鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】特定薬剤への依存を取り除きつつ、全体的には減薬と栄養強化の方向性で調整。

DLBベースにVaD要素を持つKNさんをご紹介。 

 

初診から1年以上が経過しているが、ご家族や施設と情報共有しながら、初診時よりも改善した状態で経過出来ている。 

80代女性 レビー小体型認知症+ 脳血管性認知症

 

初診時

 

(既往歴)
心筋梗塞に対して冠動脈ステント留置
(現病歴)

 

7ヶ月前に〇〇病院でレビー小体型認知症(DLB)の診断。診断2ヶ月後ぐらいから頭痛の訴えが頻回に。リバスタッチ開始。変化なし。

 

診断5ヶ月後から物品捜索が増える。今月に入り、ありありとした幻覚が一回だけあった。慌てた息子さんの強いご希望で本日飛び込みで受診。

 

頭痛は天候左右性あり。その度に内服する後藤散は、20日で50本消費していると。一番の希望は夜間良眠。頻尿でベシケアが処方されているが、目立った改善なしとのこと。

 

(診察所見)
HDS-R:14
遅延再生:2
立方体模写:OK
時計描画:負荷
IADL:4
改訂クリクトン尺度:17
Zarit:13
GDS:10
保続:あり
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:4
rigid:なし
幻視:あり
ピックスコア:ー
FTLDセット:ー
頭部CT所見:Binswanger変化あり
介護保険:要介護2
胃切除:なし
歩行障害:すり足
排尿障害:頻尿 夜間は1時間おき
易怒性:なし
傾眠:昼寝

(診断)
ATD:
DLB:〇
FTLD:△
その他:VaD

(考察)

 

現在のかかりつけからは18種類の薬が処方されている。

 

明瞭な幻視に加えて調子に波があること、また独特の暗い感じがあることから、明確なパーキンソニズムはないものの、DLB寄りに診ていくことにする。頭部CTでビンスワンガー変化を認めるので、VaD要素も忘れずに。

 

開始されてから効果が感じられていない抑肝散3P3Xと、抑肝散による低カリウムを補うためと思われるスローケーは、いずれも中止。

 

施設での過降圧を考慮し、コニール減量。効いていないメリスロンは中止。長らく狭心症状なく、ニコランジルは残してニトロール20mgx2を中止、デパケン減量(1月に利尿剤使いすぎでNa111の低ナトリウムで痙攣発作後に始まった)、ベシケアはウリトスに変更、頭痛には五苓散とウインタミン3mgx2、不眠対策はハルシオンとデパスを中止してニトラゼパム5mgに一本化。

 

落ち着いたらかかりつけ医に任せる?

 

他院のMRIでは、MBs少量あり。MRAで動脈瘤は認めず。SPECT画像は無かった。

 

ショートステイ利用先施設には、変化があれば報告を入れるように依頼。

 

(前医処方)

 

  • バイアスピリン(100)1T1XM
  • クロピドグレル(75)1T1XM
  • アルカドールカプセル(0.1)1C1XM
  • ペニジピン(2)2T2XMA
  • ニトロールR(20)2T2XMA
  • メリスロン(6)2T2XMA
  • スローケー(600)2T2XMA
  • カロナール(300)2T2XMA
  • デパケンR(200)2T2XMA
  • ニコランマート(5)3T3XMA
  • アトルバスタチン(5)1T1XA
  • マグミット(500)1T1XA
  • ベシケア(5)1T1XA
  • 抑肝散3P3X
  • イクセロンパッチ4.5mg
  • ハルシオン(0.25)1T1X眠前
  • デパス(0.5)1T1X眠前
  • ラベプラゾール(10)1T1X眠前

 

3日後

 

施設からの報告では、受診以降は直接的な頭痛の訴えはないようだが、活気低下や意欲低下は以前よりも強く認めているようである、とのこと。

 

これはウインタミンの影響があるのか?ニトロールは一旦戻す?デパケンも気分調整には役立っていたのか?

 

初診から1週間後

 

頭痛は以前と比較して4/10。また、以前は1時間おきの排尿で起きていたが、2~4時間に伸びた。活気がやや落ちたというが、それはウインタミンの影響はあるかもしれない。ただし、施設スタッフとも相談した結果、過鎮静とまでは言えず許容範囲内とのことなので継続。

 

前回採血でフェリチン40。フェロミア開始。BUNは1桁なので、卵を中心としたタンパク摂取を励行した。また夜間頻尿にはウリトス増量及び眠前酸棗仁湯開始で対応。

 

次回処方から更にコニールを減量とし、アトルバスタチンは一旦終了にしよう。改善があればその次は1ヶ月処方かな。


肺炎球菌ワクチン予防接種。

 

1週間後

 

  • 自発的な頭痛の訴えはほぼ無くなった
  • 表情が全体的に良くなってきた
  • 役割をうまく配分してあげる工夫をしていると

 

今晩から自宅に。


眠前の酸棗仁湯は手間だと。夕食後抑肝散1Pに変更。夜間睡眠は波がある。排尿回数は3~9回。ウリトスは現状維持。他に工夫は・・・ニトラゼパム増量かロゼレム追加か。

 

両下肢浮腫。コニール減量。アトルバスタチンは終了に。頭痛の訴えが出たとき用でカロナール300mgを頓用処方。極力、後藤散大量内服に繋がらないように。鉄サプリも頭痛薬として使って貰い、ついでにフェリチン底上げを図ろう。

 

