自宅やクリニックの本棚に並ぶ本を眺めるたびに、これまでに自分が読書に費やしてきた時間について思い返す。同時に、自分に残された時間についても考える。
別に大病を患っているわけではない。
かつて夢中で読んだ本を手に取り、パラパラと眺めるのは楽しいことだ。
例えば、塩野七生の「ローマ人の物語」。
塩野 七生
新潮社
売り上げランキング: 12,980
優れた本の定義は人それぞれだと思うが、自分の場合
【自分が死する存在であることを、つかの間にしても忘れさせてくれる本】
となる。
優れた本を読んだ後には「諸行無常」という感覚に襲われることが多いのだが、この感覚は、いつかは迎える死を意識させるものであると同時に、永遠とは何かを考えさせてくれるものでもある。
病者と接する医者という仕事柄、そのような感覚を持ちやすいということはあるかもしれない。
開業3年目に入る
開業して3年目に入った。
多くの患者さんとの新たな出会いがあり、そして、少なくない数の別れがあった。患者さんや家族と共に歩む過程で、自分も自院スタッフも、多くの気づきをもらい成長を続けている。
ただ、この事業もいつかは終わる運命にある。
それが唐突に訪れるのか、それともゆっくり終わっていくのかは分からないが、夢中で続けている間は自分が死する存在だということを忘れさせてくれるかもしれない。
人生を一遍の本になぞらえるとすれば、人生を賭けて行う事業もまた、一遍の本となり得る。
終わりを迎えた後ゆっくり読み返せるような本となるように、この事業を育てていこう。
www.ninchi-shou.com