手術は通常、執刀医(もしくは執刀医が所属する専門科)の責任の下に行われる。
ただ、全身麻酔の手術で、かつ緊急ではない予定手術であれば、心臓を含めた全身状態が全身麻酔に耐えうるのかどうかを事前に循環器科や麻酔科に相談することはある。
局所麻酔の手術とは?
ここ数年、認知症患者さんの白内障手術が可能かどうかを眼科から確認を求められることがあり、正直なところ困惑している。
白内障の手術は局所麻酔で行われる。
局所麻酔とは、麻酔の注射を部分的に用いて除痛を行う麻酔方法である。点滴で鎮静剤投与を行わない限り、手術のあいだ患者さんは意識を保っている。
侵襲性が低い(全身への負担が軽い)のが局所麻酔手術の大きなメリットだが、デメリットもある。それは、「術中の安静を保てるかどうか」である。
意識がある状態で受ける手術なので、術中に痛みや恐怖感で安静を保てなくなる可能性は考慮しなければならない。
「慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫洗浄術」や「正常圧水頭症に対する腰椎腹腔短絡術」など、自分は勤務医時代に多くの局所麻酔手術を行ってきたのだが、術中に患者さんが安静を保てない場合、呼吸状態に注意を払いながらセルシンなどを用いて鎮静を図ってきた。
恐らく、他の科の局所麻酔手術も同様な処置を行っていることと思う。
認知症患者さんの局所麻酔手術について
眼科からの照会状には、「認知症患者さんが安全に局所麻酔下手術を受けることが出来るかどうか、専門的見地からご教示下さい」と書かれてあることが多い。
かみ砕くと、「この患者さん認知症みたいだけど、手術中に動くかどうか教えてもらえないかな?」ということだと思う。
この質問にシンプルに答えるとすれば、
そんなことは分かりません<(_ _)>
となる。*1
前頭側頭葉変性症で被刺激性の強い患者さんであれば、全身麻酔で行った方が無難とは言えるかもしれない。
ただ、それを決めるのはあくまでも、「患者さんとご家族、そして執刀する眼科医」だと思う。
かかりつけ医としての意見を求められること自体には、異論はない。
しかし、これは実際にあったことなのだが、
「認知症をみている先生が『手術は可能』と言ってくれたら、ウチは出来るからね。」
と言うことだけは、勘弁して欲しい。
それはただの責任転嫁である。
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