鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

間一髪。物忘れ外来の予約待ちをしている間に手遅れになっていたかもしれない脳腫瘍症例。

 テレビや新聞、雑誌で認知症に関する情報が氾濫している。その結果、何も困ってはいない元気な人達でも

 

今のうちにしっかり調べておこう !

 

と考えて、物忘れ外来を予約するようになってきた。

 

予防意識が高まっているのは結構なことだが、その影響で本当に治療が必要な方達の受診が遅れてしまうケースが、今後増えてくる可能性がある。

認知症を疑った主治医と家族。診断結果は・・・

 

転移性脳腫瘍の頭部CT。認知症疑いで受診。

 

脳腫瘍であった。

 

この方は60代男性で、1年前に肺癌で手術をした既往があった。物忘れ外来を受診した理由は以下。

 

  • 最近急におかしくなってきた
  • 歩き方が小刻みになってきた
  • しまい忘れや置き忘れが目立つようになってきた

 

もの忘れ外来を受診する理由として、特別おかしい点はない。ただ、「最近急に」という言葉からアルツハイマー型認知症の可能性は除外出来そうである。

 

予約の電話を頂いた時点で、既に外来は約1ヶ月待ちの状態。しかし、こういったケースに備えて「飛び込み枠」も準備はしてあり、この方はその枠を使っての受診となった。

 

肺癌や乳癌治療の既往がある方に認知症を疑う際には、まず転移性脳腫瘍の可能性は考えよう

 

転移性脳腫瘍の造影MRI

 

この方の頭部造影MRI画像である。CTでも分かるが、腫瘍の周囲には強い脳浮腫を伴っており、一刻も早い治療が必要な状態であった。

 

幸いすぐに手術を行うことで、緊急事態は免れることが出来た。術後の写真は以下。一部血管を巻き込んでいた腫瘍は残さざるを得なかった。

 

転移性脳腫瘍術後MRI画像

 

病理結果は、肺癌からの転移性脳腫瘍であった。今後は残存腫瘍に対してガンマナイフ治療を検討することになった。

 

まとめ

 

物忘れ外来受診よりも、一般的な脳神経外科外来受診を優先させた方がよいケースは以下。

 

  • 肺癌や乳癌の既往がある方
  • 急に物忘れ症状が進行してきた方
  • 若い方(40代〜60代)

 

物忘れ外来初診時の頭部画像診断は、やはり必須だなと思わされた症例であった。もし画像診断をせずに

 

認知症ですね。ではお薬を出しておきます。

 

とされていたら・・・。

 

 

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