鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【症例報告】主介護者の怪我で施設入居後。一気に廃用が進んでしまったレビー小体型認知症の方。

 

今回紹介するのは、レビー小体型認知症の方(OHさん)。かなり遠方からではあったが、熱意のあるご家族にサポートされて通院を重ねた結果、3ヶ月ほどで上手くまとまった。

 

しかしその後、主介護者である奥さんの怪我を切っ掛けに施設入所を余儀なくされた。そこで、車いす生活を半ば強制された結果、一気に廃用*1が進んでしまった。 

 

このようなことは、しばしば経験する。

 

表向きは「安全上の配慮」だが、大方は「ただでさえ少ないスタッフで切り盛りしているのに、自由に動き回られては大変」という理由で、患者さん達は車いすに乗せられてしまう。 これは、病院だろうが介護系施設だろうが同じである。

 

預けざるを得ない家族の事情、スタッフが少なくても現場を回さなくてはならない施設の事情などあるにしても、せめて「落ち着いたように見えるが、それは環境に慣れたからではなく、廃用が進んだからではないか?」という視点は忘れずにいたいものである。

 

70代男性 レビー小体型認知症(DLB)

 

 

(現病歴)

3年前、熱中症で入院中に「壁に虫が見える」と騒いだことがあった。

 

退院後も幻視が続き、自宅内で「ほら、そこに居る子にもスイカをあげないと」などの発現がしばしば。夜間の叫びあり。


近医でアルツハイマー型認知症の診断がおり、アリセプトが開始となった。現在5mgを内服中だが特に改善の様子はなく、むしろやや怒りっぽくなったとのこと。それを主治医に伝えると、グラマリールが処方された。しかし、あまり変化はない。娘さんがインターネットで当院を検索し来院。歩行はゆっくりでarm swingなし。笑顔はあるがレビー感ありあり。

 

(診察所見)
HDS-R:8
遅延再生:2
立方体模写:不可
時計描画:不可
IADL:1
改訂クリクトン尺度:22
Zarit:12
GDS:質問の意味が分からない?
保続:なし
取り繕い:なし
病識:なし
迷子:なし
レビースコア:8
rigid:あり
幻視:ありあり
ピックスコア:ー アルミホイルを食べようとする
FTLDセット:ー
頭部CT所見:異所性脳溝拡大あり 海馬萎縮あり
介護保険:要介護1
胃切除:なし
歩行障害:ゆっくり
排尿障害:なし
易怒性:なし?
傾眠:あり

(診断)
ATD:
DLB:〇
FTLD:
その他:

(考察)

 

典型的DLBかな。取り繕い言動多い、いない牛にえさをやろうとする、日時見当識なし、着衣失行あり、とのこと。

 

アリセプト中止、2週間後にリバスタッチ4.5mgに切り替え。今晩から抑肝散。1ヶ月後に再診。


当院通院をご希望された。

 

4週間後

 

  • 妄想や易怒性亢進
  • 動きはスロー
  • 診察室では笑顔だが、レビー感強い

 

パッチよりもアリセプトの方が合っているかも。一旦アリセプトに戻す。ただし1.5mg。幻視は強いようなので、抑肝散からセレネース0.375mgに変更。夕方症候群にリーゼ。とにかく夜に落ち着いてい欲しいとのご家族希望。

 

中核症状進行の印象。奥さんの疲弊度は強い。
着衣失行、排泄失敗などなど。

 

1週間後

 

大分陽性症状は落ち着いたようだ。


ただし前傾姿勢は強まっており、パーキンソニズム悪化を窺わせる。次回以降でアリセプト調整及び抗パ剤調整を。

 

リーゼは夕食後に2.5mg。夜間中途覚醒した時用に、頓用でも2.5mgを準備。眠剤にロゼレムを追加。

 

診察中も幻視を見ているようだ。椅子の場所が分からなかった。小動物が見えている?ただし表情は穏やか。

 

せん妄の時間が長いようであれば、次回以降でシチコリン注射の検討を。

 

1週間後

 

  • 夕食後にセレネース0.75mgとリーゼ2.5mgで、睡眠及び夜間幻覚対策を
  • アリセプト1.5mgは昼食後にしたいとご家族希望あり
  • ウリトスは夕食後にもっていく
  • 眠前はロゼレム、中途覚醒時にはルネスタ
  • 頓用アマンタジンを家庭天秤で試す

 

動きに関しては以前よりも良さそう。アリセプトは1mgまで減らしてみようかな。

 

2週間後

 

  • 動きが固くなったような→セレネースを減量して昼食後に
  • アリセプトを1mgに減量して朝食後に
  • 睡眠対策はロゼレムを半分にして毎晩
  • ルネスタとアマンタジンはまだ使っていない

