鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】Mガードについて。

 

認知症サプリメントのフェルガードを販売しているグロービアが昨年、Mガードという新たなサプリメントの販売を開始した。

 

最初にMガードの自験例を、その次に、Mガードを使用しているご家族の観察記録を紹介する。

 

80代女性 軽度認知障害(MCI)

 

初診時

 

同居の娘さんと二人で来院。

(既往歴)

近医で降圧薬など内服中 脊柱管狭窄症

(現病歴)

 

3年前に〇〇病院受診。この時にHDS-Rの結果は不明。「初期アルツハイマーが疑われるが、それよりもうつ病の可能性を多く見積もる」ということで、投薬なしでフォローとなった。

 

半年前にアリセプト3mg開始。激しい消化器症状にて3日で脱落。


本日午前中に〇〇病院受診。HDSーR20という結果でイクセロンパッチ9mgを勧められた。

 

「いきなり9mgでこのまま使い始めていいのだろうか?」と疑問に思った娘さんが、飛び込みで連れて来られた。

 

(診察所見)
HDS-R:施行せず
遅延再生:ー
立方体模写:OK
時計描画:OK
IADL:4
改訂クリクトン尺度:28
Zarit:13
GDS:8
保続:?
取り繕い:軽度ありか
病識:軽度あり
迷子:なし
レビースコア:ー
rigid:なし
幻視:なし
ピックスコア:ー
FTLDセット:ー
頭部CT所見:特記所見なし
介護保険:要介護3
胃切除:なし
歩行障害:杖歩行
排尿障害:頻尿?
易怒性:なし
傾眠:なし

(診断)
ATD:△
DLB:
FTLD:
その他:MCI

(考察)

 

アリセプト3mgで脱落した方に対して、イクセロンパッチ9mgスタートはリスキーだろう。かつ、化粧も出来ないほどの敏感肌。使うなら1/4にカットして足底貼付に。

 

抗認知症薬ではなくサプリメントを試してみたいとのことであったので、Mガードを開始することになった。


現在、心療内科の〇〇クリニックにも通院。アマンタジン150mgでもの凄く活気が上がったとのこと。

 

1ヶ月後

 

今のところ自覚的な変化はないようだが、娘さんからみて

 

「デイサービスを嫌がることがほぼなくなり、意欲が出てきた

 

とのことで、デイを週に2回から3回に増やしたようだ。

 

効果ありと考えていいのかな。あと1ヶ月Mガード(朝夕2粒ずつ)。その次は2ヶ月フェルガード100Mを試し、良さそうな方で継続はどうだろうか。

 

4ヶ月後

 

  • HDS-R:23
  • 遅延再生:4
  • 立方体模写:OK
  • 時計描画テスト:10時10分不可 中心偏倚

 

初診時より3点上昇。

 

パッチは結局使用していない。Mガードを半分量で飲んでいたようだ。


〇〇クリニックからはアムロジピン、エパデール、八味地黄丸、人参養栄湯、ベネット、エディロール、アマンタジン50x3など処方中。以前と同じで、この期間中に新たに加わった薬剤はない。

 

(引用終了)

 

Mガード使用者家族の詳細な観察

 

家族が優れた観察者であった場合、患者さんは幸せだと思う。

 

許可を頂いたので、以下にMガードを半年ちょっと使用した患者さんのご家族のレポートを引用する。筆者が重要と感じた箇所は、赤文字で強調した。また、〇〇と伏せ字にした箇所は、色々とお察し頂けたら幸い。非常に重要な情報ではあるのだが、一般的には勧められないので伏せ字とした。

 

さて25週+α報告です。すでに服用期間が6ヶ月を超えたので、今回は仮まとめとして、服用前と比べることを主とします。久しぶりに母(90歳 アルツ歴13年目に突入)が、特養から帰宅し三 泊四日を家で過ごしたので、様々に家事をやってもらったり、外出したり、たくさん話をする時間もあり、現状をしっかり確かめることができました。
母のことだけで十分長文なので、私のことは後日、日を改めて書きたいと思います。

