Fahr病(ファール病)?
DNTCとは、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病のことで、進行するとピック病と似た症状を呈すると言われている。
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ちなみに、家族性の場合にはFahr病と呼ぶようだ。
ファール病(ふぁーるびょう、fahr's syndrome、家族性特発性基底核石灰化症)とは、1930年にドイツの病理学者Theodor Fahrがはじめて報告した疾患である[1]。
四肢の硬直、痙攣、意識障害などを呈した症例の剖検で両側対称性の大脳基底核(線状体や淡蒼球)、小脳歯状核に石灰化をきたした例である。カルシウム代謝異常は認められず病態、原因は不明な点が多い。日本では典型例は50~100例と推定されているが定義、診断基準も確立していない[2]。家族例の報告もあるが多くは孤発性である。発症に男女差はなく、好発年齢は青少年期から中年期である。
症状はパーキンソニズム、舞踏運動、アテトーゼ、認知機能障害、小脳失調など多彩である[1]。精神症状に関しては早発型(30歳頃発症)と遅発発症型(50歳頃発症)の2型が知られており、前者は被害妄想や幻聴といった統合失調症様の精神病症状を呈することが多く、後者は記銘力低下など認知症の症状で初発することが多い。後者は分類不能な認知症とされ、「石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(diffuse neurofibrillary tangle with calcification:DNTC)」としての概念も提唱されている[3]。大脳基底核への石灰化を起こす原因は、細動脈レベルからのムコ多糖の滲出とカルシウムの沈着、細動脈の崩壊、新生を繰り返すことが原因とされている。ファール病の石灰化は主に毛細血管壁、細動脈、小静脈、傍血管腔に認められ、石灰化の蓄積物の周囲では、神経変性やグリオーシスが認められる。
1997年の本多らの提唱によると、石灰化が両側対称性、石灰化が緩徐進行性、石灰化が非動脈硬化性、石灰化の好発部位としては微小血管に限局、カルシウムやリンの代謝障害はない、原因の明らかな対称性脳石灰化症は除外⑦偽性副甲状腺機能低下症または偽性偽性副甲状腺機能低下症で認められるAlbright徴候がないといったことをファール病の概念として提唱している。(wikipediaより引用)
DNTCを疑ったご姉妹
遠方より、インターネットで検索したご家族に伴われて来院されたご姉妹。
主に独居中の妹さんの相談で、介護を手伝っているお姉さんはついでに受診、ということだった。
妹さん
妹さんはHDS-R15/30で遅延再生1/6。現在は近医でメマリー20mgの処方を受けているが、あまり効果は感じられないとのこと。傾眠傾向や活気の低下が目立つと。時計描画や立方体模写はOK。ピックスコアは0点。
頭部CTは両側基底核の石灰化が目立つほか、わずかに前頭葉脳回矮小化があり?小脳歯状核の石灰化はない。
お姉さん
お姉さんも受診とは露知らず、目の前で妹さんに長谷川式をしてしまった。
お姉さんの診察の番になって、慌てて先ほど行った3単語の「桜、猫、電車」を「梅、犬、自転車」に変更した。
さっき聞いた内容とこんがらがってしまったのか、この時のお姉さんの遅延再生は1/6・・・。これはイレギュラーと考えた方がよいのかも。HDS-Rは24点。
頭部CTは、妹さんよりはややおとなしめの両側基底核の石灰化。小脳歯状核の石灰化はない。しかし、両側のシルビウス裂が開いており、第3脳室も少し膨らんでいる。頭頂脳溝消失はない。水頭症症状を呈してはいない。
石灰化はたまたまなのかな?
妹さんはピックスコア0点であり、HDS-R15点で遅延再生1点という結果からは、まずは順当にアルツハイマーを考えるべきなのだろう。しかし、経過を聞くと、殆ど進行していない印象である。
傾眠傾向や活気低下は、朝に飲んでいるメマリー20mgの影響があるかもしれない。
少なくとも、夕方内服に変更してみて日中の活気が上がるのか確認する必要はあるだろう。
お姉さんは、石灰化病変よりはCTにおける水頭症の様な所見に少し注意が必要。
無症状ではあるが、頭部MRIで特発性正常圧水頭症(iNPH)の特徴を示すものを、Asymptomatic Ventriculomegaly with features of Idiopathic normal pressure hydrocephalus on MRI(AVIM)と呼ぶことが提唱されている。
お二人とも、半年後ぐらいでもう一度受診してみませんか?とお話ししてご帰宅とした。妹さんの主治医には情報提供書を作成して郵送。
今回はこれで終了。