鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

アリセプトの長期継続は是か非か?

効果を感じられなくても、アリセプトは続けるべきだろうか?

 
抗認知症薬の継続について


前回からの続きで、アリセプト継続の是非について考えてみる。

 

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 この方の4年前の診断はDLB(レビー小体型認知症)で、その後は長らくアリセプトを5mgで継続。自覚的、他覚的に症状改善はなかったとのこと。

ここに重要な分岐点がある気がする。

4年前の長谷川式テストは28/30。物忘れや夜間の落ち着きのなさ、妄想言動が主訴で、MRIで脳萎縮は指摘されず、SPECTで後頭葉血流低下を認めるとのことで、レビー小体型認知症との診断。明らかな幻視や認知面の変動は無かったようだ。

アリセプトを始めても変化が無い場合の判断は悩ましい。

 

一つの考えとして、3ヶ月ほどアリセプトを継続して改善が無ければ、DLBの診断に無理があった(若しくはアセチルコリン不足はさほどでもない)と考え、一旦アリセプトの減量か中止を検討してはどうだろうか。

そして、夜間の落ち着きのなさや妄想言動などの陽性症状に対して、中核薬を用いずに適切な抑制系薬剤を使用する。それで改善が得られた後に、改めて中核薬を使うかどうかを再検討する。使用する場合には、レミニールかリバスチグミンだろう。

効果がみえなくても、進行をしばらくでも食い止めているはずだから、使っていた方が良いのでは?


このような意見は多い。

しかし、診断がピュアなアルツハイマーでほぼ確定的であればそれでもよいのかもしれないが、間違っていた場合(残念ながら往々にしてある)、アリセプトは前頭葉ストレッサーになりうるため、弊害も懸念される。

それは、「ピック病的な症状を誘発する可能性がある」ということである。

この方に自分が感じた「ピック感」は、ひょっとしたらアリセプトによって惹起されたものかもしれないと想像すると(あくまでも想像だが)、抗認知症薬の「漫然投与」にはやはり注意しなければいけないと思う。

その他の中核薬、レミニールやリバスタッチ、メマリーについても、漫然投与がよろしくないのは同じ。

ただ、これらの薬剤はアセチルコリン以外の神経伝達物質への好影響が期待できる(かもしれない)ので、意図的な持続少量投与が出来るのであれば、副作用に充分注意しながら根気強く使ってみる価値はあるかもしれない。例えば、初期からのメマリー少量投与などが、その例である。