頭部CTから大脳皮質基底核変性症を疑った
頭部打撲で救急搬入となった70歳男性。まず画像が気になり、その後病歴を確認して診断に繋がった、という例をご紹介。
70歳男性 大脳皮質基底核変性症
(記録より引用開始)
初診時
仕事中に、30cm程の高さの台から落ちて頭部打撲。意識消失あり?目撃者なし。救急搬入。
- 左後頭部に打撲皮下血腫
- JCS1
- 麻痺なし
- 嘔気なし
頭部CTがこちら。
頭部CTで少量の脳室内出血。外傷性の脳梁損傷?特発性脳室内出血?
わずかに萎縮の左右差がある気がする。
次のスライスがこちら。
これはハッキリと左右差が分かる。ちなみに、後日撮影したMRIにおいて、同部位はこちら。
やはり左右差を認める。
慣れはあるのだろうが、CTの方が左右差がハッキリと分かる気がする。
ひとまず保存的に入院治療開始。
入院後
ご家族にCBDを意識しながら病歴を聞いたところ、
- ここ数ヶ月でふらついて転ぶようになった(左に)
- 何となくだが物忘れが気になっている
とのことであった。
幸い血腫は翌日の頭部CTで消退した。諸検査を行った結果、
- 握力は右27kgで左21kg。
- MMSEは23/30と軽度低下。
- BBT(静的バランス能力をみる検査)は46/56。
- FAB(前頭葉機能をみる検査)は11/18。
- MRIで右中心溝近傍萎縮を認める。
- ボタンを嵌めにくそう(肢節運動失行?)。
各々少しずつ引っかかる。やはりCBDの可能性を考える。他院にてSPECTを行って頂き、その結果をもって神経内科受診、という段取りをくんで自宅退院とした。
(引用終了)
大脳皮質基底核症候群の概念
神経内科を受診した結果、「大脳皮質基底核変性症(CBD)を最も疑う」とのことであった。その後のフォローアップは神経内科で継続されることとなった。
ところで、「臨床的にCBDと診断しても、病理解剖の結果CBDであった例は25%〜56%に過ぎなかった」という報告がある。
CBDの臨床診断と病理診断が常に一致するわけではないということを踏まえて、「大脳皮質基底核症候群(CBS)」という概念が提唱されるようになった。
このCBSの枠組みの中には、PSP(進行性核上性麻痺)やFTD(前頭側頭型認知症)も入り込んでくるため、混沌としているように思える。
しかし、最初で診断を決め打ちする必要がない、と言う意味では臨床的に有り難い概念である。