とある病院にご入院中だった方。
これまで統合失調症+正常圧水頭症というケースの治療例はあったが、双極性障害合併例は初めてだったのでご報告。
70代女性 双極性障害+特発性正常圧水頭症
初診時
〇〇病院から特発性正常圧水頭症(iNPH)疑いとのことで紹介。双極性障害で長年入院中の方。
体幹は右に大きく傾斜しすり足歩行。頭部CTはcomplete DESH。
本人曰く、「体が傾くようになったのは、ロナセンを飲んでからなの。今は止めているけど戻らないの!!」とのこと。
タップテスト入院を勧めた。
タップテストによる評価
(タップテスト前)3m Up & Go test 13.34s, Berg BalanceTest 22/56点, 起きあがり動作テスト 5.03S, TMT-A 1'32", MMSE 25/30点, FAB 17/18点
(タップテスト後)3m Up & Go test 12.75s, Berg BalanceTest 42/56点, 起きあがり動作テスト 5.76s, TMT-A 1'11", MMSE 29/30点, FAB 17/18点
Berg Balance Test(静的バランス能力評価)が22→42と大幅に向上し、自覚的にも「安定して歩ける」とのことであった。タップテスト陽性と判断し、LPシャント術をお勧めした。
LPシャント術後1ヶ月目
(術後1ヶ月目)3m Up & Go test 8.04s, Berg BalanceTest 51/56点, 起きあがり動作テスト 4.33s, TMT-A 1'03", MMSE 29/30点, FAB 16/18点
タップテスト前後と比較して、歩行能力と静的バランス能力で大幅な向上が得られた。
(引用終了)
頭部画像所見及び、体幹傾斜の前後比較写真
頭部CTは以下。
術前術後の体幹傾斜の変化の様子は以下。
撮影時の角度の違いはあるが、術前と比較して体幹バランスは大きく改善している。
3m歩行試験で13.34秒→8秒に、Berg Balance Testは22点→51点、MMSEは25点→29点と運動面、認知面いずれも術前と比較して大幅に改善しており、水頭症成分に関しては、この方は「治癒」と言える。
これが今後、双極性障害にも好影響をもたらしてくれたら・・・と期待しているが、さてどうだろうか。