 

ウリトスの効果を家族は感じている。その他に関してはまだまだ模索中。

 

診察時は体幹は右に傾き傾眠傾向。

 

10日後

 

娘さんよりTEL。寝つきが悪かったため、ロゼレムを半錠を1錠に増やして服用中。1錠で良好との事。ロゼレムのみ処方希望あり。持ち越し効果はないようだ。また、セレネース減量やドネペジル減量の悪影響もなさそうかな。

 

2週間後

 

  • 右への体幹傾斜→ドパコール50mg
  • ウリトスは夕から眠前に、家庭天秤用に2T処方
  • アマンタジンはまだ試していない
  • ルネスタは使っていない、眠前はロゼレムだけ

 

夜の睡眠はまずまずになった。あとは日中の傾眠と運動面サポート。


アマンタジンは試してみましょう。ドパコールチャレンジ開始。

 

初診から3ヶ月後

 

  • 体幹傾斜消失
  • 歩行が非常にスムーズに
  • rigidなし
  • アマンタジンは不使用
  • 週に3日ほどショートステイ
  • 夕方に牛小屋の事は言うが、明らかな幻視は消失
  • ウリトスは1T、2T、変わらないので1Tにしている

 

ご家族の満足度は、これまでで最高。奥さん、娘さん達、いずれも笑顔。

 

今回は30日処方。安定していたら地元にバトンタッチ予定。良かったですね。

 

3週間後

 

壁に左肩を押し当てるような動作をすると。これは以前行っていた牛の世話しているつもりなのか?左肩には青あざがある。セレネース増量でPD症状悪化が以前あったので、今回は行わずに様子を見ましょう。

 

現在、丸一日家で過ごすのは日曜日だけ。それ以外はショートステイやデイサービスを利用するので、奥さんの介護負担はかなり減ったようだ。

 

処方については、当院継続をご希望された。

 

5週間後

 

  • 幻視は時々
  • 筋固縮は左上肢に軽度

 

歩行が抜群に改善している。「涎が多いのよね」など話すことが出来る。アマンタジン使用はなし。日中ウトウトはあるが、話しかけたらちゃんと返答する。

 

ウリトスは家庭天秤で2Tがちょうど良いようだ。

順調。みんな笑顔。次回は2ヶ月後。

 

~その後、まずまずの状態で約7ヶ月経過~

 

初診から1年後

 

娘さんより電話あり、次回予約キャンセル。奥様が骨折して入院してしまったと。ご本人は現在ショ-トステイを緊急利用中で、そのまま施設入所を検討中とのこと。(受付〇〇記載)

 

1ヶ月後

 

奥さんの入院をきっかけに、特養に預けることになった。初日から車椅子に座らせられっぱなしで、あっという間に下肢筋力が低下して歩けなくなった

 

先日とは別人のよう。抑制系処方はひとまず減量し、ドパコールを増量、シチコリン注射。
復活なるか?厳しいかな?

 

娘さんはグループホームへの転居を考えているようだ。

 

2ヶ月後

 

一気に進んだ廃用症候群からは、回復できていない。ほぼ車いす状態だと。

 

施設内で転倒して橈骨骨折・・・。


ロゼレムは服用しない日もあるとのこと。マグミットは施設調整で3錠服用で調子がよいとの事。ウリトスは不用だと。

 

2ヶ月後

 

落ち着いて過ごせてはいるようだ。眠剤は不要になっている。

 

日中の刺激はなく、車いすを半ば強制されているためか、活気が低下し排泄はオムツになってしまった。それでウリトスもいらなくなり、ロゼレムもいらなくなったのかな。


今回からセレネースの終了に取り組む。1週間毎に休薬を繰り返して反応を観察することを、施設にお願いする。

 

歩行は今後困難なのかな。致し方ないだろうが、娘さんは涙ぐんでいる。

 

2週間後

 

(娘さんよりTEL)


セレネースの服用についてのお問い合わせ。施設から「セレネースの調整は出来ないので服用するか、しないかどちらかに・・」と言われたとのこと。

 

今のところ、前回受診後より毎日服用している。処方日数は他剤の半分なので、次回来院前にセレネースは切れる。

 

時々、亡くなった人が出てくると言う時があるが、落ち着いている。一旦セレネースは飲みきり終了として、もし諸症状出てきたら連絡を下さいとお伝えした。 (受付〇〇記載)

 

(引用終了)

 


Wheelchair Springtime Gang flickr photo by Fran Urbano shared under a Creative Commons (BY) license

 

*1:安静を保ちすぎた結果、心身機能が低下してしまうこと。高齢者の場合、短期間で廃用が進むことがしばしばある。