巷で大流行中のPokemon GO。
ポケモン世代ではないからかどうかは分からないが、自分は興味がない。*1
大の大人が群れを成してスマートフォンをのぞき込みながらウロウロする様は、自分の眼には異様に映る。一体あの心境とはどのようなものなのだろうか?単にゲームが楽しくて没入しているだけなのか、それとも集団に埋没することで一体感が得られ、それが快感に繋がるのか、はたまたブームに乗り遅れたくないだけなのか。
恐らく一時の熱狂に終わるであろうムーブメントに水を差すような事を言うのは不粋なのかもしれないが、自分も含めてゲームに関係ない人々が怪我や事件に巻き込まれることだけは御免被りたいものである。
成熟した脳神経外科医である自分がこのビッグウェーブに乗ることはない*2わけだが、ゲームに使われている技術には興味がある。それらを診療に活かせないだろうかと考えたので、そのことについて今回は書いてみる。
拡張現実(AR)や仮想現実(VR)とは?
Pokemon GOには、ARという技術が使われている。AR(Augumented Rearilty)とは
人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉。(Wikipedia)
である。現実世界の一部に、拡張された現実(画像やテキストデータを含む)を表示させる技術。
Pokemon GOとは、デバイス(スマートフォン)を通じて現実世界とポケモンの世界を重ね合わせるゲームである。
プレイヤーはスマートフォンを通じて仮想世界を見るため、現実と見紛うほどの没入感はないだろう。
一方、似たような?技術にVRがある。こちらは、丸ごと仮想現実を体験する技術である。
バーチャルリアリティ(英: Virtual Reality, 英語発音: [ˈvəːrʧuəl riˈæləti])とは、実際の形はしていないか形は異なるかも知れないが、機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術およびその体系。略語としてVRとも。日本語では「人工現実感」あるいは「仮想現実」と訳される(Wikipedia)
VRを体験するにはHMDと呼ばれるデバイスが必要で、Samsungからはスマートフォンを嵌めて使うGear VRが発売されている。
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お手頃価格なのは魅力だが、対応スマートフォンが SamusungのGalaxy6以降限定らしいのが残念。
SONYから発売予定のPlaystation VRは、母艦にPlaystationが必要。お値段はかなりのものだが前評判は上々のようだ。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント (2017-10-14)
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仮想世界への没入感では、ARよりもデバイスが視界全てを覆うVRに軍配が上がるだろう。
ARやVRを認知症対策に利用できないだろうか?
短期記憶障害や日時見当識、視空間認知力低下が問題になるアルツハイマー型認知症だが、初期段階で
これでお父さんの日常生活が便利になるから、つけるようにしてみて。ちょっとした補聴器みたいなものだから。
などと説明して、例えばGoogle Glassのようなデバイスを装着してもらうとする。
そして、このデバイスを利用して以下のような事が出来ないだろうか?
タスク管理
買い物に行く前に、お店の場所や何を買うかを入力しておく。お店に着いたら自動で視界の片隅にポップアップが出現し、買い物リストを提示してくれる。また、朝起きてGlassを装着したら「おはようございます。今日はゴミ出しの日です」といったアナウンスが流れる。
タスク管理に使えないだろうか。
見当識サポート
朝起きてGlassを装着したら、「おはようございます。今日は○月○日の○曜日です。」みたいなアナウンスが流れる。また、訪れた場所をGPSデータから自動認識して「ここは○○です」とアナウンスが流れる。
見当識の維持と補強に繋がる可能性がある。
迷子対策
出先で迷ってしまったら、Glassに話しかけると自宅までの道順をポップアップで示す。若しくは自動でタクシーを呼ぶ。運転手はGlassを見て「この人は認知症だな」と確認し、タクシーに装備してあるNFC端末をGlassにかざすと、自宅までの道順が車載カーナビに表示され、送り届けてくれる。勿論GPSでトラッキング可能。
ARは、認知症の初期段階から使って慣れることが出来たら相当に役立ちそう。何なら、認知症ではない独居高齢者の生活支援目的で使ってもらうのもよいだろう。
次に、VRはどうだろうか。
VRを利用するなら、慣れ親しんだ故郷の風景やお孫さん達が遊び回っているような様子を楽しんでもらうのがいいだろう。ただし、慣れるまではご家族が一緒が無難。突然没入感の高い仮想現実に触れた場合、どのような反応が起きるのかは予測が難しいので。
ARは生活サポートに、VRは物忘れの進行予防やレクリエーションに、というイメージである。
技術そのものに善し悪しはなく、技術はあくまでも単なる「技術」である。使い方次第では上記のような可能性を大いに秘めているARやVR。一医療者として期待が大きい。
以下、当院IT部長兼レントゲン技師が撮影した写真を載せて今回は終了。*3