以下、母の服用結果総括です。ちょっと硬い調子で書いてしまってすみません。

発語:
言葉が増え、しかもスムーズにでる。時と場合に応じた言葉が、即座にセンテンスでるようになった。なかなか言葉が出て来ず、とりあえず無言でうつむき気味にニヤーっと笑ってやりすごす(アルツ独特の曖昧で妙な笑み)ことが激減した。この改善は顕著

動作:
食器洗い、洗濯物干し、洗濯物たたみ、食事等、ほぼすべての日常生活動作がスムーズで、非常に速くなって定着。食器洗いなどは、前回報告よりさらに速くなった感じ。1年半くらい前と比べて、かかる時間が半分になったか?という感じ。四半世紀前の母は、家事の手早い人だったことを、ふと思い出した。また、ここ2、3年で、組み立て方・使い方を忘れてしまった掃除機は、再び、ごく普通に使えるようになり定着。
全ての日常動作・家事が非常に速くなり、使えなくなっていた家電を再び使えるようになるという改善は、誰の目にも明らかで、客観的でわかりやすいと思う。

聴力:
服用前から1段階あがった状態をキープ。ただ残念ながらそれ以上はあがらない感じ。聴力が上がったのではなく、注意力があがったせいのように感じる。

スクリーンセーバー現象:
午後になると、目が覚めているのに、何時間も、椅子に座ったまま坐像のようになるという状態は激減。こういう状態になった時、無意識にテーブルを指でトントンと叩く不快音を出して不気味だったが、この症状は完全消失。

不潔行為:
食事時に箸で歯間をせせるような無作法を平気でするようになっていた(少なくとも3年前にはなかったが)が、これは完全消失。

意識の範囲:
周りのことを気づける・気配りできる範囲が広がっている。外を歩行している時、木々の変化、季節の移り変わりを感じて口にすることがある。

顔つき:
しまってきた。家族なら、はっきりわかるレベル。目がぱっちりと開き表情が豊か。どんより、ぼんやり感が消えた。

遠い記憶の回復:
遠い過去については、60代の頃までは、どの時期についても、かなり鮮明に記憶しており、折に触れ、聞かされた。
7、8年前には、30代前半より以前のことなら、比較的鮮明に覚えており、特に女学校時代のことは楽しそうに詳しく話した。ところが2年前位から、女学校時代の記憶が朧げになっていき、一昨年後半あたりからは、女学校時代のことは、たずねても、毎回あいまいにはぐらかすようになった。そして母が口にする話題はすべて小学校低学年時より以前のことだけになっていった。
遠い記憶も、より現在に近い方からどんどん誕生の時の方向に向かって消えて行くのだと実感させられる感じだった。
M-ガード服用開始後、この女学校時代の記憶が再び戻ってきたということは、前回報告した通り。今回はそれからさらに一歩改善、より現在に近い、女学校卒業以降〜30歳前後のこと迄の記憶が、ぽつぽつと戻り始めている。遠い記憶が、M-ガードの服用によって、少しずつ現在の方向に向かって回復していっており、これはどうやら現在も進行形。大変興味深い。

改善が見られない点:
短期記憶と遺尿
短期記憶は最も早い時期に障害を受けた箇所なので、回復は難しいだろうと、最初から想像がついていたが、予想通り、全く改善しない。
遺尿は、ここ数年で急速に悪化した。まだ尿意ははっきりとあるものの、今では昼間でも常時若干の遺尿があり、夜間では遺尿が顕著。そのため、遺尿は回復するのではないか?と期待したがこれはダメだった。ただ遺尿は、紙パンツやパットで容易に対応できるので、本人にとっても、家族や介護職員さんにとっても、大きな問題にはならないとは思う。遺尿は、わりに最近障害をうけた箇所だが、なぜ全く改善しないか不思議に感じる。


総括:
遺尿の問題以外は、見事なほどに、ごく最近失った機能から、時間を逆回しに改善していく感じが顕著。短期記憶は全く改善しないが、話がスムーズに通じるようになり、社会性が戻り、話題も豊富になり、動作がてばやくなり、できなくなっていた家事が再びできるようになることにはメリットが大きい。
今回の三泊四日の自宅泊では、短気者の老父を激怒させることが、ほぼ一度もなかった。難聴はどうしようもないが、聞こえれば相手の話を理解し、家事を手際よく行い、日常会話もとんちんかんでなく普通に続くため、父がイラつかなかったのだと思う。興味深いのは、家事の手際が前回報告よりさらによくなった感じ(かかる時間がさらに短くなった)であること、遠い昔の記憶が、女学校時代からさらに30代前半まで思い出せるようになってきたこと。ということは、母の改善はまだ進行途中なのかもしれない??

