一人の患者さんに対して、複数の病院が複数の処方を行っている状況を写真で表現するならば、以下の様になると思う。
Recursive Pizza flickr photo by aaronparecki shared under a Creative Commons (BY) license
このことがポリファーマシー*1の大きな要因となっているのは、疑いようがない。
そこに自分は積極的に荷担する気は更々ないので、既にかかりつけ医がある場合にはそちらに処方をお願いすることが多い。処方の一元化が出来れば、ポリファーマシーを減らすことに繋がると考えているからである。
80代男性 アルツハイマーらしさがなくはないが・・・
初診時
(既往歴)
肺気腫
(現病歴)
妻と二人暮らし。
近所に娘さんがいる。1年前から衰えが目立つようになってきた。一日中横になって『だるい、だるい』と言っている。昼頃からやっと起きだしてくる。週に2回、〇〇病院でリハビリをしている。
診察中、常に肩で息をついており、非常に苦しそうな面持ち。COPD(≒肺気腫)の診断がついているようだが、SpO2は95。
(診察所見)
HDS-R:14
遅延再生:4
立方体模写:可
時計描画:可
IADL:1
改訂クリクトン尺度:31
Zarit:24
GDS:7
保続:なし
取り繕い:ありあり
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:ー
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:ー
FTLDセット:ー
頭部CT所見:全般萎縮
介護保険:要介護2 サービス未使用
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:なし
傾眠:ありあり
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
その他:
(考察)
答えるのが辛そうに肩で息をする。呼吸器症状の辛さから認知面低下ということは?
遅延再生は問題なし。視空間認知も問題なし。
COPDがあるので補中益気湯は治療的と考えたが、一日3回の内服は困難で家は残薬で溢れているとのこと。リバスタッチ開始。効果が確認出来たら〇〇病院で継続をお願いしましょう。通院先が増えると大変でしょうから。
2週間後
娘さんからみて、以前は昼まで起きてこなかった父が、パッチを貼りだしてからは早く起きて日中ゴロゴロすることもなく、活動的に過ごすようになってきたとのこと。
〇〇病院からは処方を断られたとのこと。当院からのパッチ処方継続とする。
(引用終了)
「専門外」だから、手を出さないのか?
今回のような事例には、しばしば遭遇する。
こちらとしては別に無茶ぶりしているつもりはない。ただ、患者さんの通院負担を少しでも減らしたいと考えているので、かかりつけ医にお願いしているだけである。
〇〇病院の患者さんで以前リバスタッチを使用している方がいたのを知っているので、病院で扱えない薬剤ということではないはず。
かかりつけ医(消化器内科医)は、専門外に手を出したくないということなのだろうか?
以下に、〇〇病院への情報提供書を掲載する。
そんなに難しい要求ではないと思うのだが、ひょっとすると先方の処方に口を出したことが気に障ったのかもしれない。
貴院通院中の〇〇様ですが、意欲低下や物忘れのご相談でご家族に伴われて本日当院を受診されました。
肩で息をするような状況で、こちらの質問には相当緊張して臨まれたようでした。HDS-Rは14/30。ただし、遅延再生は4/6で数字の逆唱や計算は問題ありませんでした。また、透視立方体模写と時計描画テストは完璧に描画可能でした。
保続は認めず、ただし取り繕いはかなり目立ちました。呼吸器症状からくる倦怠感が、認知面低下を惹起しているようにも感じられました。
何かしらの治療的処方を娘さんがご希望されましたので、最初は補中益気湯3P3Xをお勧めしましたが、家が残薬で溢れているということでしたので、一日一回貼付のリバスチグミンにしました。効果の実感があれば、次回以降の御処方をお願い出来ますでしょうか。その際には、最少量の4.5mgで維持して頂けましたら幸甚です。
現在、貴院御処方の一日3回の薬剤内服はとても無理な状況のようです。一日一回に調整願えましたら幸甚です。
以上ご報告申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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