鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

妻を残して旅立つ辛さ。

「大丈夫だと思いますよ!」であっさり終わるかと思ったのだが・・・

 

70歳女性で特に訴えなし

 

時計描画テスト、長谷川式も問題なし

 

70歳女性 正常
 

(既往歴)

 

特記事項なし
 
(現病歴)
 
「自分では特に悪いところは感じないが、夫が受診しなさいと勧めるのでやってきました」とのこと。
 
(診察所見)
 
HDS-R:28
遅延再生:6
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:10
保続:なし
取り繕い:なし
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:施行せず
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:施行せず
頭部CT左右差:なし
介護保険:なし
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:なし
 
 
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
MCI:
その他:
 
正常でいいだろう。
 
ここからご主人が話し出す。
 
「自分はガンで闘病中だが、この間主治医から余命宣告をされた。妻を残して逝くことが残念だが、少しでも自分自身の心配を取り除いておきたくて、今日は受診させたのです。」
 
フェルガード100Mを紹介。大丈夫だと思いますが、3ヶ月後にもう一度長谷川式テストをしてみましょう。ご主人も必ず一緒に。待っていますよ。

(引用終了)


時に切ない認知症外来

 

「ご主人も一緒に来て下さいね、待っていますよ。」と声を掛けると、黙って微笑んで帰られた。奥さんは、何とも言えない表情をされていた。

 

フェルガードを勧めたのは、必要性が高いと判断したというよりは、「これを奥さんが飲んでいたら、少しはご主人が安心出来るのではないだろうか」と考えたからである。

 

またお二人にお会い出来る日が来るだろうか。