認知症歴が非常に長い(13年目というの相当なもの)90歳の母が、リバスタッチを〇〇ミリから〇〇ミリに減量した状態でも、顕著な改善をしめしている分野が複数あるわけだから、M-ガードの効果は非常に大きいと思う。
M-ガードの効き方を観察すると、陽性症状より陰性症状が目立つアルツ、とにかく鬱々としている・活動力が鈍り、生命力が低下しているような感じのアルツ患者に合うような気がする。十数年前、すでにM-ガードが存在していたら、母には最初からM-ガードのほうが適応だった気がする。M-ガードは、直接的に興奮はさせないものの、頭も舌もまわりだすので、口答え、とりつくろい、屁理屈は若干増える。
また、これも想像の範囲だが、フェルガード100の場合、多少とも鎮静的にはたらく効果があったように感じたが、M-ガードにはその作用は全く感じられず、むしろ、活性化させる効果がつよいように感じる。それでもドネペジルのような易怒は起こさないようだ。
M-ガードの効き方を観察していると、「脳のハードディスクの回転数があがる」「脳を覚醒させる」その結果、「時を3年位巻き戻す」という表現があたる気がする。ずいぶん以前のことになるが、リバスタッチをどんどん増量して〇〇ミリに至った時の変化に似ている。母はその後〇〇ミリまで服用したが、無制限にどんどん増やすわけにはいかず、当然、病気の悪化スピードを止められない状態になっていった。リバスタッチは増量するたびに効果をあげたが、その効果は、それぞれ最長6ヶ月は保たなかったと思う。一方、M-ガードの効果はいまのところ、減弱を感じさせない。すでに6ヶ月をゆうに超えているが、どれくらい効果が続くのか、引き続き観察しようと思う。

最後に、患者家族がM-ガードを服用して、患者が改善しているかどうか、みきわめるヒントを再掲しておきたい。
前提として、中期以降の患者なら、短期記憶は回復しないだろうということを、しっかり事前に教えておくことが重要だと思う(でないと早々に落胆して服用をやめてしまう)。母の場合、改善が感じられたのは大体五週目以降位からだった。よくよく思い起こせば、4週以前でも改善は出現していたように思うが、確信が持てなかった。

改善しているかどうかみわけるヒントの例:
家事の手際がよくなる、家事や食事にかかる時間が減る・使えなくなった家電が再び使えるようになる(最もわかりやすい)
顔つきが締まる(目がぱっちりと開いている感じ)
ぼーっとしている時間が減る(わかりやすく明確)
適時にスムーズに言葉がでるようになり、単語ではなく、センテンスでものをいう・語彙が豊富になる・普通に会話が続く(理解できないために、わざと自分の理解できる話題にすりかえたりしない)

最後に:
私の母もそうですが、アルツの中期後期では、使える薬がなくなって、ほとほと困っている家族が多いものです。たいていここで家族はギブアップして、あとは自然にまかせることになります。自然に任せるというのは、程の良い言い回しにすぎず、つまりは黙って悪化していくのを見ているだけ・・ということです。M-ガードは、このような患者にも改善をもたらすことを、母の服用結果が証明した形になっています。そのため、何らかの形で、早い時期に、母の服用結果・改善を、患者家族である私自身が公表して、多くの患者さんに使ってもらいたいと、心から願っていますが、この結果を公表するタイミングと場の選択はなかなか難しいと感じます。率直に掲示板に投稿しても、安直な宣伝と間違えられそうです。なかなか頭が痛いところです。

 

 その後の経過も御報告を頂いている。

 

