鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

術前術後の指示を自分で出せない外科医。

当院かかりつけの認知症患者さんが入院し手術が必要になったと、担当ケアマネージャーから連絡があった。

 

その時点ではまだ入院先からの連絡はなかったが、先に当院での外来経過をまとめた診療情報提供書をFAXで送った。

 

すると、直後に先方から以下のFAXが送られてきた。

 

  • 血糖値が高いので、指示を下さい
  • 血圧が高いので、対処法を教えて下さい

 

んんん?

 

指示を出せない医者が手術をする?

 

最初「この医者は研修医か?」と思い念のためにホームページで確認したところ、肩書きは専門医で見た目は医者30年目ぐらいだった。

 

勤務医時代、手術前後の血圧や血糖、その他諸々の変動に対応するための看護師への指示は全て自分で出していたし、必要に応じて自ら処置も行っていた。

 

この、手術前後の諸々の管理のことを「周術期管理」と呼ぶ。

 

周術期管理は通常、手術に入る執刀医や手術チーム医が行うものであり、自分含め後輩や同輩、先輩達も皆そうしていた。

 

自分で執刀する外科系専門医が、他科の外科系専門医(自分は脳神経外科専門医)に血糖値と血圧のコントロールについて質問してくるというあり得ない事態に戸惑いながら、

 

「えーっと(汗)、じゃあ血糖200~300の間であれば、速効性インスリンを○○単位使ってみたらどうですか?血圧は○○以上で△△を使ってみたらどうですか?」

 

と、やんわりFAXにて返事をした。

 

元々HbA1cは7未満でインスリンは使っていない患者さんだったが、周術期の一時的使用は止むを得ない。

 

その直後、今度はその病院の看護師から電話があった。

 

「血糖値が300をこえてるんですけど!指示を下さい!」

 

おおおお・・・

 

「うちの医師は、内科の指示を出せません(キリッ)

 

看護師曰く、

 

「うちは内科的な指示は内科系の先生から貰う決まりなんです。今までずっとそうしてきたので、よろしくお願いします(キリッ)」

 

そんなことを、さも当然のように言われても困る。いや、これは指示を出せない自分の病院の医者を遠回しに虚仮にしているのか?

 

そもそも、こちらは内科ではなく脳神経外科なのだが・・・orz

 

  • 手術はするけど、内科のことは分からないから指示は出せない。
  • 専門外領域の指示をウチの医者は出せない。なのでかかりつけ医が指示してくれないと私たちが困っちゃう♪

 

何をどうサボったらここまで怠惰になれるのか興味深い。資質の問題か、はたまた教育システムの問題なのか。

 

内科的なことは内科にコンサルトして指示を仰ぎ、自分で考え実行することのないまま30年も経てばこのような医者になるのだろうか。

 

就職した病院で昔からの慣習に浸っていたら、「外科医が内科的指示を出せなくても当たり前」などと考える看護師になってしまうのだろうか。

 

彼らを憐れと嗤うのは簡単だが、手術を受ける患者さんは大丈夫だろうかと心配になる。

 

血圧や血糖値のコントロールが出来ない(する気が無い)のなら、手術なんかやっちゃいけない。正気の沙汰とは思えない。 

 

 


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(名曲Crazy Doctor。当ブログ登場2回目)

 

(追記)

 

その後、この病院は手術を諦めたのか患者さんを転院させた。そしてなんと、転院先の外科医(専門医)から「血糖値の指示を下さい!」と連絡があり吃驚した。

 

アメリカでは執刀医は手術のみで術後管理は別の医者が行うと聞いたことがあるが、これらの病院はアメリカ式ということなのか?(いやいやまさか)

 

怠惰な医者