当院は脳神経外科なので、老若男女問わず頭痛のご相談をよく受ける。
今回紹介するのは、8歳男児。採血してみると、予想通りの結果であった。
8歳男児 頭痛と体調不良
初診時
以前から、天気が悪くなると頭痛を訴えると。時に吐くこともあると。その頻度が増してきたとのことでご相談。
頭部CTでは、脳腫瘍を含め特記所見なし。
- 空腹時の頭痛は機能性低血糖を示唆するかな?
- 色白で眼瞼結膜はやや蒼白かな?
- 朝がとにかく弱いと
- 甘いものは好きだと。
お菓子は糖質抜きのものをチョイスするように母親に伝えた。
天候左右性の頭痛には五苓散2.5gの頓服で対応を。次回は採血結果説明。
2週間後
甘いものを控えただけで、頭痛はかなり減っていると。また、五苓散は自分で効果を実感出来ているようだ。ポテトチップスや清涼飲料水を自制できるようになったと。
採血結果は以下。
- 血色素量(HB): 11.8g/dl
- ヘマトクリット: 33.9%
- MCV: 77.8fl
- 尿素窒素:12.0mg/dl
- フェリチン27.2
フェリチンが低い。鉄欠乏を伴う貧血と考える。尿素窒素12もやや低いが、軽度のタンパク質摂取不足はあるかもしれない。卵アレルギーはないようなので、積極的に肉と卵を食べさせるように、お母さんに説明。
インクレミンシロップ10ml/dayで鉄補充開始。
2週間後
インクレミンで吐き気や便秘なし。
頭痛の頻度は更に減っているようだ。処方継続。
初診から3ヶ月後
見違えるように元気になった、とお母さんが喜んでいる。
- 朝がとにかく弱かったのが、自分で起きることが出来るようになった
- 甘いお菓子は自制出来ている
- 顔色にやや赤みが出てきた
- 頭痛の頻度は激減、ただし天候左右性はまだある
採血結果は以下。
- 血色素量(HB): 12.0g/dl
- ヘマトクリット: 36.1%
- MCV: 81.5fl
- 尿素窒素:12.0mg/dl
- フェリチン定量:31.8ng/ml
2ヶ月ちょっとインクレミンを内服してフェリチンが4しか上がらないのは、タンパク摂取不足なのか、それとも鉄の吸収効率に問題があるのか。Hbはほぼ横ばいだが、BUN12も横ばいである。
タンパク質摂取は頑張ってはいるようだが、消化や代謝に問題はないだろうか?ビタミンB群、特にB6補充が必要かな?
(引用終了)
たった4のフェリチン上昇でも、症状改善あり
2ヶ月ちょっとの鉄剤内服で、フェリチン上昇はたったの4。しかし、複数の症状改善が得られている。
今後は、ビタミンCと一緒に摂取したりなど、鉄吸収効率を上昇させるため工夫をしていく必要がある。インクレミンシロップに加えて、サプリメント併用も検討中である。
そしてもっと大事なのは、この少年を思春期が終わるまでフォローアップしていくことであろう。何しろ、鉄の需要はこれからどんどん高まっていくのだから。
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