脳腫瘍の術直後から幻視が見えるようになったとのことで、ご相談に来られた方。
68歳男性 脳腫瘍術後
初診時
(記録より引用開始)
(既往歴)
松果体腫瘍摘出術
(現病歴)
脳腫瘍手術直後から、おとぎの国に出てくるようなお花畑、怪獣などの幻視が見えるようになった。
頻度はさほどでもない。数ヶ月出ないこともある。ずっと気になっていたので相談に来ましたと。落ち着いた知的な印象の紳士。
(診察所見)
HDS-R:28
遅延再生:6
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:-
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:4
rigid:なし
ピックスコア:-
頭部CT左右差:なし
介護保険:-
胃切除:-
歩行障害:-
頻尿:-
易怒性:-
(診断)
ATD:
DLB:?
FTLD:
MCI:
その他:
脳腫瘍手術以前からRBD(REM睡眠行動異常)はあるらしい。時に悪夢でうなされて叫んだりなど。
幻視は術直後からなので、手術の影響は考える。
将来的なLBD(レビー小体病)の可能性は留保しておく。半年おきに受診されては如何ですか。
(引用終了)
後頭葉は視覚中枢
レビー小体型認知症認知症における幻視は、後頭葉の血流低下が原因という説がある。
後頭葉は一次視覚野と視覚連合野を含むため、ここに何かが起きたら幻視が出現する可能性は高いと思う。
この方は、頭部画像では手術による明らかな脳損傷の痕跡は認めなかった。
しかし、手術直後から幻視が始まったとのことなので、やはり手術で「後頭葉を触った」ことが原因なのだろう。
幻視が出現する頻度は低く、また幻視でADL低下を来すほどでもないとのこと。抑肝散の定期内服は現時点では行わずに、半年ごとのフォローアップとした。
ただ、その後執刀医から「後頭葉てんかん」の可能性があるので、抗癲癇薬の処方を検討して欲しい、との依頼があった。
後頭葉てんかん発作にしては、光が見えたり、発作後に頭痛が出たりなどの症状が全くないのは気になったが、この方は執刀医をとても信頼しており、内服についても異存は無いとのことだったので、眠前にデパケンR200mg内服で、2ヶ月おきに経過をみてみることにした。
手術の後遺症ですね、で終わりでもない・・・
この方で気をつけておくべきなのは、手術とは関係なく、以前からRBD(REM睡眠行動異常)があること。
レム睡眠行動障害 - Wikipedia
RBDとLBD(レビー小体病)の関連は有名。これについては、下記以外にも様々な報告がある。

この方の場合は腫瘍の術後フォローという目的があるので、途切れずに来て頂けるのではないかと思っている。
また、デパケンRで変化が無ければ抑肝散を、そしてご興味を持たれたらフェルガードを勧めてみようと考えている。
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