その頻度は約0.3%(自験例)
滅多にあることではないが、物忘れ外来に脳腫瘍の方が来られることがある。こういう時には、初診時の画像評価の重要性を改めて痛感させられる。
70代男性 脳腫瘍
(記録より引用開始)
初診時
腹部疾患で5日間入院。
退院後普通にしていたが、退院後3日目でがらっと様子が変わり、認知症みたいな症状が出てきたとのことで来院。
麻痺なし
歩行安定
礼節をたもつ
頭部CTで右側脳室前角を首座とする高吸収域及び周囲脳浮腫を認めた。
MRIではT2*含め、時間の経過した出血パターンも疑う。ただし出血場所としてはirregular。ACA-genuで動脈瘤はなし。造影MRIでは対側側脳室及び同側の側脳室後角にも造影される箇所あり。
膠芽腫か悪性リンパ腫か。
大学病院に紹介。
(引用終了)
画像が最優先とは思わないが・・・
結果、大学病院からの返事は「脳腫瘍を最も疑い、今後精査を進めていく」とのことであった。
ところで、認知症診療において画像検査は最優先とすべきだろうか。
例えば、レビー小体型認知症を疑ったら全例にSPECTやMIBG心筋シンチ、DATスキャン等々。
その結果で大幅に治療が変更になる可能性があるなら、高額で長時間かかる検査も有用であろう。
しかし、ダメ押しの意味しか無い検査であれば患者の身体的、経済的負担はかなりのものとなってしまうので、検査のオーダーには慎重さが必要とされる。
普段自分は、臨床症状を最優先として認知症診療を行っている。この考えは、今後も恐らく変わらないと思う。
それでも、ごく稀に今回の様なケースを経験する度に「画像検査を全く無視した認知症診療は危険だよな」と思う次第。