鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【実験】イントラリポスを自分に点滴してみた。

 

イントラリポスという脂肪点滴製剤がある。

 

消耗性疾患に対する栄養補給で使われる点滴で、自分も勤務医の頃は病棟でよく使っていた。聞くところによると、短時間でのケトン値底上げが可能らしい。

開業してからは、これまで外来で使用することはなかったのだが、糖質制限を頑張っているにも関わらずケトン値が上昇してこない方がおり、その方と相談してイントラリポスを使ってみることにした。

 

その前に自分で試してみようと考えて行ったのが、今回の実験。

 

使用したのは20%イントラリポス50ml。精製ダイズ油を10g含み、熱量は約100kcal。

 

イントラリポス50ml

真っ白い点滴

 

ケトン値と血糖値の推移

 

脂肪製剤なのでゆっくり点滴することが望ましいのだが、50mlと少量のため、30分足らずで滴下は終了した。特に、血管痛や気分不良をきたすことはなかった。

 

点滴前

 

イントラリポス前のケトン値と血糖値

イントラリポス前

イントラリポス前のケトン値は0.7mmol/L、血糖値は91mg/dL。朝食は摂っておらず空腹時だが、普段の自分からすれば少し血糖値が高い。

点滴終了直後

 

イントラリポス点滴直後

イントラリポス点滴直後

点滴直後は、ケトン0.8に血糖82。少しケトンが上がった?

点滴終了1時間後

 

イントラリポス点滴1時間後

イントラリポス点滴1時間後

点滴終了1時間後。ケトン0.9に血糖88。

点滴終了2時間後

 

イントラリポス点滴終了2時間後

イントラリポス点滴終了2時間後

点滴終了2時間後。ケトン0.7に血糖88。

ここまでで、測定は終了とした。

 

思ったほど、ケトン値は上昇しなかった

 

20%イントラリポス50mlで、0.2mmol/Lのケトン値上昇という結果に終わった今回の実験。

 

血中の総ケトン体濃度の基準値は、およそ0.1~0.2mmol/Lの間とされる。この基準値を超えた状態を「ケトーシス*1」と呼ぶが、普段から糖質制限をしていると自然とケトーシスになる。

 

自分は糖質制限(スーパー制限)を初めて7年目に入るが、

 

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体が長年ケトンモードで回っているために、少々の脂肪酸が入ってきてもケトンboostは起こらなかったのだろうか。まだケトンモードに切り替わっていない糖質制限者であれば、ひょっとすると違う結果だったのだろうか?

 

体をケトンモードで回すことには健康人にとって様々なメリットがある*2が、難治性てんかんやガンといった疾患では特に、治療のために普段からケトーシスの状態にあることが望ましい。

 

では、ケトン値は高ければ高いほど好ましいのだろうか?

 

以前はそう考えていた時期があり、色々と実験してケトン値3~4でしばらく生活していたことがあったが、0.7ぐらいの今と比べて体感で特に違いはなかった。

 

なので、疾患によっては意図的な高ケトン誘導が役立つ場面はあるのだろうが、健康人では程々でも良いように考えている。

 

糖質利用モードとケトン利用モードが自由自在に行き来出来れば理想的だが*3、普段の食事が糖質まみれであれば、それはちょっと難しいだろう。

 

「ちょっと待て。ケトンは急には働かない」・・・今日の一句

 

ところで、脂肪酸がβ酸化される過程で必要になる、Lーカルニチンというビタミン様物質がある。

 

糖質制限を頑張っているにもかかわらずケトンが上昇してこない、もしくは具合が悪くなるという人たちは、Lーカルニチンが不足しているのかもしれない。

 

ケトンboostのためのイントラリポス点滴でケトン値が上昇してこない人は、カルニチン製剤を点滴に混注するのは一つの手段かもしれない。そこまで必要なケースは、相当限られるだろうが。

 

(過去の実験シリーズ)

 

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*1:糖尿病性ケトアシドーシスとの区別が重要。インスリン分泌に問題がない状態でのケトーシスに危険性はない。

*2:自分の場合だと、適正体重への減量や睡眠の質の改善、日中の眠気消失などなど。

*3:勿論、ケトンメインのモードで身体が回っていても、糖質は赤血球などで利用されてはいるのだが。