鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

道路交通法改正によって医者が引き受けることになる「損害賠償請求」のリスク。

道交法改正で我々医者が引き受けるリスクについて、認知症関連学会が連名で作成した、「認知症高齢者の自動車運転に関する専門医のための Q&A 集」から引用しながら考えてみる。

 

発行日が本日(平成29年3月14日)なので、できたてホヤホヤである。赤文字強調部分は筆者によるもの。

 

Q3. (軽度認知障害と診断した時など、非認知症の診断名で)診断書を作成した患者が事故を起こした場合、作成した医師に法的責任を問われることはないですか?


【A】臨時適性検査および診断書提出命令に係る診断書作成は医師により行われますが、免許取消し等は都道府県公安委員会において判断されます。公安委員会が判断するに際し、主治医の診断書により判断できない場合は、再度、専門医の判断を実施することがあります(警察庁丁運発第 210 号 平成 28年 11 月 16 日, 警察庁交通局運転免許課長)。したがって、医師がその良心と見識にもとづき行った診断にもとづき作成した診断書について、診断書作成医師に刑事上の責任が生じることはありませんが、民法上の責任はこの限りではありません。

 

 

Q4. 認知症と診断した医師が、患者様から(誤診により免許を取り上げられる結果になったと)訴えられることはないですか?


【A】臨時適性検査および診断書提出命令に係る診断書作成は医師により行われますが、診断書にもとづいて免許取消し等の行政処分を行う場合は、聴聞等の手続を経て、都道府県公安委員会の判断と責任において処分が決定されます。処分に不服があるときには、審査請求や取消し訴訟の提起をすることができます。したがって、診断書作成医師に刑事上の責任が生じることはありませんが、民法上の責任はこの限りではありません。

 

 

「診断書作成医師に刑事上の責任が生じることはありませんが、民法上の責任はこの限りではありません。」←ダヨネー・・・orz

 

例えば、

 

医師「認知症ではないと思いますよ。診断書にもそう書いておきますね。」

高齢者「良かったー、ありがとうございます(^^)」

 

                                        ~3ヶ月後に交通事故~

 

高齢者「先生が乗って大丈夫と言ったから運転していたのに、事故を起こした。これはオレのせいじゃない。オレの運転能力の見積もりを誤った医者の責任だ。訴えてやる!!」

 

とか、

 

医師「認知症ですね。診断書にもそのように記載します。残念ながら運転免許は取り消しとなります。」

高齢者「そんな馬鹿な話はない。オレはこれまで問題なく運転してきた。こんな紙切れ1枚で免許を取り上げるなんて納得いかない。訴えてやる!!」

 

 

といった事例が発生するかもしれない、ということ。

 

「刑事罰を受けることはない」というお墨付だけで安心して仕事は出来ない。

 

ちなみにこの通達のタイトルは、「認知症高齢者の自動車運転に関する専門医のための Q&A 集」である。公安委員会の依頼で臨時適性検査を引き受ける専門医ですら、民事訴訟を免れることは出来ないということを、関連学会が念を押してきたということに注目。

 

これを見た専門医は、相当萎えているのではないだろうか。

 

 

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