鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

メトホルミン(メトグルコ、メデット、グリコランなど)に大腸癌予防効果あり、という報告。

 以前、当ブログでこのような記事を書いた。

 

www.ninchi-shou.com

 

続報が出たので、ご報告。

メトホルミンによるヒト大腸腫瘍の予防効果と安全性が世界で初めて証明

 

  メトホルミンによるヒト大腸腫瘍の予防効果と安全性が世界で初めて証明された。横浜市立大学肝胆膵消化器病学の日暮琢磨氏らは,低用量メトホルミンが安全に非糖尿病患者において,ポリペクトミー後のポリープ・腺腫の新規発生を抑制することを,多施設第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)で確認したと第102回日本消化器病学会総会(4月21〜23日,会長=東京医科歯科大学消化器病態学教授・渡辺守氏)で報告した。

 

下記記事から引用。

 

メトホルミンに大腸がん予防効果|2016年_学会レポート|ニュース|Medical Tribune

 

ランダム化比較試験(RCT)にて、ポリープを取り除いた後の新規ポリープ発生と、腺腫の新規発生、いずれもメトホルミン内服群で有意に抑制されたとのこと。素晴らしい結果である。しかも一日250mgという低用量。化学予防*1の観点からしても優れていると言えよう。

 

ポリープが出来たことのない人達に対しても、メトホルミン内服は予防効果があるのだろうか?

  

今回の報告の中で

 

  メトホルミン投与により家族性大腸腺腫モデル(APCmin/+マウス)でポリープの増大が抑制される

 

という一文があるので、例えば自分の親がAPC遺伝子変異を持っている(家族性大腸腺腫症を患っている)場合には、そのお子さんが予防的にメトホルミンを内服することは意義があるように思う。

 

化学予防と言えばアスピリンによる大腸癌予防が有名だが

 

The preventive effects of low-dose enteric-coated aspirin tablets on the development of colorectal tumours in Asian patients: a randomised trial -- Ishikawa et al. -- Gut

 

長期的には消化管出血や脳出血のリスクが問題となる。

 

用量にもよるだろうが、大腸癌予防目的のメトホルミン内服は

 

  • 壮年期
  • 親が大腸癌
  • 親が2型糖尿病

 

こういった方達にとってメリットがあると思う。

 

そのようなデザインで組まれた研究が行われることに期待したい。

 

メトホルミンに関する話題は、今後も折に触れて投稿していく予定。

 


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*1:ある病気を、化合物の内服で予防するという方法論、考え方。低費用、低副作用が求められる。