老健施設の悩み
老健から患者さんの紹介をうけた際には、「薬の処方はしないで下さい」と紹介状に書かれていることがある。
「薬にかかるお金は施設負担になるらしい」という漠然とした知識しか無かったのだが、最近とあることがあり、少し調べてみる気になった。
現在、介護保険制度の元で利用できる入所型施設は、療養型病院を除くと
- グループホーム
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保険施設
この3つである。2がいわゆる特養(特別養護老人ホーム)で、3が「老健」と略して言われることが多い。
この3つの中で老健だけは原則医療保険が使えず、介護保険から支給される限度額内の包括医療となるらしい。
グループホームは在宅に準ずる施設なので、通常通り医療保険を使用しての病院受診となる。
特養は、施設の運用形態として診療所併設のケースがあったり、また嘱託医がいたりする。往診料や診察料で一定の制限はあるようだが、医療保険を使用することが出来る。
老健では、入所者の薬が多ければ多いほど、また高い薬であればあるほど、老健側の持ち出しとなり赤字となっていく構造のようだ。
解決困難なジレンマ
抗認知症薬は、アリセプトを除きリバスタッチ(イクセロンパッチ)やレミニール、メマリーなどまだ後発品はなく値段も高い。
患者さんに良かれと思って入所時にこれらの薬を継続すると、赤字になってしまう可能性がある。
かといって、薬を止めると認知症が悪化するかもしれず、そうなると介護にも影響が出てくる。
薬なしで頑張れたらいいが、そうもいかないのが介護現場の現実。このジレンマの解決はなかなか難しい。
「貴院処方のイクセロンパッチは、同効のドネペジルに変更しました」などという情報提供書が老健から届く度に、患者さんが荒れないか心配になる。
来年度(2015年度)から、特養入所者は要介護3以上となる予定。それに伴い、これまでより老健やグループホームが負う役割は増えるだろう。
高価な薬剤を服用中の患者さんが老健の入所を断られるケースがあるとも聞く。経営側にとっても患者さん側にとっても、頭の痛いことだ。
天秤法で乗り切る
結局のところ、老健入所後に問題となるのは陽性症状(怒ったり徘徊したりなど、介護抵抗性が強いこと)が多いことを考えると、
- 入所にあたっては高価な抗認知症薬は最低限に減らす。そしてご家族に協力してもらいフェルガードを始める。
- 少量のウインタミンやグラマリール、セロクエルなどの抑制系薬剤の天秤法(介護スタッフの裁量で投与量調整を行う方法)で陽性症状のコントロールを試みる。
- 在宅復帰出来たら、経過をみながら抗認知症薬の再度増量を検討する。
家族がサプリメントの出費を負担できるのであれば、このような手法は「あり」だと思う。
実際には、サプリメントと少量の抑制系薬剤で落ちつくのであれば、退所後に抗認知症薬の再度増量は不要だとは思うが。
偶然の産物。アリセプト+レミニールの同時処方が著効していた、レビー小体型認知症+特発性正常圧水頭症の方。 - 鹿児島認知症ブログ