今回は、PSP(進行性核上性麻痺)+iNPH(特発性正常圧水頭症)を合併していたNMさんをご紹介する。
前医の脳神経外科でPSPを指摘され、グルタチオン点滴が開始されていたが、効果は感じていなかった。
当院で初回1600mgでグルタチオン点滴を行ったところ即座に歩行に好変化が現れたので、これは前医のグルタチオンの用量が少なすぎたのだと思われる。
その他、前医で指摘されていなかったiNPHを見つけたので、LPシャントを受けて頂いたところ歩行と認知機能にかなりの改善を上積みできた。幸先良しである。
70代男性 PSP+iNPH
初診時
転居に伴い、当院へお引っ越し希望で来院。
約1年前から歩行障害が出現。ある日転倒し、近医に救急搬送となった。そこでPSPの可能性を指摘され、月に一回のグルタチオン点滴が始まったが、効果の実感はなかったと本人、奥さんは話す。ただ、シンメトレルで日中の眠気は大分楽になったとのこと。
- 垂直性眼球運動障害、輻輳障害あり
- 両側上肢rigidなし
- 歩行はすり足、姿勢反射障害あり
- 頭部CTでDESHあり、Humming Birdサインは陰性
- HDSR27.5(6)
- 透視立方体模写と時計描画テストはOK
G1600点滴後、方向転換はスムーズになった印象だが本人的には変わらないと。
寡黙な方。多幸の印象はない。
頭部CTでDESHあり。タップテストを依頼。
1ヶ月後
タップテストは陽性。TUGは2秒改善、FABは4点改善。いずれも改善の自覚はなく、他覚的変化。家族は体幹バランス向上を強く感じている。これはG点滴後も同様である。家族が感じた初回の点滴持続効果は3日ほどだったと。
LPシャント手術を受ける意義は十分にあると思います。G点滴は2週間おきぐらいでいかがですか。
2週間後
前回点滴後、本人の実感として左足の痛みを感じなくなった。
家族観察では、歩行スピードがUPしトイレへの移動がスムーズになり、坐位バランスが保て姿勢の傾きがなくなった状態が、現在まで続いていると。タップテストの好影響が残っている可能性はあるが、点滴効果が2週間続いている可能性もある。
2週間後にLPシャント手術の予定。
1ヶ月後
先日、無事にLPシャントが終わった。
- 自覚的に歩きやすくなった
- 他覚的には足の持ち上がり方が凄く良くなり、歩行が安定して転ばなくなった
ご夫婦で喜んでいる。LPシャント著効。
沈脈、ややあから顔でのぼせ冷えあり。当帰四逆加呉茱萸生姜湯を開始。
介入から3ヶ月後
- TUG 18.9→12.85
- 10m歩行テスト19.51→9.73
- TMT-A 65→50
- FAB 10→14
抜群の改善。MMSEは27で変化なし。玄関先で自分で靴を脱いで上がれるようになったことが、奥さんとしては嬉しいと。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯で、他覚的な手の冷えは明らかに改善している。しかし、本人の実感は薄いようだ。
(引用終了)
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