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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

いつの間にか認知症認定されていた、元気な高齢者。

 

実にお手軽に抗認知症薬が処方される時代に、我々は生きている。

 

85歳男性 認知症の妻を介護している方

 

以前から時折胃の不調を訴えて、総合病院の消化器内科を受診していた。

 

その都度カメラなどの検査を行うが、特に異常は見つからない。

そのうち、担当医が

 

  〇〇さんは神経質すぎるから、これを飲んで気分を落ち着かせた方がいいですよ。

 

とのことで、リーゼ5mgが処方された。そして、地元の心療内科クリニック(以下Aクリニック)を紹介され、そこでリーゼが継続されることになった。ちなみに、ご本人はリーゼを飲むようになってから何も変化は感じていないとのこと。

 

Aクリニックではその後「うつ病」と診断され、ドグマチールが100mg/day処方されるようになった。

 

ある日、突然認知症認定された

 

ドグマチールはその後に中止になり、リーゼは残った。

 

しばらくして、いつものようにリーゼを貰いにAクリニックを受診したところ、看護師が突然何の断りもなく認知症の検査を始めた(長谷川式のことか?)。

 

そして、その結果について医師からは何の説明もないまま

 

  テストの結果からあなたは認知症だから、この薬を飲みなさい

 

とレミニール8mg/dayが処方された。

 

そして気づいたら、いつの間にか要介護1となっていた。

ちなみに、CTやMRIなどの頭部画像評価は何も行われなかった。

 

病気認定

 

認知症扱いされた日から眠れなくなった

 

ある日突然認知症認定されてから、不安で眠れなくなった。そのことをAクリニックに相談すると

 

  では、睡眠薬を出しましょう

 

と眠剤が処方され、毎晩眠剤を飲んで寝るようになった。

 

抗認知症薬のレミニールは恐かったので飲まなかった。そのことを主治医に告げたところ、

 

  ああ、そうですか。では、今回からは出しませんので

 

と言われた。

 

診断が欲しくて当院を受診、結果は認知症ではなかった

 

前職の頃には、長谷川式テストやピックスコア、レビースコアは全て自分で行っていた。

 

開業してからはスタッフと手分けして行う方向で現在色々と調整中。特に問診項目に工夫をして、診察前にある程度の状態が把握出来るように努めている。

 

これまでの経験から、自分で自分の心配が出来て、尚且つ自分で病院に連絡して受診出来る方は大抵問題ないと思っている。

 

こういった方達に対しては、スタッフによる15点満点の簡易スクリーニングテストを受けて頂く。

 

この方はスクリーニングは14/15でダブルペンタゴン(五角形を重ねた画を模写して貰う検査で視空間認知能力の把握に用いる)も問題なし。

 

頭部CTで左右差はないものの、全体的に萎縮はやや目立つ。だが、85歳という年齢を考慮すると病的意義のある萎縮とまでは言えなかった。

 

  脳萎縮はあるものの、年齢相応の範囲は超えないと思います。スクリーニングテストの点数も十分です。奥さんの介護をしっかりされて、尚且つご自分の心配が出来て、ご自分で病院を受診されたあなたが、現時点で認知症である可能性は極めて低いと思いますよ

 

と説明したところ、涙を流して喜び、深く頭を下げて帰って行かれた。ついでに、「リーゼや眠剤は減らして止める方向で主治医に相談してみて下さいね」という言葉も添えておいた。

 

人を病気認定するのであれば、それなりの準備をするべきでは?

 

この方の心境を漫画一コマで表現するとしたら、アレしかないだろう。

 

認知症扱いされた高齢者

(ジョジョの奇妙な冒険より)

 

病院を訪れる人を診察して何かしらの診断を下す。場合によっては病名を告げ、治療を行う。これが医者の仕事である。

 

診察や検査の結果で問題がなければいいのだが、対処する必要のある問題が見つかった時、それを告げるのは正直気が重い。特にそれがガン(脳神経外科であれば脳腫瘍)や認知症であった場合には尚更である。

 

「風邪ですね、お薬出しときます」といった感覚で、「認知症ですね、お薬出しときます」と抗認知症薬が気軽に処方される時代である。テレビでは連日認知症に関する番組が流れ、視聴者は不安感を煽られ病院に足を運ぶ。どことなく既視感を感じるのは、かつて行われたうつ病の啓発キャンペーンを思い出してしまうからだろうか。

 

第6回うつ病における問題(ワークライフバランスとメンタルヘルス)心理カウンセリングのIFF(アイエフエフ)東京、港区

 

 

人を病気認定するという重大な仕事*1を担当する医者が

 

  • 何を疑って、どのような検査を行うのかを事前に告げて了解を得る
  • その結果が重大なことであれば、本人家族に十分な説明を行う

 

このようなプロセスを省略してはダメだろうに・・・と思う次第。

 

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*1:「大丈夫だと思いますよ」と言える時のうれしさは格別である。