重要な改善が始まった模様ですので、取り急ぎ、要点だけ臨時報告します。

母の「短期記憶」が改善の兆しをみせているようです

改善は4月以降、急に顕著になったようで、まるで水中で静かにゆっくりと隆起を続けていた海底火山が、突如ちょっとだけ水面上に頭をだしてきたような感じ。
現在の頻度は、まだ「憶えていることが、ぽつぽつとある」程度です。この程度が限界なのか?それとももう少し改善するのか?まだ全然わかりません。

私自身、短期記憶の改善は全く予想していなかったので、到底信じがたく、思い違いではないか?と疑いに疑い、慎重に多くの場面で、しっかりと確認しましたので、間違いは無いかと思います。改善に対しては、いつも私より懐疑的な老父も、この変化に気づき、たいへん驚いています。

~中略~

認知症歴13年目に突入した90歳の母の短期記憶が、M-ガード服用開始から6ヶ月をすぎた頃から、突如、改善し始めたようです。改善はまだほんの芽を出した程度です。
つい先日(今月初旬)、私はMーガードで、母の短期記憶は多分改善しないだろうと予想しました。私の素人予想は大外れ!先生には大変失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。
とにかく、短期記憶だけは、今までどんな薬も、サプリも、ほんの一時的な改善すら、もたらしてくれませんでしたので、大変驚いています。

 

 

私的Mガードの試し方 

 

Mガードがどのようなサプリメントなのかについては、以下グロービアのHPから引用してご紹介する。

 

Mガード®は陳皮由来の「ヘスぺリジン」、じゃばらに含まれる「ナリルチン」、大豆由来の「α-GPC」を主要成分とする栄養補助食品です。

 

(ヘスペリジン)ポリフェノールのひとつであるフラボノイドの一種で、さまざまな生理作用をもつ物質として注目されています。
柑橘類の果皮などに含まれている成分で、Mガードには温州みかんの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)由来のヘスぺリジンを使用しています。

 

(ナリルチン)ポリフェノールのひとつであるフラボノイドの一種です。
柑橘類のじゃばら(ゆずに似ています)に多く含まれている成分で、Mガードには愛媛県内子町産のじゃばらを使用しています。

 

(αーGPC)大豆レシチン(大豆に含まれるリン脂質)を加水分解して得られる「グリセロホスホコリン」という成分です。
ビタミン様栄養素「コリン」の補給を目的に主に用いられていて、母乳をはじめとして体内にも普遍的に存在する安全な成分です。

 

注目すべきはαーGPC。アセチルコリンの前駆物質と言えるかどうかは議論が定まっていないようだが、少なくとも素早く脳内に到達してアセチルコリンの分泌に関わっていることは間違いないらしい。

 

軽度から中等度のアルツハイマー患者を対象とした半年間のダブルブラインド試験で、αーGPC1200mg/day内服群は、プラセボ群と比較して有意に認知機能が改善したという報告もある。*1

 

また、αーGPCはオリゴデンドロサイトというグリア細胞の形成に関わっているが、脳内で効率良く情報伝達が行われるためには、オリゴデンドロサイトで形成されるミエリンという物質で、神経細胞を繋ぐ軸索という線が保護されていなければならない。

 

このミエリンが傷むことを「脱髄」と呼ぶが、アルツハイマー患者の脳では白質で脱髄が起きていることが最近報告されている。*2

 

ざっくりまとめると、Mガードは

 

「アセチルコリンを誘導し、また、神経細胞から伸びる軸索を保護するミエリンという物質を修復・再生することで、認知機能改善を目指すサプリメント」

 

ということである。

 

先日、不安を感じると落ち着くがなくなりウロウロしてしまう女性の方にMガードを勧めたところ、明らかに不安を訴える頻度が減ったという経験をした。

 

しばらくして、その女性が食欲低下をきたしたため、 今度は人参養栄湯を処方したところ、うまく嵌まって食欲は戻った。

 

この経験から、以下の様なことを着想した。

 

【まず人参養栄湯を処方し、食欲や意欲で好反応が得られたらMガードを投入】

 

いずれもミエリン補強が期待出来るので、長期的使用でかなりの成果が期待出来るかもしれない。

 

Mガード

 

www.ninchi-shou.com

 

*1:Clin Ther.2003 Jan ; 25 (1) :178-93.

*2:Nasrabady et al.,Acta Neuropathologica Communications (2018) 6:22