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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

何となく飲み続けていた抗うつ薬を中止した結果・・・

認知症以外の症例

 

遠回りしてしまったが、抗うつ薬中止で完璧な満足を得ることが出来た男性をご紹介。

 

70代男性 レビー小体型認知症を疑って・・・

 

初診時

 

(既往歴)

右下肢跛行 

(現病歴)

昨年退職して以降、ぶらぶらしていると。もの忘れを心配した奥さんが連れてきた。本人は見るからに不満げである。

 

(診察所見)

HDS-R:21
遅延再生:0
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:11
保続:なし
取り繕い:あり
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:5
rigid:なし
幻視:なし RBDあり
ピックスコア:2
頭部CT左右差:なし
介護保険:なし
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし 便秘有り
易怒性:あり 奥さんをすぐにねめつける

(診断)
ATD:△
DLB:△
FTLD:
MCI:
その他:

 

見た感じのレビー感はないが、レビースコア5点は重視するか。抑肝散でRBD(レム睡眠行動異常)対策。かなりイライラしやすい人かな。奥さんの言い方にも問題はありそうだが。

 

1ヶ月後

 

夜間の叫びはほぼ消失。抑肝散著効。
自覚的なもの忘れがある、と初めて本人が話す。

リバスタッチ4.5mg開始。ヒルドイド併用で。

 

1ヶ月後

 

長時間お待たせしてしまった。機嫌は悪くない。
掻痒感はほぼないが、発赤はある。増量はしばらく控えよう。リンデロン処方。

調子は横ばいかな。

 

2ヶ月後

 

腰部脊柱管狭窄症で整形通院中。

 

足底貼付でリバスタッチの掻痒感はコントロール可能に。
今回は軟膏は不要。

短期記憶は相当怪しいかな。
とりつくろい多い。3ヶ月後でHDSR。

 

1ヶ月後

 

今朝転倒して頭部打撲、ワセリン塗布。
足底貼付は順調。

 

運転にこだわる。
2ヶ月後でHDSR。

 

1ヶ月後

 

腰部脊柱管狭窄症で手術を勧められていると。

家族でカラオケなど外出の機会を増やす努力をしていると。
次回はHDSR。

 

1ヶ月後

 

  • HDSR18
  • 遅延再生2

 

半年で3点の低下。
今回からリバスタッチ9mgに。

1ヶ月後

 

足底貼付なら掻痒感なし。
イクセロン9mgで特に変化なしと。
しばらくこのままで。

 

3ヶ月後

 

お薬手帳を確認(初診時は出来ていなかった?)したところ、〇〇内科から長らくパキシル20mgが出ていた。これがセロトニン賦活で易怒性に影響していないか?

 

奥さんに、内科の先生と相談して減らせそうなら減らして止める方向で検討して貰うように伝えた。

 

その他著変なし。
処方継続。

 

1ヶ月後

 

内科にパキシルの件を伝えたところ、「ああ、そう」とのことでパキシルは終了に。漸減ではなく、いきなり終了したと。幸い、離脱症状など出ていないようだが。


起立時のフラツキで精査するも特に何もなしと。
下り坂で止まれないと。

 

外出機会が少ないことにより下肢筋力低下をきたしているのか。
奥さんが積極的に声掛けして外出を促している。

足底貼付でリバスタッチはOK。

処方継続。

 

1ヶ月後

 

  • 自発性向上
  • フラフラがなくなった
  • 活気が出た

 

パキシルが終了になってから、目に見えて良くなっていると奥さん。
本人もそれを実感できている。

 

いずれリバスタッチは減量してみましょうね。

 

初診から1年後

 

いつの間にか、腰痛がなくなっている。脊柱管狭窄症であれほど悩んでいたのに、と。
後頭神経痛も改善傾向、もうしばらくメチコバール継続で。

 

  • HDSR23
  • 遅延再生6
  • 語想起1

 

半年前より5点上昇。初回は21で遅延再生0。これはリバスタッチよりもパキシル中止の影響が大きいだろう。ただし、体験喪失のエピソードはあるため、念のためにリバスタッチは継続。

 

(引用終了)

 

抗うつ薬を飲むようになった経緯

 

この方が来られる外来は、一時期は奥さんの愚痴、そしてそれに反応したご本人の怒りでバタバタとしたものであったが、現在は

 

  幸せとは何でしょうね、先生。我々夫婦は子供がいないので、子を持つ幸せは分かりませんが。これからお互い思いやりながら過ごしていきます。私が死んだら、遺灰は海に撒いて欲しいです。妻は、樹木葬がいいと言っていますね(笑)

 

このような、何やら哲学めいた話をするようになった。勿論当方としては、夫婦げんかで喧しいよりも、このような話でシンと鎮まる外来は大歓迎である。

 

聞けば、一時期仕事が忙しい頃に元気がなくなり、そのことを当時通っていた病院(内科)の医師に相談したところ、「じゃあ、これを飲んだらいいよ」とパキシルが処方されたとのことであった。

 

効いたのかどうかは、今となっては分からないとのこと。ある一時期に薬が必要だったとしても、それが一生必要なことは稀である。だから、薬は常に止めるチャンスを窺い続ける必要がある。

 

www.ninchi-shou.com

 

 

自分の中では最もやめにくいSSRIという印象のパキシルだが、内科医が漸減せずにいきなり中止したのにはびっくりした。何も起きなくて本当に良かった。

 

5年ほどは飲んでいたようなので、今更セロトニン症候群は考えにくいのか。しかし、怒りっぽさや腰を中心とした痛みの訴えがパキシル中止で改善したことから、何らかの影響はあったのだろうと思っている。

 

そして何より、初診時よりも6点遅延再生が改善するほどの認知面向上である。

 

こうなると、イクセロンパッチを続けるべきか否か、考えざるを得ない。しかし、初診時のレビースコア5点、レム睡眠行動異常などから、DLBの可能性を忘れるわけにはいかない。

 

結局、ご本人と奥さんと相談した結果、春までは現状維持でいくことになった。

 

遠回りしてしまったが、遅すぎることはなかったと思いたい。

 

抗うつ薬で認知症症状を呈した方