鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

『アルツハイマー病は第3の糖尿病である』という仮説を補強する研究結果。

 

興味深いニュースを目にした。

 

economic.jp

 

第3の糖尿病とは?

 

下記記事をご参考までに。

 

www.ninchi-shou.com

  

アルツハイマー型認知症を3型糖尿病と呼ぶようになった理由として、

 

  • 糖質の過剰摂取により脳内血管が常に高血糖となると、インスリンが常に出ている状態(高インスリン血症)になる。
  • そうすると、過剰なインスリンを分解する酵素が多く消費されることになる。
  • インスリンを分解する酵素(ネプリライシン)は、その蓄積がアルツハイマー型認知症の原因の一つと言われているアミロイドβを分解する酵素でもある。
  • つまり、高血糖高インスリン状態だと、アミロイドβの分解が後回しにされてしまい(インスリンが優先的に分解される)、アルツハイマー型認知症発症に繋がってしまう。

このような機序が考えられている。(当ブログ記事より引用)

 

 

「高血糖高インスリン状態は、身体では糖尿病を、頭ではアルツハイマー病を発症させるリスクとなり得る 」という考えである。

 

今回発表された東北大の研究結果では、

 

  メマンチンが脳内インスリンシグナルに関わるATP感受性カリウムチャネル(Kir6.1/Kir6.2 チャネル)を阻害することを発見したという。ATP感受性カリウムチャネルは糖尿病治療薬であるスルホニル尿素系薬剤(グリベンクラミドなど)が作用するカリウムチャネル。この研究では、アルツハイマー病治療薬メマンチンが脳のインスリンシグナルを改善することを示している。研究成果はアルツハイマー病の「脳糖尿病仮説」を実証した初めての成果であり、脳の Kir6.2 チャネルが新しいアルツハイマー病治療薬の創薬ターゲットであることを示したとしている。(赤文字強調は筆者によるもの)

 

とのこと。

 

これまでメマンチンの作用機序は主に、グルタミン酸仮説で説明されていたが、ここにインスリンシグナル改善仮説が加わったと考えていいようだ。

 

メマリーが効く人と効かない人の見分けに繋がる?

 

ところで自分は、自ら実験して効果を確認した上で、必要のある方達には糖質制限を推奨している。

 

実際には、高齢者にこれまでの食生活を替えて貰うことは中々難しいのだが、可能な限りで構わないので、認知症患者さんの食生活にも取り入れて貰えるように、家族にお願いしている。

 

軽めの糖質制限*1で、易怒性の高かったアルツハイマーの患者さんが、抗精神病薬を使用することなく非常に穏やかになった例を複数経験しているので、無理は禁物だが工夫して糖質制限を導入することが出来れば、薬の節約(抗認知症薬や抗精神病薬)に繋がるケースが多いことを実感している。

 

今回の研究報告を受けて、自分がメマリーの処方数を増やすかどうかは正直微妙なところだが、気をつけたいと思ったのが

 

  実際、メマンチンは糖尿病モデルマウスの血糖値を低下させ、認知障害も改善します。(赤文字強調は筆者によるもの)

 

という記載。

 

メマリーは一般的には、怒りっぽい認知症患者さんに対して鎮静剤的に処方されることが多い。しかし実際に処方していて思うのだが、メマリーで興奮してしまう方達も少なからずいる。

 

確率として「鎮静>興奮」であるのは間違いないと思うが、どちらに転ぶか油断できない薬という印象である。

 

何故そのようなことが起きるのかを考えた時に、上記の「メマンチンは糖尿病モデルマウスの血糖値を低下させ」という記載から、以下のような仮説(妄想)を思いついた。

 

  血糖値高めで易怒性が亢進している認知症患者の興奮は、メマリーの血糖降下作用で落ち着くのでは?

しかし、血糖値高めではない認知症患者にメマリーを使った場合、血糖降下作用で若干の低血糖が惹起されてしまうと、低血糖症状としてのイライラや興奮が起きてしまうのでは?

 

しばらくはメマリーを処方している人のHbA1cに注目してみる予定。

 

 

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*1:夕食で炭水化物は食べない。間食に菓子パンはやめて、ゆで卵を食べる、といった内容