ちなみに「診断が付かなければ治療が出来ない」ということではないのだが、認知症外来でよくある例としてご紹介。
80歳女性 ATD or FTLD
初診時
(記録より引用開始)
(既往歴)
狭心症 現在何も内服なし
(現病歴)
これまで独居だったが、認知症症状悪化に伴いグループホームに入所。
生家への帰宅願望を言うことあり。夕方から夜に娘さんに頻繁に電話をかけてくる。
お孫さんとケアマネさんに伴われて来院。ぱっと見上品。
(診察所見)
HDS-R:7.5
遅延再生:0
立方体模写:不可
時計描画:不可
クリクトン尺度:19
保続:なし
取り繕い:ありあり
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:ー
rigid:なし
ピックスコア:4.5
頭部CT左右差:わずかに左有意か
介護保険:要介護1
胃切除:なし
(診断)
ATD:〇
DLB:
FTLD:△
MCI:
その他:
介護保険の区分変更が必要かな?狭心症の既往があるので、ChE阻害薬使用には注意しておく。
取り繕いがすごい。若干だが左の萎縮が強めか。頭頂葉の萎縮も強い。これは立方体模写に反映されているかな。
ピックスコア4.5は注意が必要。右手で左肩がおかしい。診察机に置かれたiPadをしきりとさわり続ける。使用行動かな?
家族への易怒性発揮はあるが、周囲には取り繕う。まずはATDで考えておく。
夕方症候群を何とかしたいと。
グラマリール25mg/dayで反応を見てみましょう。いずれ在宅を目指しているわけではないとのことで、穏やかに施設で暮らせたらいいのかな。
グラマリールで効果がなければ、ウインタミンで。
2週間後
少し効果あり?
いすに座らないのは相変わらず。
グラマリールを50mg/dayに増量。これで変化がなければウインタミンかな?
更に2週間後
全く変わらないと。徘徊の危険があり怖いと施設スタッフ。
グラマリール無効と考える。ウインタミンを朝4mg、夕6mgで。これでダメならリーゼを加えるか。
更に2週間後
帰宅願望、自宅への電話攻撃が無くなった。大人しすぎて逆に娘さんが心配して電話してくるぐらい。
ウインタミンは今回も4mg-6mgで1ヶ月処方。
更に1ヶ月後
ご本人も来院。変わりなくみえる。
スタッフはとても喜んでおり、問題行動などは一切無いと。
これで維持していく。中核薬は今のところ使わずに。
要介護1で更新。
(引用終了)
結局診断は?
ウインタミンが著効しているのでFTLDで考えたいところだが、ここはあまり拘りすぎてもしょうがないのかな、と最近は思うようになった。
イメージをしっかり持って対応して、結果が出たから良し!(と自分に言い聞かせることは、精神衛生上必要)
それにしても、ウインタミンの4mg-6mgの打率が相変わらず高いことに感心する次第である。
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