頭がわんわん症候群とは
耳鳴りではないが、一日の中である時間帯になると頭がわんわんする、という方達がいる。通称「頭がわんわん症候群(仮)」。定義としては
- 決まった時間で頭がわんわんする
- 決まった時間の頭痛の人もいる
- 頭部画像上、水頭症所見と前頭側頭葉変性症の所見を併せ持つ
今のところ、このように考えている。
これまで2人、この症状を訴える方の治療が上手くいった。使った薬は少量のウインタミンだけ。
今回、当初は上手くいったと思ったが、増量して失敗した例をご紹介。
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海馬領域の萎縮は中等度 |
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HDS-R18点 レビースコア3点 ピックスコア2点 |
84歳女性 頭がワンワン
初診時
(既往歴)
iNPHに対してLPシャント手術
DLBの診断で一時期リバスチグミン使用
(現病歴)
夕方から夜にかけて頭がわんわんする。
ケアマネさん曰く、取り繕いがあるが、家族には強く易怒性を発揮すると。
(診察所見)
HDS-R:18
遅延再生:4
立方体模写:
時計描画:
クリクトン尺度:
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:3
rigid:なし
ピックスコア:2
頭部CT左右差:あり?
介護保険:あり
胃切除:
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
MCI:
その他:
左側頭極はわずかに退縮かな?
頭痛というよりは頭がわんわん。耳鳴もあるよーと。表情はDLB的ではあるが、良い笑顔もでる。
夜が穏やかに過ごせたら。昼食後にウインタミン6mgで2週間。
2週間後
ケアマネさんと来院。
本人は「特に変わらんよ」と話すが、ケアマネさん曰く、家族からの症状の訴えは特に聞かなかったとのこと。落ち着いているのでは?
本人が改善を自覚してくれたら。8mgに増量して1ヶ月後に再診。
1週間後に来院
お一人で来院。
ウインタミンを8mgに増量後、すぐに「頭がワーンとなった」とのことで、自己判断で中止。止めたら戻りましたと。
薬なしで様子をみましょうか、とお話。
(引用終了)
敗因は?
敗因は幾つかある。
- 頭部CTで左右差ありかも?と考えたが、正常圧水頭症でよく見られるシルビウス裂開大であった可能性
- 水頭症に対しては既にLPシャント術が成されており、そのコントロールは上手くいっていた。
- 欲をかかずに6mgで止めておけば良かった
などを考えた。
左右差に関しては、「左側頭極の退縮かな?」と思ったが、この程度の画像はiNPH及びその術後の方達においては、普通に認められるものでもある。特に、シルビウス裂の開大については、iNPH画像診断において重要な概念である「DESH」の構成要素の一つである。
また、既に水頭症に関しては治療が成されていたので、「頭蓋内は髄液による圧迫から解放されていた」とも考えられる。頭がわんわん症候群(仮)には、この髄液による圧迫の有無も関係しているのかもしれない。
薬剤調整の難しさ
最終的には、欲をかかずに6mgで維持すればよかった、と反省orz。
前もって、「眠くなったりとか、何か悪いことがあったら止めて下さいね」と伝えておいたので、大事に至らなかったのは幸いだったが、患者さんからは、「先生、薬って難しいね〜」と苦笑いされた。勉強になりました<(_ _)>
ウインタミン6mgと8mg、この2mgの差に深遠な何かを感じた(大袈裟かな)。
それにしても、頭がわんわん症候群(仮)を治療しようとして、頭をワーンとさせてしまうとは・・・