4週間後

 

周辺症状には波があるが、多くは不安感からのようだ。電話では息子さんに強く当たるが、会いに行くと機嫌は良い。

 

今回はリバスタッチ増量を。
今後は、グループホーム入所を検討中と息子さん。

 

頭痛の訴えの際にはカロナール→鉄サプリ→後藤散という順番で。

4週間後

 

表情はとても穏やかである。

 

3週間ほど前に自宅でせん妄あり、すぐに施設でショート利用。そしてそのままグループホーム入居に繋げた。

 

入居後しばらく混乱があったが、まずまず落ち着きだしたかな、と。明確な訴えはないが、恐らく便秘はありそうなのでマグミット開始。また、夕の抑肝散は一旦終了にしてみる。明らかな幻視のエピソードは今のところなさそう。食欲は大丈夫。

 

3週間後

 

一時落ち着いていたが、最近突発的な易怒性を発揮するようになった。夜間は不眠で頻尿。ウリトスの効果は限定的か。本人的には頭痛の頻度は以前ほどではないらしく、五苓散は一定の効果ありと考えておく。

 

低ナトリウムからのけいれん様発作でデパケンは始まった。減量していたが、一旦中止にする。夕方のウインタミン3mgは、クエチアピン25mgに切り替えて、主に夜間睡眠対策を行う。セロトニン過剰の可能性は?

 

4週間後

 

2年前にLCS(腰部脊柱管狭窄症)で入院治療。手術はなし。

 

前回ウインタミンをクエチアピンに変更。以降、夜間良眠、朝はスッキリと起きてくる、ホールで外の入居者と談笑する、積極的に塗り絵をするなど、数日で別人のように代わったことにスタッフと息子さんは驚いている。

 

クエチアピン25mg著効。デパケン終了に伴うてんかん発作出現もなし。

 

良かったですね。しばらく処方は維持。次回は採血。フェリチン上昇を確認したらフェロミア終了。頭痛は落ち着いているようなので、五苓散も卒業にもっていくかな。

 

3週間後

 

先月後半から、もの盗られと被害妄想が時折。春先の影響はあるかな


今回は処方維持。買い物ノートの作成をCMさんに提案。

 

次回は採血結果説明。

 

2週間後

 

予定より早く来院。


物盗られ妄想がひどくなってきた。お金を盗られたと大騒ぎする。2日に1回くらいのペース。


夕方症候群~もの盗られ妄想が激しく出現。
「死んでやる!」などと物騒なことを言うようになった。だが、日中は穏やかに過ごしていると。

 

クエチアピン12.5mgx2をお渡しして、施設による天秤調整を依頼。


採血でAST20/ALT11の乖離に対してビタメジン+ピドキサールを開始。抑うつ傾向は間違いなくあるので、活性化B6による賦活はありだろう。

 

3日後

 

グループホームへ電話連絡し、受診後の様子を伺う。
妄想言動は以前より軽減し、声掛けにて落ち着く。過鎮静はないとの事。(看護師〇〇記載)

 

3週間後

 

左側頭部の頭重感を訴えるが、痛みではないと。

 

突発的な易怒性は完全に落ち着いた。時折スタッフへのもの盗られ妄想があるが、声掛けで対応可能。

 

4週間後

 

週一回程度でもの盗られ妄想があるも、傾聴で落ち着く。

 

今日は化粧とマニキュア。表情はよい。
昨年と比べて非常に調子がよいことを息子さんは喜ぶ。

 

フェリチン116を確認、フェロミアは終了

 

4週間後

 

妄想はあるものの、不穏レベルまで拗らせることはない。調子はいいようだ。


マグミット増量。

 

次回まで安定していたら、クエチアピン減量に取り組もう。

 

4週間後

 

先月中旬から、頭痛や妄想が軽度増えたかなと。拗らせるほどではないようだ。診察室の様子はいつも通り。

 

処方は念のため維持しよう。

 

4週間後

 

頚肩腕症候群に対してノイロトロピン4T2Xで開始。この1ヶ月は、落ち着いていたようだ。

 

4週間後

 

概ね安定した2ヶ月だったと。表情はとてもよい。
ノイロトロピンで肩こりの訴えは消失

 

クエチアピンだけは気をつけておこう。

 

初診から1年経過

 

  • HDS-R:16
  • 遅延再生:3
  • 立方体模写:やや拙劣
  • 時計描画テスト:拙劣

 

1年経過してHDSRは2点上昇。

 

透視立方体模写は、1年前の方が出来は良かった。時計描画テストは、今回の方が作画の意図が理解出来る。頭部CTは著変無し。ビンスワンガー変化の悪化はない。

 

乱用していた後藤散は、今は飲んでいない

 

その他、胸腰椎圧迫骨折が発覚。疼痛は自制内。コルセットで経過観察中。

 

(最終処方)

  • ウリトス(0.1)2T1X眠前
  • ニトラゼパム(5)1T1X眠前
  • バイアスピリン1T1XM
  • クロピドグレル1T1XM
  • ペニジピン(2)1T1XM
  • ニコランジル(5)2T2XMA
  • 五苓散2P2XMA
  • ビタメジン(50)2C2XMA
  • ピドキサール(30)2T2XMA
  • ノイロトロピン2T2XMA
  • マグミット(500)2T2XMA
  • クエチアピン(25)2T1XA
  • イクセロンパッチ4.5mg

(引用終了) 

 

透視立方体模写と時計描画テスト、1年の推移

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