鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【妄想的小考】医療介護政策に失敗した日本。

 年をとれば足腰は弱り体力は低下し、判断力は鈍くなる。更に追い打ちをかけるように、ガンや脳卒中、認知症が加わってくる。自らの老いを認め、達観して老後を過ごせる人は一部であり、日本の高齢者を待つ未来は総じて明るいとは言えない。

 

医療でカバーできる範囲は本来限定的なはずであるが、希望を託し続ける患者さんやご家族は多い。医療者がその付託に応えようとしすぎると、その先に待っているのは過剰医療である。

 

患者達はいつの間にか複数の病院を渡り歩き、薬が10種類、15種類と増え続ける。そして、誰もその責任はとらない。 

 

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 過剰な医療の弊害が指摘されるようになると、その次に待っていたのは介護への偏重であった。高齢化社会を迎えるに当たって、最も成長が期待できる産業として国はバックアップを約束した。

 

分厚い補助に助けられ、膨大な数の介護事業所が日本中に出来たが、当然の帰結として人材は払底した。

 

人手不足で猫の手も借りたい業界が求人のハードルを下げると、介護に興味のない人々が「自分でも出来るかも?」と考え続々と参入してきた。当然、一人当たりの給与は低迷。提供する介護の質向上も中々図れず、有為な人材は絶望して業界を去った。

 

その穴を埋めるために、更にハードルを下げ続けて人を入れ続けた結果、今度は入居者や利用者への虐待と殺人のニュースが巷を賑わすようになった。

 

そのうち、抗認知症薬が4種類と増えたことも後押ししてか、医療への回帰が喧伝されるようになった。マスコミは連日のように

 

 「認知症は早期発見、早期治療が大事!!早めに薬を飲めば、進行を遅らせることが出来ますよ!!」

 

 と芸能人や大学教授を使って煽り、影響された本来健康な人々が認知症外来に列を成す。そして、本当に治療を必要とする人達は後回しにされていった。

 

かけた梯子は、外される運命にある

 

  「補助金にあぐらをかく業者は許さん!!」

 

と国が言ったかどうかは知らないが、介護報酬が削減され業界に激震が走った。

 

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悪質な業者のみならず、採算ギリギリで頑張っていた良質な業者も廃業に追い込まれた。いつの間にか特別養護老人ホーム(特養)には要介護3以上の利用者しか入居できなくなっており、あぶれた要介護2以下の利用者達の受け皿がなくなった結果、家族は仕事を辞めて自宅介護をせざるを得なくなった。

 

普段から生産年齢人口減少を問題視していた国は、ここぞとばかりに

 

 「介護業界が人手不足だ!!移民を受け入れて介護して貰おう!!これからは介護もグローバルな視点で捉える必要がある!!」

 

と、堂々と移民政策を推し進めるようになった。

 

そして、移民増加に伴う賃金下方修正圧力が加わり、日本人の実質賃金がいつまでたっても上昇せぬまま、静かに静かに日本は活力を失っていった。

 

2050年の日本

 

老朽化したインフラを修繕できぬまま使用し続けた結果、事故が日常茶飯事となった。

 

そこここに移民が溢れ、異文化間で軋轢が高まり治安は悪化。

 

巨大多国籍企業が提供する均質化したサービス以外の選択肢は存在せず、生活保護にすらあぶれた人々は傷んだ道路脇に力なく座り込み、中には横たわったまま動こうとしない人もいる。

 

たまたま通りがかった初老の男性は思う。

 

「いつの間に、日本はこんなことになったのだろう・・・」

 

 テレビでは、拳を振り上げながら政治家が叫ぶ。

 

「もっと徹底的な規制緩和を!構造改革を!」

 

記憶ももはやおぼろげだが、どうも彼らは50年ほど同じ事ばかり言い続けているようだ。いつになったら改革は終わるのだろう?

 

何故、こんなことになったのだろう? 

 


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