射に通って貰うことにした。
「健康は、自分の問題である」ことを自覚して貰う
このご家族には、それぞれ自分達で出来る工夫をお伝えしている。
自分の座右の銘は、「健康自主管理」である。
三石巌の遺したこの言葉が、医者と患者の関係を一方的なものではなく、本来そうあるべき適正なものにしてくれると感じている。
まずは患者さんやご家族に、栄養や薬の適切な使用法といった専門的な知識をわかりやすい言葉で伝える。
患者さん達の栄養に関する知識が増えてくれば、自然と口にするものを吟味するようになる。自分の体に意識を向けるようになれば、何が自分の体調を悪化させるのかが自然とわかるようになり、それを避ける生活を心がけるようになる。
すると、体調や病状が改善してくることが多い。栄養で体調が改善すれば、減薬に繋がる。改善しなければどこかに問題があることになる。その問題を、一緒に考えて解決法を探る。
薬を処方するときには、「効いても効かなくても、出来ればその結果を教えに来て貰えませんか?」と、患者さんにお願いすることが多い。*1
そうすることで、成功例だけではなく、失敗例からも学ぶ機会を出来るだけ逃さないようにしている。
個々の患者さんから学びつつ、その経験を患者さん達にフィードバックしていく。*2
その先に、自分もその恩恵に預かれるであろう「レベルの高い健康自主管理法」が存在すると思っている。
ということで、今年もよろしくお願いいたします<(_ _)>
三石 巌
阿部出版
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