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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

レム睡眠と前頭前皮質、過食の関係について。

雑記 雑記-ニュースの感想

 

あるニュースをみて考えたこと。

 

www.tsukuba.ac.jp

 

前頭前皮質とは?

 

  筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしました。食べ物の味や香り、食感などの嗜好を判断する役割を担う脳部位である前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が減少しても、ショ糖の摂取量は増加しませんでした。一方、脂質の摂取量は、前頭前皮質の神経活動抑制の影響を受けることなく、対照群と同様に増加しました。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、体重を増加させる可能性のある、ショ糖が多く含まれる食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質が直接的に制御している可能性が示唆されました。(上記リンクより引用)

 

レム睡眠量が減少すると、前頭前皮質における神経活動が過剰に亢進して過食に繋がる。中でもショ糖の過食に繋がる、ということか。

 

ちなみに前頭前皮質とは、下の図(wikipediaより)でオレンジ色の箇所。

 

前頭前皮質

 

そして以下に示すのは、過食をきたした80代のアルツハイマー型認知症の女性の頭部CT。

 

前頭前皮質の頭部CT

 

一口に前頭前皮質といってもその範囲は広大で、眼窩前頭皮質 (OFC)や前頭前皮質腹内側部 (vm-PFC)、前頭前皮質背外側部 (dl-PFC)、前頭前皮質腹外側部 (vl-PFC)、前頭前皮質内側部 (m-PFC)、前頭前皮質前部 (a-PFC)などなど、解剖学的に細分化されている。

 

その機能は膨大であり、前頭前皮質(前頭前野)こそ人間を人間たらしめているといっても過言ではないほど。

 

認知症患者さんの中には一部、極端なほどに甘いものへの嗜好が高まる人達がいる。抗精神病薬内服で過食が落ち着く人は確かにいるので、前頭前皮質の神経活動の過剰亢進が関与しているのだろう。

 

脳が萎縮すると通常、その部位の神経活動は衰えると考えたくなる。しかし、過剰亢進してしまう方がいるとはどういうことなのだろう?

 

"一部の箇所が機能を失うと、他の部位が失った機能を補おうと過剰に働いてしまった結果、全体としては活動亢進となることがある"、という風に自分は理解している。元々抑制をかける精神の座に不調をきたすと、抑制が外れる。その後萎縮が進行し更に機能が衰えると、最終的にはアパシー(無為)となる。そのようなイメージを持っている。

 

画像上は同じ箇所が同じように萎縮しているように見えても、過食になる人もいればならない人もいる。脳のある部位は、他の部位と連携して機能を発現していることが多いため、画像上の萎縮を指摘は出来ても、そのことで起きる症状まで細かく説明することは困難ということである。*1

 

脳は疲れると、ショ糖と脂質を求めたがるということは・・・

 

レム睡眠減少を脳疲労と捉えると、脳疲労でショ糖(糖質)と脂質への欲求が高まるという観察結果には興味が涌く。

 

疲れた脳がエネルギーを欲した結果、糖質と脂質を無意識に選択しているということになるが、これを「カロリーの高い食事を欲する」と考えては面白みがない。

 

脳がエネルギーとしてブドウ糖を利用することを考えれば、ショ糖を欲しがることは当たり前。

 

では、脂質はどうだろうか?

 

脂質を直接脳のエネルギーとして利用することは出来ない。しかし、脂質の代謝産物であるケトン体は、脳のエネルギーとして利用できる。

 

 

www.ninchi-shou.com

 

 

つまり、疲れた脳はブドウ糖とケトン体を欲しがっている、と考えられはしないだろうか?

 

認知症患者さん達は一般的に、嗅覚や味覚が衰えている。嗅覚の衰えが認知症発症に先行しているという報告は多い。

 

Do Earliest Cognitive Deficits in Alzheimer's Appear in the Entorhinal Cortex? | ALZFORUM

 

衰えているからこそ、強い味を求めるようになる。

 

脂質を無理なく食べて貰う工夫が出来たら、体重増加に歯止めがかかり*2、また認知症症状進行抑制にも繋がると思う。例えば、ラカントSで甘みをつけて、強めの香辛料を用い、ココナッツオイルで炒めた肉野菜炒めなどは、エスニックな風味を好む方にはいいかもしれない。

 

 

*1:VSRADなどを信用しすぎてはいけない、ということでもある。

*2:体重増加は糖質の過剰摂取による場合が多い。しかし、「油は太る!」という信仰は根強いし、糖質と脂質の同時摂取はダブルパンチで体重に反映されやすい。