鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

脊髄小脳変性症(SCD)の女性、濃厚な家族歴あり?

6人兄弟で4人が罹患?


6人兄弟で4人が、同様の症状で65歳までに亡くなった、とのこと。


脊髄小脳変性症 家族歴あり 前傾姿勢

 

 

脊髄小脳変性症 家族歴あり 頭部CT

 

脊髄小脳変性症 家族歴あり ピック切痕有り
  
(記録より引用開始)
 

初診時

 
網膜色素変性症で全盲、障害一級を取得している。
3年ほど前から認知症症状が進行してきている。介護保険申請など行いたいと。
 
 
(診察所見)
 
  • HDS-R:施行不可
  • 遅延再生:
  • 立方体模写:施行不可
  • 時計描画:施行不可
  • 保続:
  • 取り繕い:
  • 病識:
  • 迷子:
  • レビースコア:6
  • rigid:両側著明に歯車様筋固縮
  • ピックスコア:3
  • 頭部CT左右差:なし
  • クリクトン尺度:48
  • 介護保険:なし
  • 胃切除:なし
  •  
  • (診断)
  • ATD:
  • DLB:
  • FTLD:
  • MCI:
  • その他:LPC?、MSA-P?
 
前傾姿勢。疎通は出来ない。歩行も出来ない。変性疾患様の話し方でうつろな表情。陰性症状強い印象。
 
両上肢で著明な歯車様筋固縮だが、右により強い印象。幻覚と話しているような場面が多々見られると。この辺りはDLB的か。
 
頭部CTでは海馬萎縮は認めない。前頭葉の萎縮は目立ち、基底核には軽度石灰化あり。被殻レベルではわずかに右側優位な萎縮?
Pick切痕あり、頭頂葉萎縮回避あり。前頭葉眼窩面萎縮なし。
humming bird sign(進行性核上性麻痺における画像所見)はないが、小脳は著明に萎縮。橋底面も萎縮ありかな。hot cross sign(脊髄小脳変性症の画像所見の一つ)ありかな?
 
レビースコア6、ピックスコア3の結果からLPC(レビー・ピック複合)、中でもMSA-C(パーキンソン型多系統萎縮症)を考えたが、ご主人から、患者さんのご兄弟6人のうち4人が同様の症状があり、皆65歳までに亡くなっているとの情報あり。
 
旦那さんのご希望は、何よりもまず確定診断より介護体制を整えたいと。入院などはさせたくないと。
 
濃厚な家族歴からは、大学神経内科への精査依頼もありだろうが、まずはご希望優先で。脊髄小脳変性症で特定疾患申請も。
 
遠方で毎月の通院は困難。連れ出すのに2人がかり。3ヶ月処方ならOKと。イクセロンパッチ+フェルガードLAで。
 
(引用終了) 
 

変性疾患セットで難病に挑む

 
居住地の地域包括支援センターと連携をとりながら、経過をみていくことになった。
 
ご本人のご両親は何ともなかった、との旦那さん情報だが、そうすると常染色体劣勢遺伝となるのか。ここはもう少し情報を集めておきたい。出来れば大学病院紹介まで繋げたいがどうだろう。
 
すでに疎通が取れる状態ではなく、時折思い出したように「なに?なに?」と問うてくる。嚥下は良好で易怒性はないが、排泄含め全介助レベル。
 
ここまで旦那さんがお一人で介護していらっしゃったらしく、相当なご苦労であったと思う。
 
遺伝性の脊髄小脳変性症となると、多系統萎縮症(MSA。非遺伝性の脊髄小脳変性症)の病名付与は出来なくなるので、正確にはMSA-P(パーキンソン型の多系統萎縮症)は成り立たないのだが、臨床的にはそのように考えておいて問題はないだろう。 
 
陽性症状はなく、陰性症状メイン。食欲はしっかりあるとのこと。
イクセロンパッチ4.5mgとフェルガードLAの、いわゆる変性疾患セットで介入開始。
 
今回はこれで終了。