鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

止めたドネペジルを再開すべきかで悩む、若手医師。

ある医師専用の掲示板で、

 

「全ての薬を中止したら、せん妄が改善した。その薬の中にはドネペジルがあったのだが、再開すべきか?するとしたら、どのようにすべきか?」

 

という若手医師からの質問に対する、大学病院医師と一般医師の見解が述べられていた。

 

薬を止めたら良くなった」という経験をしてもなお、「再開しないとマズいのではないか?」と考える”マジメ”な若手医師に対して、

 

「3mgでは有効性は十分でない」

 

という、(恐らく)実体験ではないガイドライン的発言を慎重に行う大学病院医師や、

 

「せん妄はドネペジルが誘発したのだろう」

 

という、(恐らく)実体験に基づく発言をする一般医師が数人、発言していた。

 

若手医師は、いずれの意見を参考にしたのだろう?

 

これが臨床医としての重大な分岐点であることに、彼は気づいただろうか。

 

80代女性 レビー小体型認知症

 

レビー小体型認知症及び糖尿病で、以下の薬剤を使用中。

 

  • L-DOPA:450㎎
  • エンタカポン300㎎
  • ロチゴチン13.5㎎
  • ドネペジル10㎎
  • インスリン皮下注射

 

突然の意識障害と痙攣で救急搬送となった。血糖測定で29と極低値で、ブドウ糖の静脈注射を行った。

 

血糖値は上昇するも、せん妄状態が続いていたため入院とした。

 

経口摂取困難だったので全ての内服を中止したところ、徐々にせん妄は改善し食事が摂れるようになった。

 

せん妄の一因となっていた可能性は否定できないが、ドネペジルの再開についてご教示願いたい。

 

中止前の10mgで再開すべきか、それとも3mg→5mg→10mgと漸増すべきか?

 

大学病院医師の見解(老年内科医)

 

アリセプトの有害作用で最も多いのは消化器症状であるが、血中濃度が急激に上昇すると消化器症状も出やすいので、3mgから再開したらよい。徐々に慣らしていけば、消化器症状は消失していくことが多い。

 

せん妄を誘発したかは定かではない。3mgでの有効性は十分ではないので、有効性が確認できる最低限の量まで増量する必要がある。 

 

一般医師の見解(脳神経外科医)

 

せん妄はドネペジルが誘発したのではないか。副作用の危険性を超えるだけの効果は、ドネペジルにはない。永久に再開する必要はない。

 

一般医師の見解(神経内科医)

 

譫妄はドネペジルが誘発したと考える。休薬したことで、せん妄は改善したのだろう。

 

ドネペジルの効果は極めて限定的であり、神経内科専門医として多数の症例を経験した結果、有害作用の方が目立つと考えここ数年は使用していない。

 

新規処方もしていないし、継続処方も中止しているが、何ら問題は生じていない。フランスでは保険から削除されている。効果を盲信して漫然と投与すべきではない。

 

一般医師の見解(精神科医)

 

ドネペジルがせん妄を改善する例はある。

 

患者さんの状態によって、本当にドネペジルが必要なのかを考えるのが臨床医としての仕事ではないか。

 

一般医師の見解(精神科医)

 

状況がよくわからない。

 

せん妄はドネペジルの副作用の可能性が高い。そもそも、この方がレビー小体型認知症である根拠が不明。抗パーキンソン病薬が多すぎることによる幻覚妄想の可能性はないだろうか。

 

ドネペジルはアセチルコリンのアゴニストであり、LーDOPAに拮抗する。中止すればL-DOPAの減量に繋がるのではないか。

 

(引用要約終了)

 

☆内容は、掲示板でのやりとりそのままではなく、適宜要約している。悪しからず。

 

www.ninchi-shou.com

 

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分岐点

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