切れ味良く効いたアリセプト
状況に応じて柔軟に考えることが重要、という話。
77歳男性 MCI〜ATD
(記録より引用開始)
初診時
(既往歴)
前立腺肥大で手術
白内障 高血圧と糖尿病で治療中
(現病歴)
昨年ぐらいから物忘れが目立つようになった。自覚及び妻からの指摘もあり。
(診察所見)
HDS-R:24
遅延再生:0
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:4
保続:ありあり
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:施行せず
rigid:なし
ピックスコア:施行せず
頭部CT左右差:なし
介護保険:なし
胃切除:なし
歩行障害:なし
頻尿:なし
易怒性:なし
(診断)
ATD:〇
DLB:
FTLD:
MCI:△
その他:
遅延再生0点、海馬萎縮、保続を重視する。話の最中にもどんどん忘れて
いく。ATD>MCIと考えてイクセロンパッチ開始。色々なサプリメントを大量に飲んでいるとのこと。
3週間後
掻痒感なし。
自覚的には少しやる気が出てきたと。
しかし奥さんが「貼るのが面倒くさい」とのこと。
他剤の内服は朝だけなので、そろえてアリセプトを選択。易怒性はなく、3mgで開始。
更に3週間後
まだ目立ったいい変化はないが、少しお腹を下し気味と。増量はせずにもうしばらくアリセプトは3mgで。
更に3週間後
薬が5日間なかったと。紛失か?
お腹の調子はもう大丈夫と。易怒性なし。今回からアリセプトを5mgに。
奥さんの理解が今ひとつなのが気になる。
更に5週間後
著変無く経過中。
奥さんに取り繕いがみられるのが少し心配。
次回はHDSRを。
初診から5ヶ月後
「ちょっといいみたいです」、とご自分で話す。表情に自信がみえる。以前は常に戸惑いの表情であった。
奥さんからみると、さほどの変化はないと。
5ヶ月で6点上昇。アリセプトが著効している。現状維持で。当院通院継続希望あり。
(引用終了)
アリセプトは副作用ばかりの薬ではない。状態を確認しながら調整することが必要
当たり前の話ですが、そういうことです。
他剤を朝に内服していたので、アリセプトも併せて朝の内服とし、途中でお腹の調子を崩した(副作用の可能性有り)際にも添付文書通りに増量したりせず、また慌てて中止にしたりもせず、じっくり様子をみながら続けたことが、良い結果に繋がった。
ちなみに、この方は奥さんがしっかりイクセロンパッチを貼り続けることが出来たら、アリセプトに切り替えることはなかった。
ご主人のことが心配で病院に連れてきたのに、貼付薬を貼ることを面倒くさがる、というのはちょっと普通ではないと思う。
途中からはむしろこの奥さんのことが心配になってきて、現在は外来での注意配分が
ご主人:50% 奥さん:50%
ぐらいになっている。
今後お子さん達が同伴することがあれば、さりげなく奥さんのことについて確認してみようと思っている。
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