痛み止めが効かない頭痛
前回に引き続き、???という患者さんの紹介。
(当時の記録より引用開始)
平成26年2月17日 初診
早朝の頭痛で脳腫瘍疑い、と近医より紹介。
ここ1ヶ月ほど続く早朝の頭痛。昼からは大丈夫と。
話は常同的、やや滞続言語ありか。明るい朗らかな感じではあるが。肩こりはない。頭痛の前兆や片側性、嘔気もない。
頭部CTでわずかに右有意な萎縮。基底核は両側で石灰化あり。頭頂ではPick切痕ありかな。
HDSRまでは行わなかったが、DNTCーPickの感じはあるかな。
夕食後にウインタミン4mg。これで2週間。
3月10日
頭痛はピタッと消えたと大喜び。常同的な感じは相変わらずだが、とても喜んでいる。
近医で継続。よかったですね。
(引用終了)
何とも言えないピック感
前回に引き続き、診察時に常同性と滞続言語を感じた患者さん。高齢者で、「うーん、またそのお話ですか・・」と感じる場合、それはピック感かもしれない。
ちなみにコウノメソッドでは、ピックスコアなるものが用意されており、レビースコアと併せて有用な診断ツールである。
これらの中で、
- 不機嫌、診察拒否
- 勝手に出て行ってしまう
- 腕組みや足組み
などは加点項目であるが、それ以外に
こういう印象もひっくるめて「ピック感」としている(個人的に)。
ちなみに、精神科領域において統合失調症の患者さんを前にしたときに感じる、何とも形容しがたい印象を「プレコックス感」と呼ぶらしい。
鎮痛剤を使わない頭痛の治療を考える
「起床時、早朝の頭痛」というのは、脳腫瘍を疑う症状の一つとして有名。教科書にも載っている。
ロキソニンやカロナール、ボルタレンまで試してみたが全く効果がないので、脳腫瘍の可能性はないだろうか?ということで紹介された患者さんであった。
腫瘍がなくて幸いであったが、ではしつこい頭痛の原因は何だったのだろう?
夕方4mgのウインタミンが、直接頭痛に作用したとは考えにくい。しかし、頭痛の訴えは無くなっている。最近よく考えるのは、
前頭葉機能低下が始まると、いわゆる不定愁訴が出てくるのではないだろうか?
ということ。
前頭葉機能低下により抑制が効かなくなってきた結果、それまでは感じることの無かった症状を感じとるようになる、若しくは微細な症状を過敏に感じるようになり、徐々にそれに囚われていく。その結果、認知症へ繋がっていく可能性はないだろうか?
初期段階での不定愁訴の治療に失敗したら、それは本格的な認知症の発症に繋がっていくのでは?
結局、この方は「ピック的な人だった」との診断?で紹介元にバトンタッチ。
前頭葉機能低下で脱抑制が起き始めたところを、少量ウインタミンが上手く制御してくれたのでは?と考えている。
一般外来に訪れる方全員に知能検査を行うことは現実的ではないが、「ピック感」を感じるだけでも治療に繋がる可能性はあると思う。今回はこれで終了。
最終処方)
ウインタミン4mg 夕食後
用語説明)
ピック病・・・前頭葉や側頭葉の萎縮に伴い、主に人格変化や情緒変化を特徴とする認知症。
DNTC・・・石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病。進行すると、ピック病と似た症状を呈すると言われている。
常同性・・・同じ動作,姿勢,言葉などが持続的にくり返されること。
滞続言語・・・質問の内容とは無関係に、何を聞いても同じ話を繰り返すもの。ピック病によくみられる、と言われている。
www.ninchi-shou.com
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