クリニックまで車で通勤する道すがら、目に留まり記憶に残る人たちのこと。
まず目に飛び込んでくるのは、ゴミ出しをしている80代女性。5年前に、僕が手術をした方だ。
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ドネペジルを10mg投与され徐脈となり、意識消失を起こしたその女性が救急搬送されてきた時に、たまたま担当したのが僕だった。
あれからもう、5年経った。
元気になると、病院と縁が切れる。彼女が病院に来なくなって4年は経つが、別に構わない。通勤路でしばしば見かけることが、診察の代わりになっているようなものだ。
次に遭遇するのは、お父さんと一緒にバス停でバスを待つ小学生の女の子。
以前は、お母さんと手を繋いで笑顔で歩く姿がとても微笑ましかったのだが、そのうちに、先を歩くお母さんの後ろを俯きがちに追いかけるようになっていた。
先を歩くお母さんの顔は常に険しく、手を繋いでいた頃の優しい面影は感じられなくなっていた。
そして今は、お父さんと一緒にバス停でバスを待っている。
最後に見かけるのは、早朝の散歩をしている高齢女性お二人。
姉妹なのか、仲の良いご近所さん同士なのかは分からない。
2年前はもう一人お仲間さんがいて三人で元気に歩いていたのだが、ここ1年程は二人で黙々と歩いている。
もう一人は病気でもしたのだろうか?
それとも・・・?
偶然の出会い。感じる縁。
あれこれ想いを巡らせているうちにクリニックに着き、いつものように忙しい一日が始まった。
終業後にスタッフから、「Kさんの息子さんから、ケーキと言づてを頂きました。」 と報告があった。
息子さんの言づては、こうだった。
「明日は父の誕生日です。先生には100歳を一緒に祝って貰いたかったのですが、かないませんでした。よかったら、スタッフのみなさんと召し上がって下さい。」
白寿を一緒にお祝いした後に、主治医を交代してKさんは施設に入居した。このことについては以前ブログに書いたことがある。
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入所後ほどなくしてKさんは歩けなくなり、そして、肺炎を起こし世を去った。
今はKさんの奥さんを主治医として診ている。そこに、亡きKさんを感じながら。
人生でたまたま出会った人たちと、時に縁を結び、そして別れる。
別れた人たちとは多分また、どこかで会うのだろう。
