薬はいずれ減らす時期が来る
近医から、「アルツハイマー病が進行しました」ということでご紹介頂いた患者さん。もの凄い傾眠だが、何とか食事は摂れているとのこと。初診時の疎通はほぼ不可能であった。
88歳男性 レビー小体型認知症
初診時
(記録より引用開始)
物忘れ
意欲・活気の低下
意思の疎通が図りにくい
日中によく居眠りをする
動作緩慢
良いときと悪いときの差が激しい
小刻み歩行
日付・場所の感覚が鈍くなった
今年の三月の発熱エピソードがあってから急激に心身機能が衰えてきた。
三月まではカラオケを楽しめていたと。
既往歴:高血圧症、緑内障、前立腺肥大症 介護保険:要介護2、週三回デイサービスを利用
IADL 0/5点
歩行は手引きで何とか可能と。
小脳萎縮も著明であり、歩行への影響は考えられる。DLBスコアは6点。長谷川式テストは施行不可。
急激な進行は、DLB悪化の可能性を考える。ニコリンを連投していく。
また処方を一旦預かり、メマリー20mg、イクセロンパッチ9mgを各々半分に減量する。
1週間後
風邪を引いていたがもう大丈夫と。
診察時は覚醒している。階段昇降も介助ではあるが出来るようになった。
覚醒時間は目に見えて改善していると。
今回からイクセロンパッチ4.5mg、メマリー10mg処方。いずれも初診時の半分の量。ニコリンは一回で終了かな。食欲は十分と。
(引用終了)
足してダメなら引いてみる
最近JAMAに掲載された報告。
主に薬物治療の費用対効果について述べられているが、コストパフォーマンスを抜きにしても、
一旦引いて体勢を立て直す
この工夫が必要な時期は、いずれ認知症患者さん皆に訪れると思う。
薬を足していく工夫と引いていく工夫、いずれも重要であるが、高齢者や終末期患者さんの場合でより大事になるのは、引いていく工夫ではないだろうか。
今回の治療で最も効を奏したのは、イクセロンパッチとメマリーの減量であり、ニコリンは少し後押しをしてくれたかな?ぐらいであったと考えている。
因みにこの方は、小脳と大脳いずれの萎縮も強く、また後方への反り返りからはPSPの可能性も無視できない。更に頭頂脳溝の描出もやや不良で、特発性正常圧水頭症合併の可能性もあるという、まさに満身創痍の状態。
今困っている症状に対処しつつ、ご家族の希望に応じてTAPテストまで行ってみようか、などと考えているところである。
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