鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

夫婦別々で話を聞くことは、時に必要である。

 

外来では通常、患者さんとご家族いっしょに話をきく。概ねそれで問題はない。

 

しかし時に、患者さんに同伴したご家族が伴侶であった場合、ご夫婦別々で話を聞くことがある。

 

相手の前では、直接言えないことがある

 

夫が患者で、妻が介護者のケース

 

一方的に妻のみが話し続け、夫(患者)は一言も発さずに「ぶすっと」している。しかし、お一人の時には色々と話をするし、時には妻への不満も漏らす。

 

長年、かかあ天下で回してきた家庭なのかもしれない。

 

妻が患者で、夫が介護者のケース

 

夫が一方的に話し続け、妻(患者)が泣きそうな表情になっている。

 

妻からだけ話を聞くと、「夫は昔から一方的に話す人。うえから目線で高圧的な物言いをするので、何も言えなくなる」とこぼす。

 

夫が絶対的な亭主関白として君臨してきた家庭なのかもしれない。

 

「よかれと思って」が虐待に繋がらないように

 

夫や妻の前では言えないこと、言いたくないことというのは、病気どうこうを抜きにして幾らでもある。

 

何も言わないことが「病気のために言えない(言う力がない)」ではなく、「相手の前では言いたくない」なのかもしれない、という可能性は忘れずにいたい。

 

なぜなら、「この患者さんは全然喋らない人だな。こちらの話す内容が分からないのかな?CTでは脳萎縮の左右差もあるし、これは意味性認知症の可能性があるのかな?」などとなってしまいかねないから。(考えすぎか)

 

一所懸命介護している家族が、懸命であるが故に、患者に対して無用のプレッシャーをかけていることがある。

 

よくあるのが、脳トレなどを強要するケース。

 

  「これをしないとボケる一方だから、ちゃんとやれ!!」

 

このように妻に強要する夫もいれば、

 

  「よかれと思って買ってきて置いてあるのに、この人は全然しようとしないんですよ。先生からもちゃんと言ってやって下さい!!」

 

と、ご主人を詰りつつ医師に訴えかける妻もいる。

 

これらは一種のハラスメントであり、拗らせると虐待に繋がりかねない。このような言動で患者さんが改善に向かう可能性は残念ながら万に一つもなく、周辺症状を悪化させることすらあり得る。

 

余りにも威嚇的な家族を窘めることは、時にある。

 

しかし、患者さんがいる前で家族に注意しすぎてしまうと、よかれと思って頑張っている家族が介護に対する意欲を失ってしまうことになりかねない。介護者が意欲を失うと、ネグレクトや虐待に繋がるかもしれない。

 

なので、危うさを感じるご夫婦の場合、それぞれ個別で話を聞くようにしている。

 

これはなかなか有効で、お互いがお互いを気にせずに話が出来るため、患者満足度と家族満足度は高くなる。しかしそのことで、他の患者さんやご家族の外来待ち時間は長くなってしまうので、やり過ぎは禁物である。

 

今のところ、様々な工夫で待ち時間の短縮に努めており、有り難いことに大きな不満は出ていないようである。

 

 


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